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うさぎでもわかる Kubernetes vs Slurm: LLMの大規模マルチノード学習するならどれ

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うさぎでもわかる Kubernetes vs Slurm: LLMの大規模マルチノード学習するならどれ

はじめに

みなさん、こんにちは!今回はLLM(大規模言語モデル)の学習環境を構築する際に悩ましい選択肢となる「Kubernetes」と「Slurm」について比較していきます。うさぎさんでも理解できるように、シンプルに解説していきますね!

大規模言語モデル(LLM)のトレーニングは、膨大な計算リソースを必要とする作業です。GPT-4やLlama 3のような最新モデルは、数千のGPUを使って数週間から数ヶ月かけて学習されます。こうした大規模分散学習では、リソース管理とジョブのオーケストレーションが非常に重要になってきます。

今日のLLM開発者には、主に2つの選択肢があります:

  1. Kubernetes - クラウドネイティブなコンテナオーケストレーションプラットフォーム
  2. Slurm - 高性能計算(HPC)向けのワークロードマネージャー

このどちらを選ぶべきか、うさぎのように素早く的確な判断ができるよう、両者の特徴と違いを掘り下げていきましょう。

Kubernetesの基本

Kubernetesアーキテクチャ

Kubernetesは、もともとGoogleによって開発されたオープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームです。現在はCloud Native Computing Foundation(CNCF)によって維持管理されています。

主要コンポーネント

Kubernetesのアーキテクチャは、指揮者とオーケストラのような関係性で理解するとわかりやすいかもしれません。うさぎさんがピョンピョン飛び回っても迷子にならない構造になっています。

  • コントロールプレーン(指揮者):クラスタ全体を管理

    • APIサーバー:すべての操作の窓口
    • etcd:クラスタの状態を保存するデータストア
    • スケジューラ:Podの配置先を決定
    • コントローラーマネージャー:クラスタ状態を監視・修正
  • ワーカーノード(楽団員):実際の作業を実行

    • Kubelet:ノード上のコンテナを管理するエージェント
    • Kube-proxy:ネットワーク通信を制御
    • コンテナランタイム:コンテナを実行する環境

Kubernetesの強み

Kubernetesは、クラウドネイティブアプリケーションの管理に優れています。特に:

  • 自己修復機能:障害が発生したポッドを自動的に再起動
  • スケーラビリティ:負荷に応じて自動的にスケールアップ/ダウン
  • 宣言的な設定:あるべき状態を定義し、Kubernetesがその状態を維持
  • 豊富なエコシステム:多くのツールやプラグインが利用可能

Slurmの基本

Slurmアーキテクチャ

Slurm(Simple Linux Utility for Resource Management)は、高性能計算(HPC)環境向けのワークロードマネージャーです。世界中のスーパーコンピュータやHPCクラスターで広く使われています。

主要コンポーネント

Slurmは、うさぎの耳でも聞き取れる簡単な構造をしています:

  • slurmctld(コントローラデーモン):中央管理役としてジョブのスケジューリングや割り当てを担当
  • slurmd(コンピュートノードデーモン):各ノードで動作し、ジョブの実行を管理
  • slurmdbd(データベースデーモン):アカウント情報やジョブ履歴を管理
  • クライアントコマンドsrunsbatchsqueueなどのユーザーインターフェース

Slurmの強み

Slurmは、特に科学計算や大規模な並列処理に最適化されています:

  • 高効率なスケジューリング:複雑なリソース制約を処理できる洗練されたスケジューラ
  • スケーラビリティ:数万ノードまでスケール可能
  • シンプルさ:比較的シンプルな設計と明快なコマンド体系
  • HPCに最適化:低レイテンシの通信やノード間調整に優れる

LLM学習の特性と要件

LLMの学習は、ニンジンを集めるように、多くのリソースを効率よく管理する必要があります。特に以下の要件が重要です:

計算リソース要件

  1. GPU/TPUの大規模並列利用

    • 数十から数千のGPUを同時に使用
    • 高速相互接続による効率的なデータ転送
  2. メモリ要件

    • GPUメモリの効率的な使用(モデル並列化など)
    • ホストメモリとGPUメモリ間の転送最適化

分散トレーニングパターン

  1. データ並列化

    • 同じモデルをコピーして異なるデータバッチで学習
    • 勾配の同期が必要
  2. モデル並列化

    • モデルを複数のGPUに分割
    • より大きなモデルをトレーニング可能
  3. パイプライン並列化

    • モデルの異なる層を異なるGPUで処理
    • 前方/後方パス中の並列処理を最適化

障害対応とチェックポイント

  • 長時間実行ジョブの復元機能
  • 効率的なチェックポイント保存と読み込み
  • ノード障害時の対応

KubernetesによるLLM学習

Kubernetesは、柔軟なコンテナ環境でLLM学習を実行するための多くの機能を提供します。うさぎの目にも優しい、シンプルな設計で、様々な学習タスクに対応できます。

メリット

  1. 柔軟性とポータビリティ

    • コンテナ化されたトレーニング環境
    • クラウドプロバイダー間の移植性
    • カスタムリソース定義(CRD)による拡張性
  2. 豊富なエコシステム

    • Kubeflow、MLflow、Airflowなどの統合
    • ハイパーパラメータチューニングの自動化
    • モニタリングとロギングの充実
  3. 自動スケーリングと自己修復

    • 障害検知と自動復旧
    • 需要に応じたクラスタスケーリング
    • 複数リージョンにまたがる分散学習のサポート

デメリット

  1. HPCワークロード向けの最適化不足

    • 高性能インターコネクト(InfiniBand/RDMA)との統合が複雑
    • HPCライブラリとの親和性が低い場合がある
  2. オーバーヘッド

    • コンテナ化によるパフォーマンスへの影響
    • コントロールプレーンの複雑さ
  3. リソース管理の粒度

    • GPUのキュー管理機能が不足
    • HPCスケジューラほど精密でないリソーススケジューリング

実装例

多くの組織がKubernetesを使ってLLM学習を行っています:

  • Meta AI:Kubernetes上で大規模LLMトレーニングを実行
  • Hugging Face:Kubernetesを使った分散トレーニングのインフラを構築
  • Google Cloud:GKE上でのTPU/GPUを活用した学習環境の提供

SlurmによるLLM学習

Slurmは、高性能計算(HPC)環境で長い歴史を持ち、LLMのような大規模並列計算に最適化されています。

メリット

  1. HPC向け最適化

    • InfiniBand/RDMAなどの高速相互接続の直接サポート
    • MPI(Message Passing Interface)との緊密な統合
    • 低レイテンシのジョブ起動
  2. 精密なリソース管理

    • 高度なスケジューリングアルゴリズム
    • トポロジー認識のノード割り当て
    • 細かなGPUリソース制御
  3. シンプルさと安定性

    • 成熟した技術スタック
    • 明確なコマンドライン操作
    • 大規模インフラでの実績

デメリット

  1. コンテナとの統合

    • ネイティブなコンテナサポートが限定的
    • 最新のMLOpsツールとの連携が少ない
  2. クラウドネイティブ環境との統合

    • クラウドサービスとの接続が複雑な場合がある
    • 動的なリソース管理に制約
  3. エコシステム

    • 機械学習向けツールやワークフローの統合が少ない
    • モニタリングやログ管理が標準化されていない場合がある

実装例

多くの研究機関がSlurmを使ってLLM学習を行っています:

  • 国立研究所:多くの政府系研究所がSlurmを利用
  • 大学のHPCセンター:教育・研究目的でのLLM開発
  • NVIDIA:社内クラスタでの大規模モデル開発

選択ガイド

選択フローチャート

どちらを選ぶべきか、うさぎのように素早い判断ができるようにポイントをまとめました。

環境要因による選択

  1. 既存インフラ

    • オンプレミスHPC環境がある → Slurm
    • クラウドネイティブ環境がある → Kubernetes
    • ハイブリッドクラウド/マルチクラウド → Kubernetes
  2. チームのスキルセット

    • HPC/科学計算のバックグラウンド → Slurm
    • クラウドネイティブ/コンテナ開発経験 → Kubernetes
    • 両方の経験がない → シンプルさでSlurm、成長性でKubernetes

ワークロード特性による選択

比較表

  1. LLM学習のパターン

    • 基礎研究・大規模プリトレーニング → Slurm
    • 様々なサイズの実験・ファインチューニング → Kubernetes
    • 本番ML製品との統合 → Kubernetes
  2. パフォーマンス要件

    • 極限の効率とレイテンシが必要 → Slurm
    • 柔軟性と連携が必要 → Kubernetes

ハイブリッドアプローチ

実際には、両方のシステムを組み合わせる「ハイブリッドアプローチ」も有効です。うさぎも時にはニンジンだけでなく、キャベツも食べると健康になるように、技術も組み合わせることで最適な結果を得られます。

相互運用パターン

  1. 開発はKubernetes、本番学習はSlurm

    • 開発・実験フェーズはKubernetesの柔軟性を活用
    • 大規模プリトレーニングはSlurmの効率を活用
  2. Kubernetes上でSlurmを実行

    • KubernetesでSlurmクラスタを管理
    • 両方の利点を享受(自己修復 + HPC最適化)
  3. タスク分担型

    • データ前処理・モニタリング:Kubernetes
    • 計算集約型学習:Slurm

実装の課題

  • データ共有とストレージアクセス
  • ユーザー認証と権限管理
  • 統一的なモニタリングとロギング

まとめ

LLMの大規模学習環境を選ぶ際、KubernetesとSlurmはどちらも優れた選択肢ですが、異なる強みを持っています。うさぎさんでも選びやすいよう、ポイントをまとめます:

  • Kubernetesを選ぶべき場合

    • クラウドネイティブ環境が基盤
    • 柔軟性とエコシステムの連携が重要
    • MLOpsとの統合が必要
    • 自己修復と動的スケーリングが必須
  • Slurmを選ぶべき場合

    • 既存のHPC環境がある
    • 極限のパフォーマンスが必要
    • シンプルさと安定性を重視
    • 高速インターコネクトを最大活用したい
  • ハイブリッドアプローチ

    • 両方の強みを活かしたい
    • 異なるフェーズで異なる要件がある
    • 投資をバランスよく分散したい

最終的には、あなたの組織のニーズ、既存のインフラ、チームのスキルセット、そして将来の成長計画に基づいて選択すべきです。どちらのシステムも、適切に設計・運用されれば、LLMの大規模学習に対応できる強力なプラットフォームとなります。

うさぎさんでも理解できるように説明しましたが、実際の環境は複雑であり、詳細な検討と専門家の意見を取り入れることをお勧めします。LLMの学習環境構築、がんばってください!

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