前回の記事で、舵が切れないように舵角を \delta=0 に固定した二輪車のロール運動は、次のような倒立振子の運動方程式で表されることを紹介しました。
I_{Txx}\ddot{\phi} +m_Tz_Tg\phi = T_\phi
この運動方程式から知りたいことは、「ロール角 \phi が時間とともにどのように変化するのか」という点です。つまり、ロール角 \phi を時間の関数 \phi(t) として求めることができれば、車両がどのように傾いていくのかを知ることができます。
このように、求めたい関数 \phi とその導関数(\dot{\phi} や \ddot{\phi})を含む方程式を 微分方程式 と呼びます。さらにこの式では、\phi は時間のみを変数とする1変数関数であることから 常微分方程式 に分類されます。また、\ddot{\phi} のような二階微分が含まれているため 二階常微分方程式 です。
本来この運動方程式の重力項である第2項の \phi は、厳密には \sin\phi ですが、このままでは非線形微分方程式となり、解析的に解くことが難しくなります。そのため小さい角度では \sin\phi \approx \phi と近似できる性質を用いて線形化されています。この近似によって運動方程式は二階線形常微分方程式として扱えるようになります。
運動方程式をはじめとする多くの物理現象は、時間に関する二階常微分方程式で表されます。しかし、二階の微分方程式をいきなり解くのは少々大変です。
そこでまず、一階線形常微分方程式の最も基本的な形について、その解法を解説します。これを理解しておくと、より複雑な微分方程式を扱うときにも役に立ちます。
一階線形常微分方程式
一階線形常微分方程式は一般に次のような式で表されます。
\dot{x}(t) = a(t)x(t) + f(t)
ここで、x(t) が求めたい未知関数です。
未知関数 x(t) とその導関数が線形に現れる微分方程式であることから、線形微分方程式と呼ばれます。
また右辺の f(t) は通常、外力などの入力を表す項です。
f(t)=0 の場合を 同次方程式、f(t)\ne0 の場合を 非同次方程式 と呼びます。
外力が加わる場合の非同次方程式の解法については、後の記事で改めて紹介することにして、ここではまず、最も基本的な場合であるf(t)=0の場合を考えます。
このとき微分方程式は
となり、一階線形同次常微分方程式と呼ばれます。
なお、線形化された運動方程式を扱う場合、係数 a(t) は時間に依存しない定数となることが多いため、ここではa(t)\equiv a(定数)とします。
一階線形同次常微分方程式の解法
未知関数 x(t) について
で表される一階線形同次常微分方程式を解いていきます。
ニュートンの記法をライプニッツの記法に書き直すと次のようになります。
両辺を x で割ると(ただし x\ne0 の場合)、
\frac{1}{x} \frac{dx}{dt} = a
となり、これを微分形式で書き直すと、
となります。このように未知関数 x と独立変数 t に分離できる形式を変数分離形と呼びます。
両辺を積分し、積分定数を C_0 とすると、
\begin{aligned}
\int \frac{1}{x} dx &= \int a \, dt \\
\log |x| &= at + C_0
\end{aligned}
を得ます。
両辺の指数を取って絶対値を外すと次のようになります。
\begin{align*}
|x| &= e^{at+C_0} \\
&= e^{C_0} e^{at} \\
\therefore x(t) &= \pm e^{C_0} e^{at}
\end{align*}
ここで定数 C = \pm e^{C_0} とおくと、
となり、一階線形同次微分方程式の解が得られます。
また C=0 とすると、変数分離の過程で除外した x(t)=0 も解として含まれることがわかります。
このように、一階線形同次微分方程式の解は指数関数で表されます。
まとめ
一階線形同次常微分方程式
の解は
となり、指数関数で表されることがわかりました。
次の記事では、この結果を利用して二階常微分方程式を解く方法を紹介し、実際に倒立振子として表される二輪車のロール運動を解析してみたいと思います。
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