"I can't speak English"をちょっとだけ直すTips - ITエンジニア向け実践ガイド
別の記事でも書いた通り、英語での意思疎通の一歩目は文字起こしやツールを頼ることをお勧めしています。
この記事では「会話にトライしたけどうまくいかない」初めの一歩を踏み出した勇者たち(偉い!)に向けた小技を紹介します。
はじめに - 会話する時のイメージ
英会話教室という手ももちろんありますが、気軽に試すならAI会話アプリはとてもよいと思います。
いかんせん場数が最重要なので、どんな形であれ声と耳を使って練習する機会を作っていくことが大事です。
会話している時の脳の動き
会話というと「聞く」「しゃべる」というInput / Output動作に注目が集まりがちですが、
しゃべっている当人の頭の中はもっと多くの工程を処理をしています。
イメージしやすいように、エンジニア風に処理工程を分解して言語化してみます。
初心者のころの処理フロー
- 日本語で文章を組み立てる
- 作った文章を英語に再構成する
- 口の使い方に気をつけながら英語で「しゃべる」
- 相手が反応してくるのでがんばって「聞き取る」
- 聞き取れた英語を日本語に再構成する
- 内容を理解する
- 返答する準備をする(1に戻る)
2と5の処理を、僕は意図的に「再構成」と呼んでいます。
実際に長い文章を英訳・和訳してみるとよくわかるのですが、文章の構造(特に主語と述語の位置)を並べ替えたり、日本語で省略されている主語を補ったり…日英間の翻訳には変換するための準備工程が多いです。
関数や数式のように「当てはめれば簡単に答えが出る演算処理」ではないため、どうしても結構な時間と負荷がかかります。ネットワーク屋さん的に言うと、「ハードウェアルーティングではなくソフトウェアルーティング」なのです。
慣れてからの処理フロー
- 訴求したいことを踏まえて、いきなり英文で文章を組み立てる
- 英語で「しゃべる」
- 相手の反応を「聞き取り」ながら、英語のまま意味を理解する
- 返答する準備をする(1に戻る)
場数を積んで慣れてくると、直接英語でしゃべることを組み立てる/聞き取って理解することで、再構成を省いて脳内処理の時短と負荷低減をしています。
慣れとともに脳が勝手にだんだんこのフローで処理し始めるので、本人的には経験積んだらなんかしゃべれるようになってきたぐらいの自覚しかありません。
最近はさらに慣れてきて、1.の工程も省略して「しゃべりながら組み立てる」ということもできるようになってきました。
場数を踏むためにやった学習方法・訓練方法は後日別の記事にまとめたいと思います。
英語を「しゃべる」
英語をしゃべる時の気の持ち様
ビジネス英会話では、発音や文法的な正しさよりも言いたいことを伝えることが優先です。
また、ビジネスシーンでは「日本人が英語を苦手に感じている」ことを配慮できる海外メンバーが多い印象です。
契約や書面を交わすなどの緻密なやり取りが必要な場面を除き、普段の会話では間違うことを恐れずガンガン行きましょう。
ボキャブラリーは「手札」
ズバッとハマる単語やイディオムで短くまとめられるのが理想ですが、一朝一夕にはできません。
実際には「今持っている手札」で勝負するしかないので、「手札を組み合わせて」どう表現できるか考えます。
100点の正しい表現ではなく、赤点ギリギリ回避の21点の表現を狙って気楽にチャレンジしましょう。
「手札を組み合わせる」例:ニュアンスを簡単に表現してみる
「たぶん」という単語の種類がたくさんあるのは多くの人が知るところでしょう。
可能性の高い順に、most likely, probably, maybe, perhaps, possibly...といった単語がある他、教科書ではmay, might, will, wouldなどでも表現できると教わります。
使い分けを実践できるまでには経験が要ります。僕は簡単な単語を組み合わせて表現するようにしてます。
- "I'm 100% sure now!"
- "60% understood, (please write to me later)"
- "About 20% sure... we need more understanding"
「どれぐらい理解できたよ!」という感触を相手に伝えるのが目的なので、とりあえず伝われば十分です。
自分なりの言い方でいいと思えば、少し気が楽になりませんか?
英語を「聞き取る」
聞いた直後に来る「すぐしゃべらなきゃ」
Webinarなどの一方的に聞き取る場面なら別ですが、会話する場面では「聞いた後に反応する」ということが求められます。
顔の見える対面会議やビデオ通話なら表情や仕草で反応を見せればよいのですが、
電話や会議など、相手の顔が見えないシーンでは沈黙の時間を長く作ってしまうと、話者は伝わったかわからなくて不安に思います。
(こちらが反応しないと「沈黙」を埋めるために相手が別の言い換えでしゃべり始めて、なお困ってしまうこともあります。)
こういった場面では反応時間を短くするための準備が大事になってきます。
簡単な返答フレーズだけまずは練習しておく
どんな場面でも汎用的に使える代表的なフレーズとして、以下を準備しておくといいと思います。
- Hold on please (ちょっとまって)
- *well... / let me see... * (ええとねぇ…:次に発する言葉を考えるための時間稼ぎに使う)
- Could you speak slowly, please (ゆっくりしゃべってください)
- Sorry, could you repeat? (ごめんもう一回言ってくれない?)
- okay / Understood (わかったよ)
-
Sorry I didn't get the point(ごめんちょっと何言いたいかがわからなかった)
フレーズ自体はなんでもよいのですが、使うものを事前に決めたら声に出して練習して、すぐに出るようにしておくのが大事です。
もっとなりふりをかまわない場合は、これだけでも最悪意図は伝わります。
- wait (待て)
- okay (了解)
- slowly please (ゆっくり)
- repeat please (繰り返せ)
- uh… / ah! (声のトーンだけで納得できているか感触を知らせる。オーバーな演技力と勇気が必要)
なお、後者のリストは教科書的に言うと命令表現です。
社内ITやベンダーとしか会話しない僕は出会ったことがないですが、場面や相手によっては気にする人もいるでしょう。心配なら事前または事後にメールか、冒頭スピーチで「英語喋るのが得意じゃない」「ボキャブラリーが少ない」ことを一言断っておくのもいいかもしれません。
※何度も言うと「くどい」と思われて印象が悪くなるので、最初の1回で十分です
💡英語が苦手な人へのヒント
完璧にしゃべれないのはむしろ当たり前
どれだけ英語に慣れ親しんだ人でも、わからないことはわかりません。実際、日本語同士でも「相手が何言ってるかわからない」ことはよくありますよね。慣れない英会話ではなおさら、「口頭会話だけで完璧にやり取りしよう」と思わないことが大事です。
英語での口頭会話はあくまでもコミュニケーション手段の1つにすぎないということを知っておくと少しだけ気楽になると思います。
メールやAI翻訳などの文章スタイルで意思疎通したり、一緒に図を描いてみるのも有効です。対面だとジェスチャーや表情も立派なコミュニケーション:意思疎通の手段です。
いろんなチャンネルを組み合わせて、最後にわかりあえればそれで十分目的は達成できるということを忘れないでください。
ちょっとずつ良くすればいい
会話の場数を踏むほど会話スキルは上達します。
具体的には、相手の良い言い回しからボキャブラリーを増やすという小技があります。
実際に使う例として、「同じ理解だね」をイギリス人からパクって口頭会話の時はWe are on the same pageとよく表現してます。
最初こそボキャブラリーが足りなくて表現が冗長になり時間がかかりますが、言葉のストックを貯めることでしばらくすれば同じ内容をもっと端的に表現できるようになるでしょう。
最初から完璧を求めすぎず、だんだんよくしていく意識が大事です。
日本人としての特性を知っておく
十把一絡げに語られることを僕自身はすごく嫌っています。しかしながら、いわゆる”国民性”は文化的な背景・歴史的な経緯によって積み上げられ根付いた心理であり無視はできません。
特性と傾向を知った上で向き合うと、自分が不安に感じていることの正体に行き着くこともあります。
日本の文化的特性として以下のような傾向が見られると、(あくまでも)一般的には言われています。
- 合議的な意思決定を好む傾向があり、個人での即断即決を避ける場面も少なくない
- 言語体系が曖昧さを許容し、断定的な表現を避けることで対人関係の摩擦を抑える文化
- 完璧を目指す文化が根付きやすく、失敗を恐れてチャレンジを躊躇する空気が生まれることもある
この文化的な特性は、英語をしゃべるシーンでは足枷になることがあります。僕も英語をしゃべり始めたころは、主に以下の点で抵抗感や不安を感じました。
- 相手に返事する際に一人で話す内容を決めないといけなくて不安
- 言い切る形にすることになんとなく抵抗を感じる
- きちんと正しい文法だという確証がないと喋り始めにくい
日本人としての殻をやぶる方法
ある日、英語でしゃべっている間は「プラグマティズム(実践主義・実用主義)的な仮想アメリカ人格」になりきってみたら、この心理的な壁を壊すことができました。
- とにかく思ったことは率直に言う。どう思われても構わない、後で言い直せばいい
- 「自分はこう思う」という形にして言い切る。組織方針と違ってたら後でアップデートしよう
- 芯さえズレていなければ間違っていてもいい、後で補足できる
日本人からすると大雑把に見えるかもしれませんが、大抵のことは実際に”後でフォローできる”ものです。
グローバルというフィールドでは大半のことはオープンに話しても誰も咎めませんし、むしろオープンに話すことを好む雰囲気があります。
「わからない、決められない」ではなく「自分はぶっちゃけこう思う」思い切って正直に話してみることは心理的な壁を乗り越える重要なポイントです。
ただ誤ってセンシティブな話…たとえば宗教の話に深入りしてしまい、空気がピリつかせた経験も2回ほどあります。どちらも即座に「失礼なことを聞いたなら本当にごめんなさい、僕が無神経だった」と謝罪してことなきを得ましたが、かなり肝を冷やしました。
相手の文化への理解と配慮は不可欠であり「なんでもあけすけに話せばいい」わけではないことは併せて知っておいてください。
終わりに
英会話はスキルであって才能ではありません。手札を揃え、場数を踏めば、誰でも少しずつ強くなれます。
長い道のりを歩き始めた勇者たちの健闘を祈ります。
以下の記事も参考にどうぞ!
英会話の最初の一歩の踏み出し方。英会話を怖く感じる理由や技術英語の難しさにも触れています
英語スキルが熟練しても会話が成り立たないケースと対応事例。英語スキルが大事…とは限らないことを説いています
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