株式会社T2 マイルストーン紹介
株式会社T2技術開発本部長の辻です。株式会社T2のマイルストーンについてご紹介します。今後本ブログではT2が日々挑戦している技術開発の舞台裏や、未来に向けてのビジョンをお届けします。
T2のPurpose・Mission・Vision
株式会社T2は、「物流の2024年問題」に代表される深刻なドライバー不足の解消と、無事故社会の実現を目標に、レベル4自動運転車両を活用した輸送サービスの開発に注力しています。自動運転車両を開発するだけでなく、運送事業者として貨物輸送のオペレーションまで一貫して担う点が特徴です。道具(Lv4自動運転車両)が出来たとしても、適切に用いることができなければ社会の役に立ちません。レベル4自動運転車両の性能と制約を十分に理解し社会に貢献するためには、緻密かつ地道な運用が欠かせません。いつでもどこでも走行できる万能なシステムではないため、オペレーション側の役割が非常に重要となります。T2は、社会実装に必要なあらゆる取り組みを全力で実行する覚悟です。
私たちは、以下のPurpose / Mission / Visionを掲げ、社会インフラとしての物流を未来へと進化させていきます。
- Purpose:紡ぎ、繋げ、未来へ継ぐ
- Mission: Transforming Transportation
- Vision:自動運転技術を活用し日本の物流を共に支える
今の日本の世界最高品質の物流インフラは、大手・中小物流企業の卓越した現場運用力と経営力、商用車OEMの高品質なものづくり、そして官公庁による制度設計など、関係者の皆様のたゆまぬ創意工夫と努力によって成り立っています。
T2は、そうした既存の物流事業者や行政の皆様と、未来の物流インフラを共に支えたい。
そのためには、単なる技術開発・実証実験(PoC)で終わらせることなく、社会実装まで本気でやり抜く。その覚悟と情熱をもって、私たちは日々の挑戦に向き合っています。
事業マイルストーン
T2は以下の2つの大きな事業マイルストーン達成に向けて推進しております。
- 2025年7月よりLv2自動運転トラックを用いた輸送事業の開始
- 2027年10月よりLv4自動運転トラックを用いた輸送事業の開始
これらのマイルストーンは、社会課題の本質的な解決と日本の未来の物流インフラの構築に直結するものです。本ブログでは、各マイルストーンについて説明いたしますので、T2の活動について理解を深めていただければ幸いです。
1: Lv2自動運転トラックを用いた輸送事業の開始
2025年7月よりLv2自動運転トラックを用いた輸送事業を正式に開始する予定です。
Lv2自動運転トラックはT2が開発した自動運転システムが搭載されており、自動運転対応区間は神奈川から神戸の約500kmに渡ります。顧客の物流拠点から自動運転対応区間までは手動運転、自動運転対応区間は自動運転で運行します。
2024年10月より西濃運輸様、佐川急便様との実証実験を開始し、2025年1月より有償貨物の輸送を開始しました。本ブログ読者の皆様の荷物も、もしかすると運んでいたかもしれません。
現在では日本を代表する企業の皆様(数十社)と実証実験を重ねており、日本社会の物流問題への強い課題意識と共に、T2への高い期待を感じております。
今後も実証実験で得た知見を活用し、安全な自動運転トラックの技術開発を推進するとともに、政府や地方自治体とも連携を深めて、「物流の2024 年問題」解決に向けて、自動運転トラックを活用した幹線輸送サービスの社会実装を目指します。
Lv4自動運転を実現する前段階として、Lv2自動運転を用いて輸送事業を開始する目的は大きく二つあります。
- 技術的な要請:レアシーンの早期蓄積と、無人化に向けてシステムで対応すべき課題の抽出
- 事業的な要請:運送オペレーション立ち上げ、新たな運送サービス構築に向けた要求抽出
輸送事業開始に向けたこれまでの実績
技術領域では、横浜-神戸間約500kmで毎日安定した自動運転走行を実現するための機能開発と品質向上に1年間取り組んでまいりました。2024年5月に駿河湾沼津-浜松間の公道走行を開始してから1年間で多くの機能リリースを達成することが出来ました。自動運転システムを構成する認識、自己位置推定、Motion planning、制御の全てで大きな性能改善、機能追加を実現しております。
特筆すべき点として、運送業で用いるトラックにおいて重要となる技術の一例として、車両制御の安定性が挙げられます。空荷の時もあれば、10tもの貨物を積載することもあるトラックでは、貨物積載重量と重心位置、さらにはタイヤ種類にも影響されて車両の動特性が変わり、車両挙動が変化します。また、道路のカント、傾きや風、雨といった外乱も車両挙動に影響を与えます。様々な顧客貨物を積載し様々な場所、天候で運行し続けることで、自動運転システムに与える結果を開発に即座にフィードバックし、実証を重ねることによって短期間の間に見違えるほどの制御性能の向上を実現しました。
T2自動運転システムは、運行毎に車両特性を考慮した自動制御チューニングシステムを導入しており、どの車両も同じプログラムを用いて走行をしております。また、外乱に強い制御システムを導入しており、安定した走行を実現しております。
本マイルストーン達成に向けて全力で取り組んだことで、自動運転システム開発の基礎を構築できました。Lv4自動運転輸送サービス実現に向けて乗り越えるべき巨大な山は幾度と訪れますが、必ず乗り越えられると信じております。
事業領域では、この一年、運送会社としてのオペレーション立ち上げに注力してまいりました。一般貨物自動車運送事業許可の取得から、運行管理オペレーションの確立、拠点管理、運送ドライバー採用と安全教育等、多岐に渡るタスクを短期間でゼロから立ち上げてまいりました。
株主、顧客などパートナーの皆様のご協力もあり、運送会社としての第一歩を踏み出せたと考えております。
2025年7月からLv2運送業を正式スタートするにあたり、複数台のLv2自動運転車両を用いた試運行も開始しております。T2では通常の運行管理業務に加えて、運行毎に自動運転システム開発へのFBも行います。運行管理のメンバーには負担がかかりますが、彼らの頑張りで、安定した定期運行が成り立っていると共に、自動運転トラック開発への大きな力となっております。
2: Lv4自動運転トラックを用いた輸送事業の開始
2027年10月よりLv4自動運転トラックを用いた顧客(運送会社・荷主)の集約拠点間の貨物輸送サービスを開始予定です。T2は、自動運転車両を売るのではなく、開発した車両を用いて自分たちで運送会社としてオペレーションまで担います。2027年10月時点の走行ルートは、神奈川県綾瀬スマートIC付近から兵庫県神戸西IC付近の有人無人切り替え拠点間です。高速道路・ICに加え、ICから切り替え拠点までの数km以内の一般道路を走行します。
T2では、無人自動運転トラックを活用した輸送サービス構築に向け、運送会社・顧客と共にオペレーションの構想段階から構築、運用まで一気通貫に取り組んでおります。なかでも、無人自動運転トラックの特徴を生かした運送オペレーションを構築し、車両の稼働率、回転数を向上させることが重要となります。
自動運転トラックが無人になることで、430休憩や休息の時間を取る必要無く車両を動かし続けることが可能となります。更に稼働率を上げる策として、トレーラーやスワップボディ車と呼ばれるコンテナの切り離し・切り替えを可能とする仕組みを導入することで、トラックの荷待ち荷役時間の削減を狙います。
無人でトラックを稼働させるために、複数台のトラックをまとめて遠隔監視する仕組みや、万が一事故を起こしてしまった場合にトラックにいち早く駆けつけて現場対応を行うための仕組みも同時に構築が必要となります。T2ではLv4無人自動運転トラックの開発だけでなく、こうした全体のオペレーション開発も行っています。
ここでは、Lv4自動運転トラック開発において、マイルストーン達成に向けて具体的にどのような取り組みを行っているのか簡単にご紹介します。
一般的に言われているように、自動運転トラックは故障が発生した場合でも安全に停止するための冗長系の設計・検証が必要となることに加え、様々なシーンにおいてどのようにトラックが振る舞うかについて説明可能であることが求められます。
「安全性を論証可能な設計・検証による自動運転システムの認可取得」を目指し、無人貨物輸送サービス実現に必要となる自動運転システムに対する要求分析から、システム仕様、アルゴリズム設計、実装とすべてを一気通貫に開発を進めております。
下記は現在技術開発本部で取り組んでいるタスクを一部抜粋したものです。
- Lv4自動運転システム設計
- 要求分析と上流設計
- ユースケース = 振る舞いの定義、網羅性検証
- システム/Software/Hardwareアーキテクチャ設計
- センサレイアウト、搭載要件の決定
- FuSA/Cysec/SOTIF活動、妥当性確認と安全論証
- OEM・官公庁との協議
- 要求分析と上流設計
- Lv4自動運転システム機能開発
- 認識モデル:3次元物体検出、走路認識、車載VLM等
- 自己位置推定、経路計画アルゴリズム、車体制御アルゴリズム
- HD Map有り/Map無し走行システム、MRM・冗長システム
- AD (Autonomous Driving) Platform開発
- 車載OS/Middlewareの開発・統合
- 車載ECUの開発
- センサドライバや状態監視システム、遠隔監視・V2XのIF開発
- 検証戦略・Simulation開発検証
- 検証シナリオの策定
- シナリオ実行環境の構築
- Hardware Platform開発
- 車両設計、センサ搭載設計、車両構築
- 部品選定、部品開発
- 品質強化
- Automotive SPICEに基づく設計成果物の規定
- Software / Hardware開発プロセスの策定
- 事業システム開発
- 遠隔監視システムの要件定義、開発
- 運行管理・車両管理システムの要件定義、開発
- 保守・運用サービス構築
- 自動運転車整備マニュアルの構築
- 整備手法開発(キャリブレーション設備、診断機)
2025年度はこれまで培ってきた開発力と築き上げたパートナーシップを最大限に生かし、2027年10月のLv4自動運転車輸送サービス実現に向けて一気に加速していきます。
Lv4自動運転輸送サービス実現に向けて乗り越えるべき巨大な山は幾度と訪れますが、必ず乗り越えられると信じております。
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