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ハーバーボッシュ法が20世紀の人口爆発を支えた。AI/ロボティクスは21世紀の人口減少を支える。

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今回は、現代社会の大きな変化として捉えている「人口減少」と、それを乗り越える鍵になると考えている「AI/ロボティクス技術」について、考察を共有したいと思います。特に、過去の技術革新が社会構造に与えた影響を振り返りながら、AI/ロボティクスが今後どのような役割を担いうるのか、その可能性についてお話しできればと思います。

この記事では、IT産業の成熟と人口減少という現代的な課題を踏まえつつ、AI/ロボティクスがもたらす未来への期待について、僕なりの考えを述べさせていただきます。

はじめに:歴史からの類推

20世紀、化学者のハーバーとボッシュが開発したアンモニア合成法、いわゆるハーバーボッシュ法は、化学肥料の大量生産を可能にし、食糧生産を飛躍的に増大させました。これがなければ、20世紀に見られたような急激な人口増加、いわゆる「人口爆発」を支えることは困難だったでしょう。一つの技術革新が、時代の大きなうねりを支えた好例です。

翻って21世紀、私たちは**「人口減少」という、これまで人類が経験したことのない局面を迎えています。この大きな課題に対し、AI(人工知能)とロボティクス技術が、かつてのハーバーボッシュ法のような役割を果たすのではないか、というのが私の考えです。

IT産業の成熟と次なるフェーズ

社会を支える基幹産業は、約50年周期で成熟期を迎えるという見方があります。現代の主要産業であるIT産業に目を向けると、Windows95が登場しインターネットが一般に普及し始めた1995年を起点とするならば、既に約30年が経過し、成熟サイクルの半分を過ぎたと言えるかもしれません。

これまでのIT産業の前半戦は、主にコンシューマー(ToC)向けサービスが主戦場でした。スマートフォンアプリ、SNS、ECサイトなどが私たちの生活を大きく変えました。日本においても、ToC領域の大手であるLINEとヤフーが経営統合したことは、この領域がある程度の成熟段階に達したことを象徴する出来事の一つと捉えられます。

そして、IT産業の後半戦は、ビジネス(ToB)領域、すなわち産業分野での活用が主戦場になると考えられます。業務効率化、生産性向上、新たなビジネスモデルの創出など、AIやロボティクスといった先端技術が、より深く産業構造に入り込んでいくフェーズです。

人口減少という未曽有の課題

多くの先進国、特に日本が直面しているのが、深刻な人口減少です。これは単に人口が減るというだけでなく、様々な社会課題を引き起こします。

まず、生産年齢人口の減少による「労働力不足」は、経済成長の大きな足かせとなります。また、核家族化や単身世帯の増加により「世帯数は増える一方で、一世帯あたりの人員は減少する」という現象も起きています。これは、例えば物流やインフラ維持など、世帯単位で提供されるサービスの非効率化、すなわち「労働投入効率の低下」を招きます。
*リクルートワークス研究所「令和の転換点」を参考にしています

報告書「令和の転換点」|報告書|リクルートワークス研究所

歴史を振り返れば、ペストやスペイン風邪のようなパンデミック、あるいは戦争によって一時的に人口が急減したことはありました。しかし、社会が成熟し、出生率が自然に低下していくことによる持続的な人口減少は、人類がこれまで本格的に経験したことのない事象です。私たちは、未知の航路を進んでいると言えるでしょう。

AI/ロボティクス:人口減少社会を支える基盤技術へ

この未曽有の課題である人口減少を乗り越え、社会を持続可能なものにしていくためには、新たな技術が必要です。そこで大きな期待が寄せられるのが、AIとロボティクスです。

労働力が不足するなら、AIによる自動化やロボットによる物理作業の代替を進める。世帯人員の減少で低下する労働投入効率は、AIによる最適化やロボット活用による省人化で補う。まさに、20世紀にハーバーボッシュ法が食糧生産の限界を突破して人口爆発を支えたように、21世紀においてはAI/ロボティクスが労働力や効率性の限界を突破し、人口減少社会を支える基盤技術となり得るのではないかと考えています。

LLMがもたらす「知性」の民主化と生産形態の変化

近年のAI技術の進展の中でも、特にLLM(大規模言語モデル)の登場は画期的です。これにより、高度な知識や専門的な推論能力といった、これまで一部の専門家や高価なシステムに限られていた「知性」に、誰もが安価かつ容易にアクセスできるようになりました。これは、知識や情報の民主化を加速させる大きな力です。

さらに重要なのは、この「知性」がソフトウェアの世界に留まらず、自動車などのハードウェアにも搭載され始めている点です。状況を認識し、AIが判断し、ロボットが物理的な作業を行う。これは、従来の資本主義における生産要素(資本、労働力、土地)に、「高度な知性(ソフトウェア+ハードウェア)」が安価かつ広範に加わることを意味します。見方を変えれば、これは「資本主義的生産形態の拡張」**とも言えるのではないでしょうか。生産性を飛躍的に向上させるポテンシャルを秘めていると感じています。

まとめ

ハーバーボッシュ法がそうであったように、AI/ロボティクスが21世紀の社会基盤となり、私たちが直面する人口減少という大きな課題を乗り越える力となることを期待しています。僕はAI/ロボティクスの社会実装を推進できるような仕事につきたいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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