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AI時代に、あえて「遠回り」な学習を選んでみた話

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こんにちは。
私は25年4月に新卒未経験でエンジニアとして入社し、何から手をつければよいかわからない状態でキャリアをスタートしました。これは、その過程で私が実体験したエピソードになります。

1. 「分かったつもり」の積み重ねへの焦り

チームに配属された当初は目の前のタスクをこなすことで精一杯で、とにかくAIと一緒にコードを書くことで知識を増やしていこうとしました。AIにコードを生成してもらって、その内容について、ここはどんな仕組みなのかとAIと壁打ちしながら一つずつ理解していく形をとっていました。いわゆるAIバイブコーディングを繰り返す実装でした。
※ AIバイブコーディングとは、AIに自然言語で命令し、コードを書いてもらう実装方法のこと。

当時は、その場その場でAIが丁寧に解説してくれるので、自分でも十分に理解できているつもりでした。例えば、以下のようなやり取りを繰り返していました。

私:「出発地と到着地からタクシー料金を算出する機能を実装したいので、コードを書いてほしいです。」
AI:「承知いたしました。[完成したコードが表示される]」
私:「ちなみに、このメソッドでは何をしていますか? ここの処理はなぜこのような形にしているのか教えてください。」
AI:「はい、ここでは移動距離を計算しており、このメソッドは……」
私:「なるほど(分かった気がする)」

しかし、いざ数日経ってから自分が書いたはずのコードを見返してみると、何をしているのか分からず思考が止まってしまうことが多々ありました。理解したはずの内容を人に説明しようとしても、どんな処理なのか、どうしてそれが必要なのかを自分の言葉で表すことができません。結局、また同じような質問をAIにして、その場をやり過ごすことになっていました。

このような状況でどれだけAIと対話して時間をかけても、自分の頭の中に知識が定着していく実感は得られませんでした。ただAIという外付けの脳に頼っているだけで、自分自身の理解は一歩も進んでいないのではないか。そんな焦りがじわじわと生まれ始めました。

2. 特性を認め、やり方を変える

なぜ、このような方法で知識が定着するタイプもいるのに自分は全然身につかないのだろうと考え、自分の特性を改めて見つめ直しました。思い返してみると、私は大学までずっと競泳をしていたのですが、考えて泳ぐタイプではなく、自分で意識せずともその動きができるようになるまでひたすら反復するタイプの人間でした。つまり、もともと要領がいいタイプではなかったのです。

そのため、AIに最初から答えを出してもらい、それを解説してもらうスタイルは、効率が良すぎるがゆえに脳を素通りしていたのだと思います。いったんは理解できるけれど、それを積み上げることができない。このままではいつまで経っても自分一人で立てるようにはならないと感じ始めました。

だからこそ、スマートに理屈を一度聞いて理解するより、地道に数をこなして自分の手を動かす。そのように感覚を掴んでいくことが必要なのだとようやく気づきました。

そこで、これまでの効率的な学習を一度捨てて、あえて遠回りするやり方に変えてみることにしました。それはAIをコーチのような存在として置くことです。

3. 遠回りして見えてきた自分の地力

具体的には、AIに以下のようなプロンプトを投げるようにしました。

私:「出発地と到着地からタクシー料金を算出する機能を実装したいです。まずは手順だけを書き出してください。コードの例は出さずに、実装の流れを箇条書きだけで説明してほしいです」
AI:「わかりました。実装の手順を整理します。
出発地・到着地が存在しているかのバリデーションを行う
出発地・到着地の座標を取得する
座標間から距離を取得する
...etc

私:「(自分で書いたコードを提示して)一回書いてみましたが、ここの部分をどうするべきかよくわからないです。答えは言わないで、こうしたら良さそうなどの考え方のヒントを教えてください。」

といった形です。

以前ならAIに任せてすぐ終わった作業に、2倍も3倍も時間がかかることもあります。エラーが出てもまずは一通り自分が思いつく限りのことを試しました。それでも本当にわからなかったらそこで初めてヒントを出してもらう形で、試行錯誤を繰り返しました。

しかし、この遠回りこそが私には必要でした。なぜこうなるのかを自分の頭で必死にひねり出し、苦労して書き上げたコードは、数日経っても忘れにくくなりました。AIに聞いていた時とは比べ物にならないくらい、自分の理解が深まっている感覚がありました。

その変化は、新しいタスクに取り組むときにも現れました。以前なら初めて見るコードはAIに解説してもらわないと全く理解できませんでしたが、今では、これはおそらくこういう処理をしているのだろう、と自分の頭である程度の推測ができるようになってきたのです。地道に手を動かすプロセスを経て、ようやく知識が自分の血肉になっていくのを感じることができました。

4. 丸善の棚で感じた「AIとの向き合い方」

このような学習を続けていた頃、エンジニアリング・マネージャーの井上さん(@tomoyukiinoue)から、東京の丸善という本屋に行ってごらんと言われました。
https://zenn.dev/tokium_dev/articles/0e4b1552824dfc

ネットで何でも買える時代に、わざわざ大きな本屋に行く意味があるのだろうかと思いながら足を運んでみると、そこにはAmazonの画面では味わえない感覚がありました。入口の目立つ場所に、AI関連の本がずらりと平積みされていたのです。

ただ、それを前にして私が感じたのは、最新技術への焦りではなく、今の自分に足りない土台は何かという客観的な視点でした。開発者としてコードは書いていても、Webや通信の根本的な知識が乏しいために、問題に直面したときに解決の糸口を想像できないことがよくあったからです。

そこで私は、Web技術の基本がわかる本を自分の手で探すことにしました。ネットのレコメンドに従うのではなく、一冊ずつ中身を確かめていきました。自分の目で確かめて選ぶ時間は、まさにAIに頼らずに自分の頭で考える練習そのものだったように思います。そうして、今の自分に一番しっくりくる土台となる一冊を、納得感を持って選ぶことができました。

5. おわりに

AI時代は、スピードと効率がすべてだと思われがちですが、人によって最適な学習のスピードも、理解の仕方も違うはずです。もし、AIの進化の速さに焦って自分の頭が動いていないと感じたら、あえて遠回りをしてみてください。

AIは、最高の答えをくれるだけでなく、最高の問いをくれる存在にもなってくれます。ただ、効率を追い求めるだけでなく、自分に合ったペースややり方を見つけることも大切だと思います。私にとっての「遠回り」が、誰かにとってのヒントになれば嬉しいです。

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