「知らない」で損をさせない。住民一人ひとりに寄り添う「補助金ナビ」
はじめに
自治体の補助金や給付金。本来、生活を支えるための制度であるはずが、実際には「自分が対象かわからない」「探し出すのが大変」「申請方法が複雑」といった理由で、多くの人が活用しきれていない現状があります。
今回は、この「制度と住民の距離」を埋めるべく、自律的な判断とアクション提案を行うパーソナル・エージェント**「補助金ナビ」**を開発しました。
プロダクト概要:補助金ナビ
「補助金ナビ」は、ユーザーの属性(居住地、家族構成、年収など)を入力するだけで、数ある制度の中から最適なものを自動でピックアップし、**「あなたが対象になる可能性」と「具体的な申請ステップ」**を提示するアプリケーションです。
単なる検索エンジンではなく、複雑な募集要項を読み解き、個別の状況に照らし合わせて「次にとるべき行動」まで導く、あなたのための**「デジタル窓口」**です。
解決したい課題
- 情報のブラックボックス化: 自治体ごとに散らばったPDFやWebサイトから、自分に合う情報を探すコストが高すぎる。
- 条件解釈の難しさ: 「所得制限」「扶養の定義」など、専門的な条件が自分に当てはまるかの判断が困難。
- 最初の一歩が不明: 対象だとわかっても、「どこで」「何を」すればいいのかが直感的にわからない。
システムアーキテクチャ
Google Cloudのマネージドサービスをフル活用し、高速かつ安定した推論基盤を構築しました。
全体構成図

- Frontend: React (Vite / TypeScript)
- Backend: Python (FastAPI)
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Infrastructure:
- Cloud Run: コンテナベースの高速なアプリケーション実行環境。
- Cloud SQL: 補助金マスタデータおよびユーザー属性のセキュアな管理。
- Vertex AI: プロダクトの心臓部。最新の Gemini 2.5 Flash を採用。
Agentic AIとしての3つのポイント
「単なるRAG(情報検索)で終わらせない」ために、以下のエージェント的機能を実装しました。
1. 自律的な「適格性推論」
RAGで取得した補助金情報をただ要約するのではなく、エージェントがユーザーの属性情報と照らし合わせ、「なぜ対象と言えるのか」「どの条件が未達なのか」をステップバイステップで論理的に検証します。これは、情報を「探す」段階から「判断する」段階への自律的なステップアップです。
2. ゴールへの「パス・プランニング」
現時点で条件を満たしていない場合でも、単に「対象外」と突き放すのではなく、「〇〇という書類を取得すれば要件を満たす可能性があります」といった、目標達成(受給)に向けた次の一手を自ら考えて提案します。
3. ハイブリッド・ジャッジメント
ルールベースによる厳密な判定ロジックをベースにしつつ、解釈の余地がある曖昧な要件については、Vertex AIが自律的にコンテキストを読み取って補完・生成します。システムの硬さと、AIの柔軟性を組み合わせたエージェント設計です。
こだわったポイント
1. 透明性重視のUX
- すべての判断に根拠を紐付け、結論だけを返さない
2. 不確実性を前提とした設計
- 「対象外の可能性」を明記し、次の行動を提案
3. LLMの安全な活用
- スキーマ検証で崩れた出力を排除
- ルールベースの判定を常時保持
4. 探索性の高いUI構成
- 一覧で俯瞰 → 詳細で掘り下げる導線
5. MVPの拡張性
- ローカルJSONで即デモ可能
- Firestore/GCS/Vertex AIに段階移行できる構成
開発中に苦労したこと
1. LLM出力の揺らぎ
- 問題: JSONが崩れる/フィールド欠落が起こりやすい
- 解決: スキーマ検証で不正出力を破棄し、ルールベースへフォールバック
2. 根拠と理由の紐付け
- 問題: 「なぜその結論か」が曖昧になりやすい
-
解決:
evidence_refを理由/期限/TODOに紐付け、UIで根拠を常時表示
3. グレーゾーンの扱い
- 問題: 条件未達でも「何が足りないか」が分からない
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解決:
gray_zone_guidanceを追加し、次に取る行動を提示
今後の展望
- マイナンバー連携: 公的個人認証との連携により、入力をゼロにし、100%確実な判定を実現。
- 自治体向けダッシュボード: 住民のニーズを可視化し、自治体がより効果的な施策を打つためのフィードバックループの構築。
おわりに
「補助金ナビ」は、テクノロジーの力で誰もが支援を平等に受けられる社会を目指しています。Google Cloudの強力なAI基盤を活用することで、複雑な社会制度を「誰もが使いこなせる道具」へと変えていきたいと考えています。
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