【2025/10/13更新】Difyのアノテーション(注釈)徹底解説
✍️AIを賢く育てる秘訣!「アノテーション返信」
DifyでAIアプリを開発している中で、「AIの回答が、なんだかイマイチ…」「もっと賢くなってくれたらいいのに!」と感じたことはありませんか?
そんな悩みを解決する機能が、Difyに搭載されている「アノテーション」です。この記事では、AIを育てるための「アノテーション」と、さらに一歩進んだ「アノテーション返信」機能について解説していきます。
🎯 対象読者
- アノテーションの意味やメリットを知りたい方
- Difyでのアノテーション返信の使い方を具体的に知りたい方
🚗 アノテーションを使用できるバージョン
1. そもそも「アノテーション」って何?
「アノテーション(Annotation)」とは、日本語で「注釈」や「タグ付け」を意味します。
学生時代の教科書で行った、大切な箇所へのマーキングやメモ書きをイメージすると分かりやすいです。
【教科書(データ)】
源頼朝が鎌倉幕府を開いた。
【あなた(アノテーター)による注釈】
✏️ 「"いい国(1192)作ろう"が有名だけど、今は1185年説が有力らしい」とメモを追加!
このように、元のデータに対して付加的な情報を付け加える行為、これがアノテーションです。
Difyにおけるアノテーション:AIへの直接フィードバック
では、Difyの場合はどうでしょうか。Difyにおけるアノテーションとは、「ユーザーとAIの会話に対して、開発者が行うフィードバック」のことです。
AIとのチャットログを見ながら、答え合わせをしてあげるイメージです。
- 👍 素晴らしい回答をした場合: 「よくできました!」の意味を込めて高評価を送る。
- 👎 見当違いな回答をした場合: 「これは違うな…」と低評価を送り、「本来こう答えるべきだった」という理想の回答に直接編集・修正する。
この「直接、正解を教えられる」点がDifyの優れたポイントです。

2. Difyの真骨頂!「アノテーション返信」機能
アノテーションは、AIを裏側で賢くするための機能でした。しかし、Difyにはさらにユニークな「アノテーション返信(Annotation Reply)」という機能があります。
これは、開発者が行ったアノテーション(修正)を、AIが次の会話で自動的に活かしてくれる機能です。
具体例として、社内情報に詳しいAIチャットボットを開発しているとします。
ユーザー👤:
「田中さんの好きなラーメンって何ですか?」AI🤖:
「醤油ラーメンです!」
(※AIが知っている情報だけで、適当に答えてしまいました)
この回答に対して、開発者であるあなたがアノテーションを行います。
開発者(あなた)👨💻:
(うーん、田中さんは熱狂的な味噌ファンなのにな…よし、アノテーションしよう!)
- AIの回答履歴を開き、この回答に「低評価(👎)」を付けます。
- 回答を「田中さんは、味噌ラーメンが一番好きです。」と正しい内容に直接修正します。
アノテーション後、同じ質問をしてみると、
ユーザー👤:
「そういえば、田中さんが好きなラーメンって何でしたっけ?」AI🤖:
「田中さんは、味噌ラーメンが一番好きです。」
いかがでしょうか?修正後の正しい情報を伝えてくれました。
3. ✨ アノテーション返信のメリット
アノテーション返信には、大きく分けて次の2つのメリットがあります。
✅ メリット1:やればやるほど精度が上がる
アノテーションを積み重ねることで、AIはあなたの修正内容を記憶し、
より正確で信頼性の高い回答ができるようになります。
✅ メリット2:複雑な分岐フローを作らずに済む
通常、修正したテンプレートを返させたい場合、
・あらかじめテンプレート文を用意する
・質問のパターンごとに分岐処理を設計する
といったフロー設計が必要になります。
しかし、アノテーション返信なら、こうした分岐やルールを細かく組み込む必要はありません。
「正しい回答」を記録するだけで、次回から同じ質問に対しては、記録した文章を回答してくれます。
👉 結果として、余計なロジックを組まずに改善できるため、開発・運用がシンプルになり効率も大幅アップします。
4. 実際に使用してみる
前提
ナレッジに情報がない質問「田中さんの好きなラーメンは何?」をAIに投げかけ、「分かりません」と回答されたログを修正していきます。

アノテーション返信の設定方法
-
サイドメニューから「ログ&アナウンス」をクリックします。

-
うまく答えられなかったチャットのログをクリックして詳細を開きます。

-
AIの回答メッセージ右下にある「注釈」アイコンをクリックします。(一度クリックすると「成功」と表示されます)
-
再度同じログを開き、今度は「注釈を編集」をクリックします。

-
AIの回答を正しい内容(例:「田中さんは味噌ラーメンが好きです」)に編集し、「保存」をクリックします。

-
「ログ&アナウンス」画面の左上にある「注釈」タブに切り替えます。

-
「注釈の返信」をクリックし、スコア閾値を設定して「保存」します。

スコア閾値の考え方
- 1.0 の場合: 質問文が「田中さんの好きなラーメンは?」と完全に一致した場合に、アノテーションした返信文が出力されます。
- 0.8 の場合: 「田中さんは、ラーメン何味が好きなの?」のように、類似した質問の場合にも、アノテーションした返信文が出力されます。
- 再度チャットボットに質問すると、アノテーションした内容で正しく回答されるようになります。
5. 内部のフロー
「アノテーション返信」を有効にすると、AIの裏側ではどのような処理が行われているのでしょうか。ここでは、その内部フローを解説します。
ユーザーから質問が送られると、システムは通常の処理に入る前に、以下の特別なプロセスを実行します。
-
類似質問の検索
ユーザーからの質問を受け取ると、まず過去にアノテーションされた質問リストの中から、類似するものがないか検索します。 -
スコア判定と返信
類似度が設定した閾値(例: 0.8以上)を満たす質問が見つかった場合、その質問に紐づけて保存されている修正済みの回答をユーザーに返信します。この時点で処理は完了です。 -
通常フローへ
もし類似する質問が見つからなかった場合は、ナレッジベースの検索や大規模言語モデル(LLM)による回答生成といった、本来のフローで処理が実行されます。
この流れを図で表したのが、以下の図(右)です。アノテーション返信は、通常の処理の前に「正解へのショートカット」を設置するようなイメージです。
6. まとめ
本記事では、Difyの強力な機能である「アノテーション」と「アノテーション返信」について解説しました。
AIアプリケーションは、リリースしてからが本当のスタートです。アノテーション機能は、実際のユーザーとの対話ログをもとにAIの回答を直接改善していく「運用フェーズ」で真価を発揮します。複雑なロジックを組むことなく間違いを正し、より適切な回答を教え込むことで、AIを継続的に、そして効率的に賢くしていくことができます。
アノテーションの一つひとつの積み重ねが、AIをあなただけの最高のパートナーに育てる一番の近道です。ぜひ本記事を参考に、Difyのアノテーション機能を活用してみてください。
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