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【DTM】白紙の恐怖を分解する。AIを「下書き装置」として使う高速プロトタイピング

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はじめに:何も浮かばない時間をどう減らすか

個人開発のゲームやアプリ向けにBGMを作っていると、どうしても手が止まる瞬間があります。DAWを開いたまま、空白のタイムラインを眺めているだけで時間が過ぎていく。技術的な問題ではなく、完全に思考の問題です。

最近はこの「0→1」の負荷を減らすために、AI系の音楽支援技術を“魔法”としてではなく、エンジニアリング的にワークフローへ組み込んでみました。この記事では、完成を任せるのではなく、下書きを効率よく作るという視点での実践ログを共有します。

Audio to MIDI:構造をデータとして見る

まず取り組んだのはインプット側の整理です。

「こういう雰囲気にしたい」という参考曲がある場合、耳コピは理想的ですが、実務では時間が足りません。そこで使ったのが Audio to MIDI というアプローチです。オーディオを演奏データに変換することで、音ではなく“構造”を扱えるようになります。

Ableton Live などの DAW にも標準機能がありますが、最近の変換精度は実用レベルです。ドラムループを MIDI 化してリズムだけ抜き出したり、環境音を変換して偶発的なメロディの種を作ったりしました。

MIDI は単なる中間データですが、ノート、ベロシティ、CC といった概念を理解していると、変換後のズレにも納得感があります。基礎仕様についてはMIDI Associationの公式ガイドを一度確認しておくと、修正作業がかなり楽になります。

AI MIDI Generatorを壁打ち相手にする

アウトプット側では、コード進行やベースラインの発想を広げる目的で AI MIDI Generator を使いました。

やったことはシンプルです。BPMとジャンルを決め、複数パターンの MIDI を生成し、その中から使えそうな部分だけを DAW に取り込む。完成品として見るのではなく、あくまで素材置き場として扱います。

検証の一環として OpenMusic AI も触りましたが、こうしたツールの価値は「正解を出すこと」ではありません。自分の手癖ではまず選ばない進行やリズムを提示してくれる点にあります。

もちろん、そのまま使えることはほとんどありません。ベロシティが均一で機械的だったり、和音が濁っていたりします。ただ、この修正作業はゼロから考えるよりも精神的にかなり楽です。

1週間使って見えた効果と限界

この方法で約1週間制作してみたところ、ラフ完成までの時間は体感でおよそ30%短縮されました。

良かった点は、迷う時間が減ったことです。結果として、アレンジやミックスなど、人間が判断すべき工程に集中できました。

一方で課題もあります。AIは楽曲の“展開”を作るのがまだ苦手です。AメロからBメロへの感情的な持ち上げなどは、結局自分でオートメーションを書き直す必要がありました。この点は Google Magentaの研究事例を見ても、まだ発展途上だと感じます。

まとめ:考える前に形を出す

AI系のMIDIツールは、作曲を代行する存在ではありません。面倒な初期作業を引き受けてくれるアシスタントです。

重要なのはツール選びそのものよりも、「どこをAIに任せ、どこを自分で作るか」を明確にすること。白紙を恐れる時間を減らし、人間は感情や流れの設計に集中する。

今のDTM環境では、その役割分担が現実的な落とし所だと感じています。

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