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3群の無作為化比較臨床試験における解析手法の選択

2022/05/21に公開約1,400字

本記事では、3群の無作為化比較臨床試験における解析手法の選択の議論をしていきたい。

仮想的に検証的試験を想定する。Phase2までの探索的臨床試験において、候補薬剤の有効性並びに安全性の可能性があることが示唆されており、Phase3の検証的臨床試験を立案するものとする。下記のような3群の無作為化比較試験を設定する。
・Placebo群(P)
・Drug群(D)
・Active群(A)

つまり、偽薬であるPlaceb群(P)、候補薬剤のDrug群(D)、既存承認薬であるActive群の3群を設定する。ここでは、シナリオを単純化させるために、3つの薬剤において用法が同じであり、薬剤の形状も同じ、医師並びに患者さんは盲検化されているとする。

上記のような比較において、有意水準を5%として、多重比較を考慮しながら、どのような統計解析計画を考えるだろうか?下記の3つを想定して、各解析案を考察してみる。ただし、非劣性検定は考えておらず、優越性検定とする。

・案1:全ての対比較をTukey検定で行う。
P群 VS D群
P群 VS A群
A群 VS D群

この案は3群の仮説の重要度が全く考えておらず、αエラーのインフレを抑えるために、多重比較法を適用している。しかし、仮説には優先順位が確実にあり、A群 vs D群やP群 vs D群に特に興味があるだろう。

・案2:A群 vs D群のt検定優越性検定
 A群 VS D群

この案は、案1を改良して、特に興味のある候補薬剤 vs 既承認薬を想定している。候補薬剤が既承認薬に勝ることを考えている強気な戦略である。しかし、これではP群を設定した意味がよくわからない。おそらく試験計画時では、D群はA群に勝てるか分からないけれども、P群には勝てるだろうと見込んでP群を設定しているはずである。なので、D群 vs P群の検定もした方がよさそうである。

・案3:D群を基準にして、Dunnet型の検定で行う。
D群 VS A群
D群 VS P群

案2を改良して、P群 vs D群が追加されている。つまり、D群vs P群の検定をすることで、D群 VS A群でD群が負けた場合の保険をかけていると捉えられる。私はこの解析案も悪くないと思う。

・案4:閉検定手順に基づき、検定する順序を決める。 
P群 VS A群 → P群 VS D群 → A群 VS D群

この案では、仮説構造に順位をつけて各検定が有意であった場合のみ検定を実施する方針を設定している。まず、臨床試験が適切に実施されていれば、P群 vs A群が有意に出るのは当たり前であり、実験の適切性を確認するために、P群 vs A群の検定を実施する。その後、有意であった場合に、P群 VS D群の検定を実施する。D剤が有効な薬剤であることを証明するためには、P群より治療効果があることを示す必要がある。これが示されなければ、A群 VS D群の検定を実施する意味はない。P群 VS D群の検定が有意であった場合に、既承認薬と比較して、勝っているのか、同等なのか、劣っているのかの比較をすることに意義がある。

次回以降の記事にて、Rによる仮想的なシミュレーション実験や多重比較法の数理的な背景を説明していきたい。

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