文化を変えたいなら、まずAIで効率化しよう―ハッカソンでの小さな発見
この記事でわかること
- 自然言語仕様書だけで業務自動化を実現した方法
- AI活用が生んだ「参加の可能性」と「対話の余白」
- 『LeanとDevOpsの科学』に学ぶ、文化の育て方
- AI時代の効率化後に何を置くべきか
自然言語だけで作った自動化ツール
先日、社内でハッカソンのイベントがありました。テーマはAIを使うこと。私たちのチームは請求書処理の自動化に取り組むことにしました。
3人でモブプロ形式で進めました。使ったのはCursorとPlaywright MCP。特徴的だったのは、アウトプットがマークダウンファイルだけだったこと。しかもそこに書かれているのは全部日本語。
仕様書の例:
## 請求書ダウンロードの手順
1. ログイン画面で認証情報を入力する
2. ダッシュボードから「請求書」メニューを選択
3. 対象月の請求書を検索
4. PDFをダウンロード
こんな感じで、やりたいことを自然言語で記述していきます。それをPlaywright MCPが解釈して、実際に動くプログラムとして実行してくれる。コードは一切書いていません。
このマークダウンもCursorにざっくり指示を出すだけで、どんどん書きあがっていきました。
誰でもレビューできる、という可能性
この仕様書、日本語だからプログラミングがわからない人でも正しい内容かのレビューができます。
従来のコードレビューは、技術的な文法やロジックを理解している人じゃないと参加できませんでした。でも今回みたいに自然言語で書かれていたら、業務を知っていることがレビューの条件になります。
「非エンジニアにも開発に参加してもらおう」なんて掛け声を出したわけじゃありません。ただ、自然言語で仕様を書いたら、結果的にそういう可能性が生まれると感じました。技術的な障壁が消えた瞬間、「読める」と「参加できる」の間にあった壁も消えます。
実際に誰かが参加したわけではないんですけど、「あ、これなら参加できるかも」って思える状態になったこと自体が、何かが変わり始めた合図な気がしています。
もう一つの発見:余白が生まれた
ハッカソン中、もう一つ気づいたことがあります。
Cursorに作業を任せていると、待ち時間が生まれます。AIが考えている間、私たちは手持ち無沙汰になる。その時間に自然と雑談が始まりました。
例えば、
「そういえば、この請求書処理、誰が一番困ってるんだろうね」
「経理の人たちじゃない?毎月末にめちゃくちゃ忙しそうだし」
「じゃあ次、本人に話聞いてみる?」
こんな会話。たぶん5分くらい。でもこの5分が、チームの関係性をほんの少し深めた気がします。というか、普段の開発中ってこういう会話、意外としないんですよね。手を動かすのに忙しいから。
AIで効率化されたあとの余白に、何を置くか。今回はたまたま雑談でした。でもこれ、意図的に設計できるんじゃないでしょうか。
文化って、作るものじゃなくて育つもの
『LeanとDevOpsの科学』という本を思い出しました。この本が一貫して伝えているのは、文化を変えたいなら、まず技術的な改善から始めろということ。
文化を変えようと掛け声をかけても、人は動きません。でも、技術的な工夫で面倒なことが楽になったら、人は自然とそこに時間を使いたくなります。その余白で何かが生まれる。それが積み重なって、いつの間にか文化になっている。
トヨタの「改善の文化」も、最初から「みんなで改善しよう!」って言って始まったわけじゃありません。アンドンやかんばんといった技術的な工夫で、問題を見つけやすく、改善しやすくしました。すると、改善することが苦痛じゃなくなった。むしろ、やりたくなった。それを何十年も続けた結果、「改善が当たり前」になっていました。
DevOpsも同じ構造です。ポストモーテムやSLOといった技術的実践を導入することで、障害対応が効率化されます。すると、障害から学ぶ余裕が生まれる。その余裕の中で「次はどう防ぐか」を考えられるようになる。それが繰り返されると、「失敗を責めない文化」や「学び続ける文化」が自然と根付いていきます。
文化を変えたいなら、取り組みたくなるように仕向ける。そのために、まず効率化できることを効率化する。
今回のハッカソンも同じだと感じています。「チーム内でもっと対話を増やそう」なんて言っても、「いや、十分話してるよ」って私なら思ってしまいます。
でも、AIに作業を任せたら待ち時間が生まれて、その余白で自然と雑談が始まりました。その雑談の中で、次にやるべきことが見えてきた。
今回はそんな小さいことでした。でも、確かに感じました。技術的な工夫が、何かが生まれる余地を作れた気がします。
別に狙ったわけじゃありません。でも、技術的な工夫の副作用として、そういう状態が生まれました。それが文化の種になるかもしれません。

これからの問いかけ:AI時代の余白に何を置くか
効率化の目的って、時間を削減することじゃないと今回強烈に感じました。何に時間を使うかの選択肢を増やすことなんじゃないかと。
今回、AIが作業を代行してくれた結果、待ち時間という余白が生まれました。その余白で私たちは雑談をしました。関係性が深まった。次にやるべきことが見えてきた。
この余白に何を置くかって、組織が何を大切にしているかの表明になります。効率化して浮いた時間を、さらなる効率化に使うのか。それとも、対話や思考や関係構築に使うのか。
私はまだ答えを持っていません。でも、次の実験のテーマは決まりました。この余白で、何をするか。
小さな一歩でいい
今回のハッカソンで、何か大きく文化が変わったわけじゃありません。でも振り返ると、確かに何かが変わり始めている気がします。
非エンジニアでもレビューに参加できる可能性が見えました。
雑談の中で次のアクションが見えました。
「こういうやり方もあるんだ」という小さな発見がありました。
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