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AIでアプリが作れる時代に、我々は何を作るのか — そして私は避難所管理アプリを作ってみた

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AIがコードを書く時代に、エンジニアは何を作るのか

AIがめちゃくちゃ便利になった。プロンプトを書けばアプリが出てくる。コードを書く速度は10倍になり、個人が1週間で作れるものの範囲は劇的に広がった。

じゃあ、何を作る?

タスクリマインダー? メモ帳? キッチンタイマー?

作れる。全部作れる。AIに聞けば30分で動くものが出てくる。でも、それを世に出して何が変わるだろう。

少なくとも自分は、今あるものを自分好みに最適化するためにアプリを作るよりも、まだ無いもの、足りていないものを生み出したいと思っている。


日本人だから知っていること

自分は日本人だ。そして、きっと世の中に足りないものを知っている。

2011年3月11日。自分は学生だった。テレビの向こうで街が流されていくのを見た。あの日以降、日本ではいくつもの災害が起き、そのたびに現場で懸命に対応する人たちがいた。熊本、北海道、能登。そのたびに、避難所の体育館には紙の名簿が並んだ。

社会人になり、現職に就き、防災の現場に近い仕事をするようになった。その前も、その先も、自分は「自分の仕事に意義はあるか」を問い続けている。

そして一つ、確信に近いものがある。

災害対策はオープンであるべきだ。

避難所で使うツールが、インターネット接続を前提としていてはいけない。月額サブスクリプションの契約がなければ動かないのでは意味がない。専用ハードウェアがなければ使えないなら、それは「持っている自治体」だけの特権になる。


だから作ってみた

GoogleのGemma 4 Good Hackathonというコンペに出会った。「AIで社会課題を解決する」がテーマ。

自分が作ったのはShelterAI — 完全オフラインで動く避難所管理アプリだ。

https://github.com/Resolver-TNG/ShelterAI

何ができるのか

  • 身分証(免許証・パスポート等)をカメラにかざすだけで、Gemma 4がデバイス上で氏名・住所・生年月日を読み取る
  • AIアシスタントが怪我人のトリアージ、物資推定、要配慮者の一覧を即座に返す
  • 物資配布の一人ずつチェック管理
  • 通信が復旧したらCSVで行政に引き渡し

インターネット不要。クラウド不要。iPhoneが1台あればいい。

なぜこの構成なのか

デジタル庁の実証実験で、デジタルID処理により避難所の受付時間が90%短縮されることが示されている。しかし既存のソリューションはすべて、ネット接続・有料契約・専用機器が前提だ。

災害時に最初に失われるのは通信インフラ。電気も、ネットも、あてにならない。

だからGemma 4 E2B(2Bパラメータ、CoreML Int4で約2.7GB)をiPhoneに直接載せた。Neural Engineで2〜8秒で推論が走る。サーバーは要らない。

500人規模の避難所で、紙ベースなら約12.5時間かかる受付作業が、ShelterAIなら約0.8時間。11時間以上をケア・配布・連携に振り向けられる。


技術の話:2Bモデルの限界を「設計」で超える

正直に書く。Gemma 4 E2Bは万能ではない。2Bパラメータのモデルに「避難者500人のうち、怪我をしている人は何人?」と聞いても、正確な数字は返ってこない。構造化データの検索はLLMの苦手分野だ。

だからShelterAIではインテリジェントルーティングを採用した。

クエリ種別 処理先 精度 レイテンシ
カード解析 Gemma 4 + Vision OCR ハイブリッド 5〜15秒
プリセット質問(5種) Swiftコード → DB集計 100% 即時
自由質問 Gemma 4 ストリーミング ベストエフォート 3〜10秒

プリセット質問(怪我人トリアージ、物資推定、要配慮者一覧など)はAIを経由せず、Swiftコードでデータベースから直接生成する。100%正確で、即時応答。自由質問だけをGemma 4に回す。

モデルの限界を受け入れた上で、各クエリを最適なシステムに振り分ける。 これが2Bモデルでも実用に耐えるアプリを作る鍵だった。


AIが書いたコード、人間が込めた意味

ShelterAIのコードの多くはAIが書いた。38ファイル、6,326行。自分一人で1週間で書ける量ではない。

でも、何を作るかを決めたのは人間だ。

「オフラインで動くこと」を決めたのは自分だ。「紙を否定しないこと」を決めたのも自分だ。「Apache 2.0で公開すること」を決めたのも自分だ。CSVエクスポートが「行政への引き渡し」のために存在することも、同意画面を毎回表示することも、テストモードのデータがアプリ終了時に消えることも。

AIは「どう作るか」を加速してくれる。でも「何を作るか」「なぜ作るか」は人間にしか決められない。


災害対策はコモンズに属する

ShelterAIはApache 2.0でリリースしている。

これはビジネスモデルではない。エンジニアとしての祈りだ。

フィリピンの自治体が、トルコのNGOが、どこかのボランティアチームが、このコードをフォークして、自分たちの国のIDカードに対応させて、自分たちの避難所でデプロイできるように。許可も、稟議書も、購買手続きも要らない。

もしどこかの避難所で、このコードの子孫が1人でも早く避難者を登録できたら。怪我人をいち早く特定できたら。夜が来るまでに毛布の数を数えられたら。

それで十分だ。


AIでアプリが作れる時代に

AIがコードを書く。デザインもする。テストも書く。デプロイまで手伝ってくれる。

だからこそ問いたい。

その力で、何を作る?

今あるものの焼き直し? それとも、まだ世界にないもの?

自分の答えはShelterAIだった。次はあなたの番だ。


インターネットも、予算も、時間もない緊急時のために。
Built for emergencies with no internet, no budget, and no time.


🎬 デモ動画

https://youtu.be/Cx2k1hUeT0o

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