顔出しなしYouTubeの台本を、AIに“量産”ではなく“品質保証”までやらせた話
はじめに|"AIで台本を量産"の落とし穴
顔出しなしのYouTube(ナレーション+素材だけで成立するタイプ)を複数本、継続して運用しています。この手のチャンネルは本数がそのまま燃料なので、真っ先に「台本をAIで量産しよう」と考えるはずです。私もそうしました。
そして最初の量産で、盛大に失敗しました。AIに「台本を10本書いて」と投げると、確かに10本出てくる。けれど、既出ネタと丸かぶりだったり、事実が怪しかったり、全部が同じ“のっぺりした型”になる。 結局あとで人間が全部チェックし直すことになり、「AIで速くなった」はずが、チェック工程に時間を溶かしていました。
この記事で書くのは、量産の話ではなく「AIに品質保証まで担当させる」話です。結論を先に言うと——効いたのは、書くAIと、チェックするAIを分けたことでした。
つまずき|"1体のAI"に生成もチェックもやらせると甘くなる
最初は、同じAIに「書いて→自分で見直して」とやらせていました。これがうまくいかない。書いた本人(=同じモデル)に採点させると、自分の出力に甘い。 「よく書けています」と自己肯定して、既出ネタとの重複も、事実の怪しさも素通りします。
人間のレビューでも「自分で書いた原稿を自分で校正すると誤字が見つからない」のと同じで、生成と検証は役割で分けないと機能しない、というのが最初の学びでした。
解決①|生成と検証を"別のAI"に分ける
やったことはシンプルで、工程を2つに割りました。
- 生成担当:テーマと制約(尺・構成・トーン)を渡して台本を書かせる
- 検証担当:別のモデルに、生成物を渡して採点させる
ポイントは検証を別のモデルにすること。私は生成を上位モデル、検証を軽量モデルに分けています。役割もプロンプトも変えて、検証側には「褒めるな。基準で減点しろ」と明示する。こうすると、生成側が気持ちよく書いた原稿を、検証側が容赦なく突き返すという健全な緊張関係ができます。
検証側に持たせた採点基準は、だいたいこんな粒度です:
- 既出ネタとの重複はないか(=カニバリ)
- 事実として裏が取れるか(断定していい範囲か)
- フック(冒頭数秒)が弱くないか
- 尺・構成のルールを守っているか
実際の検証側プロンプトは、こんな骨格にしています。「褒めるな」と「点を返せ」を両方書くのがポイントで、これがないと講評だけ返ってきて機械的に判定できません。
あなたは検証担当です。以下の台本を採点してください。
生成はしない・修正案の全文も書かない。採点と改善指示だけ返す。
評価軸(それぞれ0〜1で採点し、重み付き合計を出す)
- 既出との重複のなさ(重み0.3)
- 事実の裏取り・断定していい範囲か(重み0.2)
- フックの強さ(重み0.2)
- 尺・構成ルールの遵守(重み0.15)
- 読者の実益(重み0.15)
出力形式
- 総合スコア(小数第2位まで)
- 各軸のスコア
- 0.85未満の場合のみ、具体的な改善指示を3点以内
モデルの使い分けも決めています。生成は上位モデル、検証は軽量モデル。検証は「基準に照らして減点する」作業なので軽いモデルで十分ですし、何より生成と同じモデルを使わないことが本質です(前述のとおり、自分の出力には甘くなる)。コストも下がります。
解決②|"合格ライン"を数値で決めて、落ちたら書き直させる
検証を入れただけだと「まあまあ良い」で流れてしまうので、合格ラインを数値で固定しました。私は0.85を閾値にしています。
- 検証AIのスコアが0.85未満なら、指摘つきで生成側に差し戻し
- 生成側が直す → 再検証 → 合格するまでループ(回数上限つき)
- 合格したものだけ「投稿可能ストック」に入る
この「0.85未満は人間に来る前に自動で突き返される」という仕組みが効きました。人間が見るのは"すでに一定品質を超えたもの"だけになるので、チェックの負荷が激減します。落ちる原稿の大半は、事実の裏取り不足か、既出ネタとの重複でした。
解決③|"重複チェック"だけは機械にやらせる
AIの採点は優秀ですが、「過去に投稿した全ネタと本当にかぶっていないか」を感覚で判断させると漏れます。 ここだけは機械的に照合しました。
- 過去に出した台本の一覧を持っておく
- 新ネタは、投稿する前に過去分と突き合わせて重複を潰す
実際、これで「未投稿の在庫が、過去の投稿とほぼ同一だった」というニアミスを何度も事前に捕まえています。AIの創造性は活かしつつ、"かぶり検知"みたいな機械的な作業は機械に寄せる。この線引きが、量産の質を保つ肝でした。
実例を1つ。未投稿ストックの中の1本が、すでに投稿済みの回とほぼ同じ内容だと、出す直前の照合で判明したことがあります。 タイトルの言葉づかいが違うので、パッと見では別のテーマに見えていました。けれど視聴者から見れば「同じ話をもう一回された」でしかない。機械照合を挟んでいなければ、気づかずに出していたはずです。幸いまだ未投稿だったので、別ネタに差し替えて事なきを得ました。
差し戻しの方も同じで、落ちる原稿には傾向があります。 私の場合、多かったのは「事実の裏取りが足りない」と「フックが既存の型の焼き直し」の2つ。これはAIの能力の問題ではなく、こちらの渡し方(テーマの選び方)が原因のことが多かったです。検証AIは、生成AIのミスだけでなく、自分の指示の雑さも突き返してくる——これは想定していなかった副産物でした。
つまずき(もう1つ)|"作りっぱなし"だと同じ失敗を繰り返す
生成→検証のループは回るようになりましたが、検証で落ちた理由が毎回リセットされるのが次の課題でした。同じ「フックが弱い」で毎回落ちる。
そこで、検証で3回以上効いた改善パターンを、生成側のルールに"昇格"させるようにしました。人間のチームで「よくある指摘」がだんだんテンプレやチェックリストに固定されていくのと同じで、失敗の学習を仕組みに残す。これで、同じ理由で落ちる回数がだんだん減っていきました。
まとめ
顔出しなしYouTubeの台本づくりで効いたのは、"速く大量に書く"ことではなく、品質保証を仕組みに埋め込むことでした。
- 生成と検証を、別のAIに分ける(自己採点は甘い)
- 合格ラインを数値で固定して、落ちたら自動で差し戻す
- 重複チェックみたいな機械的作業は機械に寄せる
- 効いた改善はルールに昇格させて、同じ失敗を繰り返さない
こうすると、人間が触るのは"すでに合格したもの"だけになり、本数を保ちながらチェック地獄から抜けられます。 空いた時間は、また別の自動化を組むのに回す——という複利のループに入っています。
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