AIに無理矢理ノイズを与え、アイデア出しをさせる
問題意識
「AIの書いた文章がつまらないのを何とかしたい」という記事を書きました。そこで指摘したのは、文章のトーンに一貫性がないという問題です。
この記事では、AIの文章がつまらなくなる別の原因として、意外性のなさという問題をあげたいと思います。基本的な仕組みの問題として、生成AIは、それまでの文脈に続いて確率の高い単語を予測することで文章を生成します。そのため、「技術ブログを書け」といったふわっとした指示だと、実に平凡な内容が生まれます。無茶ぶりをすれば、おもしろいことを言うこともあるのですが、とにかく何かまともな内容を出力させるには、制約やノイズを与えてやる必要があります。
対策1: ランダムキーワードで発想を広げる
noteの記事で「アーキトロープ」という手法を紹介している方がいました。
AIが生成する物語をかき乱して改善する「アーキトロープ」という手法について
これは要するに、AIランダムなキーワードを与えることで、興味深い物語を生成する試みです。
これはいい方法だと思いました。これを技術ブログにも応用したい。しかし、さすがに、キーワードの種類は変えた方がいい気がします。上の記事では「血脈, 最果て, 唾棄」といったキーワードを使っています。小説ならこれでいいかもしれませんが、このキーワードで技術ブログはかけそうにありません。そこで、技術ブログ用のキーワードリスト約100個をつくってみました。
例えば、「生産性」「負荷分散」「仕様」のようなキーワードです。
このキーワードを与えることで意外性のある内容を書けるかもしれません。というわけでキーワードを3つ与え、技術ブログのアイデアを3行にまとめるよう、Gemini 2.5. Proに指示しました。
以下のような結果が生成されました。正直いまいちだと思います。
- キーワード: データパイプライン, 負荷分散, 監視・ロギング
- アイデア:
- 大規模データ基盤におけるデータパイプラインの構築と運用の勘所
- データパイプラインの設計時に考慮すべき負荷分散アーキテクチャを解説する。
- 安定運用のための監視・ロギング戦略の重要性と具体的な実装方法を紹介する。
単にキーワードをつなげているだけのように見えます。具体性がないせいで、どういう記事になるのかイメージがわきません。
そこで、プロンプトを改め、具体例を考えるというステップを入れてみます。
発想の際は、まずキーワードの具体例を考える。
例: 「データベース」というキーワードがあったら、データベース一般ではなく、特定のデータベース(mysql, postgres)をあげる。
結果の例
サーバーサイドのレガシーシステムが抱えるリスク(例: Strutsの脆弱性)を、非技術系の上司に理解してもらうための説明戦略。
具体的なデータ(例: Datadogのメトリクス)やアナロジーを用いて、ビジネスインパクトを効果的に伝える方法を解説。
段階的な移行計画(例: ストラングラー・フィグ・パターン)を提示し、近代化プロジェクトの承認を得るための説得術。
キーワードを記録しそこねていたんですが、多分「上司、モダンな技術、セキュリティ」とかそういう感じだと思います。突飛な内容ですが、おもしろそうだと思いました。
対策2: ホロスコープ
「ランダムなキーワードから発想を広げるって占いみたいだな……」と思ったので、占いを使うというアイデアを思いつきました。よくわからない発想ですが、占いって、象徴的なキーワードを解釈し、こじつけたりして、発想を広げるじゃないですか。いや、本当のところ、占いのことはあまり知らないので違うかもしれません。
というわけで、AIにホロスコープを与えます。ちなみに「ホロスコープって何?」と聞かれても、わたしは「なんか星の配置みたいなやつ」くらいしか答えられないので、各自AIに聞いたりしてください。ともかく、ホロスコープは、いい感じに抽象的かつランダム性のある宣託を与えてくれそうなイメージがあります。ところで、やったあとで気づいたんですが、別にタロットとかでも良さそうでしたね。
調べたところ、普通ホロスコープは誕生日をもとに計算するようです。自分の誕生日を使うのも何か違うなと思ったので、AIに、「ホロスコープって現在時刻だけで計算できないの?」と聞いたら、そういうのもあるらしいです。というわけでpythonでホロスコープを計算するスクリプトをAIに作ってもらいました。
スクリプトは以下
結果はこんな感じに表示されます。
=== 2025-07-22 23:34:23.431202+09:00 ホロスコープ ===
【天体位置】
天体 黄道経度 星座 度数 ハウス
------------------------------------------------------------
太陽 120.04° 獅子座♌ 0.04° 第4ハウス
月 91.27° 蟹座♋ 1.27° 第2ハウス
水星 134.79° 獅子座♌ 14.79° 第4ハウス
金星 80.17° 双子座♊ 20.17° 第2ハウス
火星 170.56° 乙女座♍ 20.56° 第5ハウス
木星 99.67° 蟹座♋ 9.67° 第3ハウス
土星 1.86° 牡羊座♈ 1.86° 第12ハウス
天王星 60.62° 双子座♊ 0.62° 第1ハウス
海王星 2.09° 牡羊座♈ 2.09° 第12ハウス
冥王星 302.65° 水瓶座♒ 2.65° 第10ハウス
アセンダント 42.90° 牡牛座♉ 12.90° -
MC(天頂) 296.76° 山羊座♑ 26.76° -
【ハウスカスプ】
ハウス 黄道経度 星座
-----------------------------------
第1ハウス 42.90° 牡牛座♉ 12.90°
第2ハウス 71.67° 双子座♊ 11.67°
第3ハウス 94.42° 蟹座♋ 4.42°
第4ハウス 116.76° 蟹座♋ 26.76°
第5ハウス 143.06° 獅子座♌ 23.06°
第6ハウス 178.34° 乙女座♍ 28.34°
第7ハウス 222.90° 蠍座♏ 12.90°
第8ハウス 251.67° 射手座♐ 11.67°
第9ハウス 274.42° 山羊座♑ 4.42°
第10ハウス 296.76° 山羊座♑ 26.76°
第11ハウス 323.06° 水瓶座♒ 23.06°
第12ハウス 358.34° 魚座♓ 28.34°
【主要アスペクト】
天体1 天体2 アスペクト 実際の角度
-------------------------------------------------------
太陽 土星 トライン(120°) 118.18°
太陽 天王星 セクスタイル(60°) 59.43°
太陽 海王星 トライン(120°) 117.95°
太陽 冥王星 オポジション(180°) 177.39°
太陽 MC(天頂) オポジション(180°) 176.71°
月 土星 スクエア(90°) 89.41°
月 海王星 スクエア(90°) 89.18°
水星 金星 セクスタイル(60°) 54.62°
水星 アセンダント スクエア(90°) 91.89°
金星 火星 スクエア(90°) 90.40°
火星 アセンダント トライン(120°) 127.67°
火星 MC(天頂) トライン(120°) 126.19°
木星 土星 スクエア(90°) 97.81°
木星 海王星 スクエア(90°) 97.58°
木星 アセンダント セクスタイル(60°) 56.78°
土星 天王星 セクスタイル(60°) 58.76°
土星 海王星 コンジャンクション(0°) 0.23°
土星 冥王星 セクスタイル(60°) 59.21°
土星 MC(天頂) セクスタイル(60°) 65.10°
天王星 海王星 セクスタイル(60°) 58.52°
天王星 冥王星 トライン(120°) 117.96°
天王星 MC(天頂) トライン(120°) 123.86°
海王星 冥王星 セクスタイル(60°) 59.44°
海王星 MC(天頂) セクスタイル(60°) 65.33°
冥王星 MC(天頂) コンジャンクション(0°) 5.89°
わたし自身は見てもさっぱりなのですが、Claude Codeに「読める?」と聞いてみたところ、読めるようです。
> ホロスコープ読めますか?
⏺ はい、ホロスコープの基本的な読み方を説明します。
先ほどの結果から主要なポイントを読み解くと:
個人の基本的な性質:
- 太陽が獅子座0度:リーダーシップ、創造性、自己表現を重視
- 月が蟹座1度:感情的な安定、家族や親密な関係を大切にする
- アセンダント(上昇宮)が牡牛座7度:安定志向で実践的な印象を与える
現在の影響:
- 水星(コミュニケーション)が獅子座14度:表現力豊かで劇的なコミュニケーション
- 金星(愛情・美)が双子座20度:知的な刺激を求める恋愛観
- 火星(行動力)が乙女座20度:細部にこだわる実践的な行動
長期的な影響:
- 木星(幸運・拡大)が蟹座9度:家族や感情面での成長機会
- 土星(制限・責任)が牡羊座1度:新しい始まりに対する責任
- 天王星(変革)が双子座0度:コミュニケーションや思考の革新
この解釈が合っているのかは知りませんが、何となくいい感じに抽象的なキーワードを読みとってくれているように思います。ちなみにChatGPT、Claude、Geminiの三種類のどれに聞いても、最新のモデルはホロスコープが「通じる」ということがわかりました。
試してみた
さっそくGeminiに、さっきと同じ感じでホロスコープを使ったアイデア出しをしてもらいました。
以下のようなプロンプトで無理やり具体例をあげ、技術ブログのアイデアを出してもらいます。
技術ブログのアイデアを考える
以下の過程を3回実行
(1)ホロスコープを取得
ホロスコープを無理やり技術的なキーワードとして具体化する
具体的な製品、技術などになるまで具体化する
例: この配置は「堅固」を意味する。「堅固」は「データベース」を意味する。データベースと言えばmysqlだ。
具体例を2つずつあげる。memo.mdに保存
出てきた単語からおもしろそうな組み合わせを選ぶ。
アイデアを3行にまとめ、idea.md に追記
次が生成された結果の例です。悪くないです。こういうシステム自体は普通にありそうです。
Jupyter Notebookで作成したプロトタイプを本番環境へ移行させるためのDevSecOpsパイプライン。
Notebookのコードを自動的にテスト、コンテナ化し、セキュリティスキャンを実行するCI/CDを構築する。
自由な探求と本番環境の信頼性という二つの対立する要求を調和させるための実践的アプローチ。
ちなみにこのアイデアは以下のようなホロスコープに基づいているらしいです。そっか、って感じですね。
ホロスコープ
太陽と土星がオポジション(180°)。火星と天王星がオポジション(180°)。
具体化
- 太陽と土星のオポジション → プロトタイピングの自由さと本番コードの規律の対立
- 具体例1: Jupyter Notebook (自由なプロトタイピング)
- 具体例2: テスト駆動開発(TDD) (規律ある開発)
- 火星と天王星のオポジション → 機能デプロイ(行動)と予期せぬ障害(破壊)の対立
- 具体例1: カオスエンジニアリング (Gremlin)
- 具体例2: DevSecOps (セキュリティの統合)
まとめ
AIの回答にノイズを与え、発想を引き出すため、ランダムなキーワードやホロスコープを与えました。
ランダムなキーワードを与え、「具体例を考える」というステップを入れると、おもしろい回答につながることが多いです。人間が発想を広げるときも、抽象度を上げたり下げたりするといいですね。
あと、最新のAIはだいたいホロスコープを理解するということがわかりました。
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