GPT-5.5とClaude Opus 4.7で変わるプロンプト設計: 7要素構造とeffortの実務的な使い分け
GPT-5.5とClaude Opus 4.7のプロンプト設計を比べると、どちらも「明確に書く」ことは共通しています。ただし、実務で設計すべきポイントは違います。
GPT-5.5では、成果物の仕様を先に固定する「契約」としてプロンプトを作ります。一方、Claude Opus 4.7では、SKILL.mdのdescriptionやeffortを使って「いつ起動するか」「どの深さで考えるか」を設計します。
この記事では公式ドキュメントの要点を、Codex SKILLとClaude Code agentの実装テンプレートに落とし込みます。
まず結論: 設計ポイントの違いを把握する
同じ「アウトライン設計エージェント」を作る場合でも、設計のポイントが根本的に異なります。
| 設計項目 | GPT-5.5(Codex SKILL) | Claude Opus 4.7(SKILL.md) |
|---|---|---|
| 設計の中心 | 成果物の定義(何を出すか) | 起動条件の定義(いつ・なぜ動くか) |
| 構造 | 7要素のMarkdown(Role/Personality/Goal/Success criteria/Constraints/Output/Stop rules) | YAMLヘッダー + XMLタグ(role/context/task/constraints) |
| 推論深度の制御 | 明示的な設定なし | effortとadaptive thinkingで設定 |
| トリガー設計 | Stop rulesで停止条件を明示 | descriptionでルーティング条件を記述 |
| 文脈の扱い | Goal・Success criteriaで成功状態を固定 | contextタグに厚く・丁寧に与える |
| 安全性の担保 | 開発者がStop rulesを書く | Constitutional AIで組み込み済み |
よくあるNG例: 役割だけ書いてしまうプロンプト
あなたは優秀なブログ編集者です。アウトラインを作ってください。
このプロンプトでは、エージェントが正しく動けません。「何文字のアウトラインを作るのか」「どんな読者向けなのか」「どこで止まればいいのか」がわかりません。
欠けている要素は3点です:
- 成功状態の欠如: 「どんな状態になったら完成なのか」が定義されていない
- 停止条件の欠如: 「どんな状況で止まるべきか」がないため、不確かな情報でも突き進んでしまう
- 協働スタイルの欠如: 「ユーザーと対話すべきか、自律的に完結すべきか」が明示されていない
GPT-5.5式: 7要素で「成果物の契約」を作る
GPT-5.5向けのプロンプトは、7つの要素で「何を・どこまで・どんな形で出すか」を先に固定します(Outcome-first設計)。
各要素の役割
- Role: 「技術ブログのアウトライン設計エージェント」のように、担当する成果物の名称を含めて1〜2文で固定
- Personality: キャラクターではなく協働スタイルを記述(「直接的に答える」「根拠が弱い主張は保留する」など)
- Goal + Success criteria: 「何をするか」ではなく「何が達成された状態がゴールか」を書く。Success criteriaは検証可能な完了条件を箇条書きで列挙
- Constraints: やらないこと・越えてはいけないラインを記述
- Output: 出力形式・ファイル形式・含まれるべき項目を明示
- Stop rules: エージェントが自律的に停止すべき条件を明示(最重要)
GPT-5.5式 実装テンプレート
Role: 技術ブログのアウトライン設計エージェント
# Personality
直接的。根拠が弱い主張は保留する。ユーザーが提供した公式情報を優先する。
# Goal
WordPress向け技術記事のH2/H3構成と各セクションの狙いを作る。
# Success criteria
- H2見出しが3〜5本、各H2下にH3が2〜3本含まれる
- フォーカスKWが少なくとも1つのH2タイトルに含まれる
- 使用したすべての公式情報に出典URLが付いている
# Constraints
- 公式ドキュメントに記載のない内容を断定しない
- モデル名(GPT-5.5、Claude Opus 4.7など)を曖昧な表記にしない
- 1回の広い検索を実施し、十分な引用根拠があれば再検索しない
# Output
- Markdown形式のH2/H3構成
- 各セクションのtarget_keywords(1〜3語句)
- コードサンプルが必要な箇所のメモ
# Stop rules
- 出力パスが指定されていない場合は実行前に確認する
- 根拠が不足している主張は「要確認」として止める
- テーマが広すぎる場合は絞り込みを求めて停止する
このテンプレートでは、エージェントが「いつ完了するか」「何が足りないと止まるか」が明確に定義されています。
参考: GPT-5.5 Prompt Guidance(公式)
Claude Code式: SKILL.mdで起動条件と推論深度を設計する
Claude Opus 4.7向けのプロンプトは、SKILL.mdのYAMLヘッダーとXMLタグを組み合わせて「いつ・どの深さで思考するか」を設計します。
descriptionが最重要: ルーティング条件を記述する
SKILL.mdのYAMLヘッダーにあるdescriptionフィールドは、Claude Codeのルーティングシステムが参照します。「どんな状況でこのスキルを使うべきか」「何の前・何の後に使うか」「何をしないか」を1〜3文で記述します。このdescriptionの質がスキルの自動選択精度を決定します。
effortパラメータで推論深度を設計する
Claude Opus 4.7では、effortパラメータで推論の深さを制御できます。これはGPT-5.5には存在しない設計要素です。
| effort | 用途 |
|---|---|
low |
単純な変換・フォーマット変換など、深い思考が不要なタスク |
medium |
標準的な記事執筆・コードレビューなど |
high |
複数ドキュメントの比較・長期設計など |
xhigh |
複数公式ドキュメント比較・複雑なアーキテクチャ設計など |
thinking: adaptiveと組み合わせると、タスクの複雑さに応じて推論深度が自動調整されます。
import anthropic
client = anthropic.Anthropic()
response = client.messages.create(
model="claude-opus-4-7",
max_tokens=64000,
thinking={"type": "adaptive"},
output_config={"effort": "xhigh"}, # 複数公式ドキュメント比較・長期設計
messages=[{"role": "user", "content": "WordPress技術記事のアウトラインを設計してください..."}],
)
Claude Code式 実装テンプレート
---
description: WordPress技術記事のSEO最適化アウトラインを設計する。リサーチ結果・対象読者・フォーカスKWを受け取り、H2/H3構成・検索意図・コード例配置を含むoutline.mdを生成する。Geminiリサーチ完了後かつwp-article-writer呼び出し前に使う。outline.mdの生成のみを行い、記事本文の執筆は別スキルに委譲する。
Recommended runtime:
- model: claude-opus-4-7
- thinking: adaptive
- effort: xhigh(複数公式ドキュメント比較・長期設計の場合)
---
<role>
あなたはSEOに精通したブログ編集長です。技術記事のアウトラインを設計します。
このフォーマットをすべての出力セクションに適用してください。
</role>
<context>
対象読者: {{ reader_persona }}
リサーチ結果: {{ research_summary }}
出典リスト: {{ sources }}
</context>
<task>
以下の形式でoutline.mdを生成し、{{ output_path }}に保存してください:
- フォーカスKW(1語句)
- 関連KW(3-5語句)
- 検索意図(1行)
- H2 3-5本 / 各H2下にH3 2-3本
- 各セクションにtarget_keywords
outline.mdの生成のみを行う。記事本文の執筆はしない。
</task>
<constraints>
- タイトルはフォーカスKWで始める(32-60文字)
- H2は最低1つにフォーカスKWを含める
- コードサンプルが必要な箇所を明記する
- 公式情報と推測を分ける
- やらないこと: 記事本文の執筆、画像生成リクエスト、WordPress投稿
</constraints>
<constraints>の「やらないこと」を明示することで、スコープクリープを防ぎます。
参考: Anthropic Claude Prompting Best Practices(公式)
Claude向け指示で特に注意すること
Claude Opus 4.7は指示を文字通りに解釈します。「構成案を作る」という指示では、「どの公式情報を参照するか」「何を含めるべきか」「どこで止まるか」が指示されていないため、モデルが推測で補完します。
防ぐために以下の3点を必ず<constraints>内に明示します:
- 反映範囲: 「提供した出典リストのURLのみを参照する」「学習データのみに基づく情報は『要確認』と付ける」
- やらないこと: 「記事本文の執筆はしない」「画像生成リクエストは作らない」など、スコープ外のタスクを列挙
- 停止条件: 「フォーカスKWが未指定の場合は確認してから進む」「出典URLが0件の場合は止まる」
設計思想の違い: GPT-5.5は契約、Claude SKILLは起動装置
GPT-5.5: outcome-first と Stop rules
GPT-5.5の設計思想は「outcome-first(成果物優先)」です。タスクを実行する前に「何が完成したら終わりか」を定義することで、モデルの動作を制御します。Stop rulesに代表される停止条件の明示が鍵で、安全性は開発者がプロンプト上にガードレールを設置します。
Claude Opus 4.7: Constitutional AI と explicit context
Claude Opus 4.7の設計思想の背骨にはConstitutional AIがあります。モデル自体に安全性の原則が組み込まれているため、開発者が明示的に書かなくても一定の安全性が保たれます。ただし、タスクのスコープ制限は依然として<constraints>に明示する必要があります。
explicit context(文脈の明示)を重視し、具体的な状況・目的・制約を与えることで、Claudeはより正確に意図を理解します。
参考: Constitutional AI(Anthropic公式)
実務での組み合わせ方
GPT-5.5とClaude Opus 4.7は競合ではなく、役割分担して使うことで最大の効果を発揮します。
Claude Codeが担う役割(effort: high〜xhigh):
- 複数の公式ドキュメントを比較してアウトラインを設計する
- 生成されたコードをレビューして品質基準に合うか判断する
- ユーザーの曖昧な要求を整理して実装可能な仕様に落とし込む
Codexが担う役割(7要素で成果物の契約を定義):
- Claude Codeが設計したアウトラインを元に記事HTMLを生成する
- 定義されたSuccess criteriaをすべて満たすまで反復する
- バッチ処理・繰り返し作業を自律的に実行する
Claude Code側のSKILL.mdには「Codexへのhandoffのタイミング」を明示し、Codex側のSKILLには「受け取るべき成果物の仕様」を7要素で定義します。両者を正しく設計することで、end-to-endの自動化パイプラインが安定して動作します。
まとめ
- GPT-5.5(Codex) は7要素で「成果物の契約」を作る。outcome-first設計で、Stop rulesによる停止条件の明示が必須
- Claude Opus 4.7 はSKILL.mdのdescriptionで起動条件を定義し、XMLタグで役割・文脈・制約を構造化する。effortパラメータで推論深度を設計対象にできる点がGPT-5.5にはない特徴
- 共通のNG は「役割だけ書いて成功状態・停止条件・協働スタイルを省略すること」
- 安全性の設計 はGPT-5.5がStop rulesを開発者が書き、Claude Opus 4.7はConstitutional AIでモデルに組み込み済み。ただしスコープ制限はどちらも明示が必要
- 実務での役割分担 は、Claude Codeが計画・設計・レビューを担い、Codexが実装・検証・自律実行を担う構成が効果的
プロンプト設計の質は、エージェントが「期待通りに止まれるか」で決まります。
さらに詳しく
この記事では技術的な手順を中心にまとめました。
実際の業務にどう組み込んでいるか、導入時のつまずきポイントなど、
より詳細な運用レビューは以下のブログ記事にまとめています。
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