AliExpressの中華ATTを測定する~結構使えてお買い得~
はじめに
高周波用のパーツは一般的には高価[1]である。特に趣味で高周波を扱ったり測定機を所有する人にとってはたとえアッテネータ(ATT)一つでも新品での購入を躊躇するほどである。そこでアマチュア無線[2]のイベント、例えばハムフェアなどのジャンク市やヤフオクなどで中古品を探すが品質がイマイチであったり故障品を掴まされたこともある。
ネット通販[3]を見ているとノーブランド品の新品ATTが極めて安価で販売されていることがある。しかしながらデータシートが示されることはほとんどなく、その素性は不明である。今回はAliExpressで購入したATTや手持ちのブランド品のATTをスペクトラムアナライザ(SA)で測定してみたので報告する。
筆者について……
〇〇年前に小学生だった私はなんとなくカッコいいしコスパよく箔が付くからという理由で四級アマチュア無線技士の資格を取得した。中学生になり中学受験の勉強から解放され遊び放題になったことや学校クラブに仲の良い先輩がいたこともありアマチュア無線やクラブ活動にハマっていた。熱は冷めることもなく数年前に無事に開局20周年を迎えたため人里離れた地の原野にタワーを建てた。
ますますアマチュア無線が捗るようになったが、そろそろ無線通信だけすることに飽きていた。そこでもっと技術的なことにもチャレンジしてみることとした。手初めにスペクトラムアナライザを購入したのだが……結構周辺機器が必要だということに気がついた今日このごろ。
ATTの紹介と測定
測定にはSAであるHP8594E(ヒューレット・パッカード社製、筆者所有)を使用した。このSAの最終校正は2005年[4]、帯域は9KHz~2.9GHzで同帯域をカバーするトラッキングジェネレータ(TG)が内蔵されている。測定前にSAとTGは自己校正を行い問題のないことを確認した。今回の測定には本SAの内蔵10dBのATTも併用した。よって、すべての測定結果は実際よりも10dB低く表示されていることに注意してほしい。

HP8594E 無事に自己校正がなされたこと、内蔵ATTが有効であることが表示されている
中華ATT(ノーブランド)
AliExpressをはじめとする中国の海外通販やAmazonなどの国内通販の海外発送品としてよく目にするATTである。購入時の価格は1個あたり332円[5]であった。性能のばらつきを確認するために5個購入し測定した。 商品説明は次の通りであった。
材質: ステンレス鋼
電力: 2W
インピーダンス:50Ω
定在波比 (SWR): ≤1.20
コネクタ形状:SMA-J~SMA-K
動作温度: -20℃~115℃
減衰: 40DB/30DB/20DB/10DB/6DB/3DB
サイズ: 約25.6x9.1mm/1x0.36インチ(高さx奥行き)。
説明文に記載されていないが本体には帯域が~8GHzであると刻印されていた。
また、下記のような記載があり、いろいろ本当に大丈夫なのかと思った。
手動測定のため、0~3mmの誤差はご了承ください。入札する前に気にしないことを確認してください。

30dB 帯域は脅威の8GHzである
誤差があると記載されていたがSMAコネクタは手持ちのものと問題なく嵌合した。測定したところSAの帯域全体にわたりフラットな特性であった。おそらく仕様通りなのであろう。下に測定時の特性の曲線を示すが、他の4個についても同様であり、明らかな不良品はなかった。

SAの帯域全体にわたってフラットな特性
MP721D(アンリツ社製)
アンリツ社は日本のメーカーであり国内知名度は相当高い。
MP721Dはアンリツ社製の20dB減衰のATTである。本職である知人から「確かなもの」として譲り受けたものである。メーカーのウエブでは型番が紹介されているのみである。Web検索するとカタログがあり、耐入力は2W、帯域はDC~12.4GHz、確度は±0.5dBであった。本品に記載されている特性グラフではDC~8GHzまでがフラットであるようだ。
なお、レンタルすると1ヶ月あたり5,000円程度であるようだ。

SMA変換コネクタ装着済 特性グラフが示され、シリアル番号が印字されている
測定してみると、SAの帯域全体にわたりフラットな特性であり、おそらく仕様通りであることがわかった。

SAの帯域全体にわたってフラットな特性
SAT-30(Mini-Circuits社製)
Mini-Circuits(MC)社は米国に本社を置く世界的にも有名な高周波部品メーカである。
SAT-30はMC社の30dB減衰のATTである。数年前のハムフェアで中古・ジャンク品の4個セットを5,000円で購入したものである。今回使用したもの以外の3個はVSWRが高かったり明らかに特性がおかしかったりしたためSAで測定すら行わなかった。帯域はDC~1GHzである。追加の情報を得るためにMC社のウエブページを確認するも情報はなかった。しかしながら知り合いから確度は±0.5~1.0dB程度ではと情報をいただくことができた。

青いボディに金メッキのプラグ、Mini-Circuitsのロゴがカッコいい
実際に測定してみると、帯域の上限である1GHz前後から特性が悪化してきていることがわかった。もとよりこのような特性で販売されていたのか、経年劣化や前のユーザーの使い方による問題なのかは不明であった。とはいえ一応は聞いた仕様を満たしていた。趣味で使う分には十分な特性ではあると思われた。

1GHz前後から特性の悪化が見られる
まとめ
AliExpressの中華ATTは結構使えてお買い得
この値段でこれだけの特性が出ているものが500円しないで買えるいうのは大変お買い得である。ぶっ壊しても全く痛くなく使い捨てにしてもいいだろう。
ジャンク市で買うのはやめよう
ジャンク市で購入した場合は結局割高になることが多い。実はMini-CircuitsのATTは最初は1個単位での販売されていた。4個が故障していたため本当のところは動作品ガチャ[6]だった。つまり、おまけしてもらっていい気になっていたけど実は故障品を押し付けられただけだった。これだからジャンク市でこういうものを買うのは嫌なのだ。趣味で使う場合に一流メーカーの一級品が必要になることはほとんどない。惑わされないようにしましょう。
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たとえばキーサイト・テクノロジーのATTは6万円を超えているのだ。https://jp.rs-online.com/web/p/programmable-step-attenuators/6636030 ↩︎
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要するにお金をもらうための仕事のためではない興味のために通信術をやってみたり研究してみたりするために使える無線のこと。端的には合法電波遊び。必要な資格を取得して無線局の免許を申請すると国からコールサインがもらえる。法的には「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究その他総務大臣が別に告示する業務を行う無線通信業務をいう(電波法施行規則 昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号 三条十五)」と定められている。 ↩︎
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特に海外ネット通販、国内通販でも海外発送になっているもの ↩︎
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ラベルに書いてあることが本当ならね ↩︎
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AliExpressは購入する人や購入する時によって値段がゴロゴロ変わる。物販版ダイナミックプライシングなのだろうか。 ↩︎
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故障品ガチャという表現が適切か? ↩︎
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