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エンジニアがエンジニアとして活躍を続けるには 〜 兼務を称賛する文化と、専門性を求める文化

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日本でのエンジニアとしての働き方と、シリコンバレーでの働き方は大きく違います。 日本では、複数の業務を掛け持ちしてスーパーマンのように忙しく飛び回ることが称賛されていました。 一方、シリコンバレーでそんな働き方をしようとすると、マネージャーから「仕事に集中しろ」と言われます。

兼務が「美徳」になる日本の現場

日本の開発現場では、経験を積んでチームで一番のエンジニアになると、「リーダー」や「◯長」という肩書きのもとで様々な業務を兼務することになります。 予算管理、部下の人事管理、プロジェクト管理、さらには職場の安全衛生、組合との交渉、食堂委員会への参加など。

当然ながら、「エンジニア」としての仕事は極小になります。 自分がやったら1時間で終わる業務を部下や外部社員に頼む始末。 何のために技術を磨いたのだろうと悶々とした日々を送っていました。しかし専門外のことでも、自分たちで頑張って何とかするのが美徳だという考え方もありました。

専門性で支え合うシリコンバレー

シリコンバレーでは、こうした業務を専門でこなす役職があります。もちろん会社によって違いはありますが、日本と比べると専門性を重視する傾向が強いです。日本でも経理、人事、総務などの部門はありますが、「別の部門」として存在するだけで、「チーム内の経理・人事・総務」業務はチームリーダーが兼務することがほとんどです。

こちらでは、経理や人事などの業務は専門の担当者がチーム内のことも含めて担当してくれます。それぞれの専門性を持って、お互いを支え合う良いチーム作りができていると感じます。

その中でも重要なのが、TPM(Technical Program Manager)という役割です。TPMは技術的な知見を持ちつつ、横断的にプロジェクトを俯瞰し、開発進捗の把握、優先度の調整、リソースの調整などを行う専門職です。日本からの出張者に「プロジェクトで一番偉い方ですか?」と聞かれることがありますが、上下関係はありません。エンジニアと対等に議論し、エンジニアから最大限のアウトプットを引き出す専門家なんです。

言うなれば、TPMはオーケストラの指揮者のような存在です。各エンジニアの個性や専門性を理解し、それぞれが最高のパフォーマンスを発揮できるようにチーム全体を調和させていきます。さらには、マネージメントメンバーや、プロダクトマネージャ等と常に会話し、要望をききつつ、目標に向かってチームをまとめていくんです。

信頼できるTPMがスケジュール調整やチーム間の調整を担当してくれるので、エンジニアは迷わず優先順位順に仕事をこなすことができます。 チーム間で知っておく必要がある情報はTPMが必要な部分を吟味して伝えてくれるので、いくつもの定例会議に参加する必要も極小化されます。 そのため、エンジニアは開発業務に自分の時間の100%を振り向けることができ、そうでない状況は避けるべきだという文化があります。

[コラム] シリコンバレーでの会議参加について

日本では定例会や進捗会議に関連メンバーが全員参加することが多くありました。 そうした会議では、大半の人は発言する機会がなく、ほとんどが聞く側に徹していました。

しかし、シリコンバレーでは「自分が発言しない会議には参加するな」という考えがあります(All-handsなど全社的な情報共有の場は除きます)。 進捗を把握するだけならTPMがまとめてくれたり、チケット管理システムや進捗管理システムを見れば分かります。 全員が毎週会議に参加して、エンジニアの貴重な時間を使うことが避けられるのです。

日本では平気で30人も40人も参加している定例会が毎週いくつも行われていましたが、1つの会議だけで30人時間のリソースが燃えてしまっているというリソース消費の意識はなく、形式的に行われてきたように感じます。

「自分でなくてもできること」に時間を使う矛盾

今から考えると、日本での業務は「自分でなくてもできることにリソースを使い切り、自分でなければできないことにはリソースを割けない」というおかしな状態でした。 また、不得意なことに多く取り組む必要が出るため、生産性も低くなりますし、間違いや失敗も多くなります。

しかし、給料を上げるにはそういった役割を全うする必要があり、仕方なく業務内容をシフトさせているのが現状です。 中にはスーパーマンのような人もいて、管理業務70%に開発業務70%を足して140%の成果を出す人もいます。 でも、多くの人は兼務すればするほど、すべてのアウトプットを足しても100%に満たなくなり、その人の能力が出し切れなくなっているのではないでしょうか。

簡単には変わらないけれど

正直に言えば、この状況を変えるのは簡単ではありません。 TPMのような専門職を新たに雇うには人件費がかかりますし、経理や人事の担当者をチームに配置するのも現実的には難しい。 日本企業の構造的な問題なので、明日から変わるものではないでしょう。

でも、「この状態はおかしい」と認識することが第一歩だと思います。「優秀なエンジニアほど開発から遠ざかる」という矛盾を、当たり前だと思わないこと。チーム内で対話を始めること。小さな声かもしれませんが、そうした声が集まれば、いつか組織も変わっていくかもしれません。

特に若手エンジニアには「こういう働き方もあるんだ」と知ってもらえればと思います。 将来のキャリア選択を考えるとき、「兼務が増えて開発できなくなる未来」だけが選択肢ではないと。 できる範囲で不要な会議を減らしたり、「発言しない会議には参加しない」というルールを少しずつ広げたり、小さな改善から始めることができればと思います。

根性論で達成するのではなく、専門家の集まりとしてのプロフェッショナルチームで取り組む──そんな組織作りを目指していけたらと思います。

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