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文化祭などのイベントをLIVE配信する

2025/02/16に公開

事前準備(非技術)

あらゆる現場において、事前準備がプロジェクトの成否の8~9割を決めるといっても過言ではありません。LIVE配信と聞くと、技術的な準備や要件ばかりに気を取られがちですが、それ以上に重要なのは非技術的な準備です。

依頼者の要望を聞く

まず、依頼者から要望をヒアリングします。多くの場合、依頼者は明確なプランを持っていません。「こんな演出がしたい」「このような配信にしたい」程度の漠然としたイメージがあれば十分です。依頼者への質問を通じて、プロジェクトの全体像を固めていきます。私は最低限、以下の要件は必ず確認するようにしています:

  • 配信の対象者
  • 配信内容
  • 配信プラットフォーム(または必要な要件)
  • 配信場所
  • 本番時間と設営時間の詳細
  • 来場者数と出演者数
  • LIVE配信に関する責任者の確認
  • アーカイブの取り扱い方針
  • 必要なマイク本数

リソース/リスク/コンプライアンスとの照合と検討

依頼者からの要望を受けた後、実現可能性の検討を行います。保有する機材や人員以上のことを行うのは物理的に不可能です。また、依頼者が気づいていないリスクについても考慮し、改善策を提案することが重要です。特に以下の点に注意を払っています。

配信プラットフォームの選定

配信プラットフォームの選定は極めて重要です。優れたカメラワークやスイッチングを行っても、配信サービスから停止されては意味がありません。

例えば、YouTubeでは著作権違反の可能性がある音楽が使用されている場合、AIが自動的に配信を停止することがあります。著作権侵害の懸念がない場合や、依頼者がそのリスクを了承している場合は、YouTubeでの配信も選択肢となります。

YouTube以外にも様々な配信プラットフォームが存在します。以下に、私が使用経験のあるプラットフォームを挙げます。

  • Vimeo
  • Cloudflare Stream

これらの有料サービスは、YouTubeと比較して機能面での優位性や、著作権による配信停止のリスクが極めて低いことが特徴です。

また、学校内限定の配信で、ローカルLANが利用可能な場合は、LANライブストリーミングも選択肢となります。ただし、配信可能なクライアント数がLANの帯域に依存する点に注意が必要です。この方式を採用する場合は、事前に本番に近い環境で帯域幅の検証を行うことを推奨します。

演者や第三者の映り込み

配信映像への映り込みに関する取り扱いについて、事前に検討する必要があります。演者全員に配信が行われることが共有されているか、観客が映り込んだ場合の対応方針について、事前に依頼者と協議しておきましょう。多くの場合は問題になりませんが、責任の所在や対応について事前に合意しておくことが重要です。

その他、現実的でない部分の指摘

依頼者の要望が現実的でない場合は、率直に指摘する必要があります。本番での混乱を防ぐため、以下のような点を確認します。

  • マイクの配置や本数は適切か
  • リハーサルなしは本当に可能か
  • 機材や人員の制約は考慮されているか

現実的な進行プランを作成し、共有する

プランが具体化してきたら、設営、本番、撤収の3段階で構成される進行プランを作成します。各段階において、時間軸に沿って誰が何をするのかを詳細に記載します。進行プランで最も重要なのは、キュー(Cue)の管理です。以下の要素を必ず明記します。

  • 誰が
  • 何をしたら
  • 何をするのか

例:

Cue: 音源1再生 Cue主体: 山田@吹奏楽部
Cue: スポット明転 Cue主体: 花山@ダンス部
Cue: マイク1ON Cue主体: 浜田@文化祭実行委員


設営・撤収については、十分な時間的余裕を確保し、機材や作業の依存関係を考慮することが重要です。例えば、以下のような順序性を意識します。

  • 演台の設置が完了しないと、照明位置の決定ができない
  • 音響機材の配置は、配線経路の確保後に行う
  • カメラポジションは、観客の動線を考慮して決定する

これらの作業について、並行して進められるものと順序性が必要なものを見極め、人員リソースの範囲内で効率的に進行できるよう計画します。

事前準備(技術)

技術的な準備は非常に奥が深く、この記事だけですべてを解説することは残念ながら難しいです。ここでは共通となる流れのみを解説します。

依頼から必要機材を逆算する

依頼内容から必要な機材を逆算し、リストアップします。手持ちの機材や予算の制約により確保が難しい場合は、依頼者と再度相談の上、規模の縮小を検討してください。

機材調達の状況は、スプレッドシートなどでの共有が効果的です。特に複数人で機材調達を行う場合、状況を逐次更新することで、余計な連絡を省きつつ機材状況を正確に把握できます。

配線図/会場図を作成する

調達可能な機材の見通しが立ったら、配線図と会場図を作成します。私の経験では、ホワイトボードや紙を使用した手書きでの検討が最も効果的です。いきなりパワーポイントなどの作図ツールを使用すると、かえって検討が難しくなります。まずは紙とペンで検討し、共有が必要な場合に限り、ツールで清書することをお勧めします。

この段階で、配線の長さや動線との交差など、本番をできる限り正確にイメージすることが重要です。

機材検証を行う

調達した機材の動作確認を行います。ここではすべての機材を個別にチェックすることが重要です。同型の機材のうち1つだけを確認して済ませることは、チェックの意味を失います。すべてのケーブル、すべての機材を本番と同じ構成で検証することが不可欠です。

全機材のマニュアルをダウンロードしておく

使用するすべての機材のマニュアルを事前にダウンロードし、即時参照可能な状態にしておくことを強く推奨します。特に海外製の機材は、インターネット上でマニュアルの入手が困難な場合があります。本番中に不測の事態が発生した際、マニュアルをすぐに参照できることで、トラブルの迅速な解決につながります。

本番

上述の準備を入念に行っていれば、あとは安全に注意しながら予定通りに実行するだけです。事前準備の段階でトラブルポイントへの対策を講じておけば、大きな問題は発生しにくいものです。本番がうまくいかない場合、その原因のほとんどは準備不足にあります。

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