『良い戦略、悪い戦略』を読んだ
スタッフエンジニアの道で『良い戦略、悪い戦略』が紹介されていたので読んだ。
スタッフエンジニアの道では、
技術ビジョンとは、目標が達成され、最大の問題が解決された後の、あるべき未来の姿を描いたものです。作業が完了した後のすべてを描写することで、そこに到達する詳細に囚われることなく、誰もがその世界を想像しすくなります。(p82)
戦略とは行動計画です。途中で遭遇する障害物を乗り越えながら、目標を達成するための方法のことです。それはつまり、自分がどこに行きたいのか(まさに今話したビジョンのことかもしれません)、そして自分の進む道にある課題を理解するということです。本章で戦略という言葉を使うときには、常に具体的なドキュメントを指します
と技術ビジョンと戦略について紹介されており、技術戦略を書くための情報源として『良い戦略、悪い戦略』を読むことがお勧めされていた。
『良い戦略、悪い戦略』では、良い戦略とは具体的な行動に結びつくものであり、悪い戦略は、目標、努力、ビジョン、価値観といった曖昧な言葉を使い、明確な方向を示さないと説明している。
まずは悪い戦略の4つの特徴について。
ひとつめは、空疎な戦略。わかりきっていることをふんだんな専門用語や業界用語で煙に巻くような戦略。大手リテール銀行の戦略が紹介されていて、「我々の基本戦略は、顧客中心の仲介サービスを提供すること」は、「我々の基本戦略は銀行であること」となることは面白かった。厚化粧を剥がせば何も言っていないことも同じ。
ふたつめは、重大な問題に取り組まない戦略。課題に立ち向かわないなら、戦略の意味をなさない。
三つめは、目標を戦略と取り違えている。戦略目標は、もっと具体的で明確であるべき。たとえば顧客への応答時間を半分に短縮するとか、フォーチュン500社から契約をとる、など。
四つめは、まちがった戦略目標を掲げる。成績不振であれ業績不振であれ、望ましくないこと自体を取組課題に掲げるのは悪い戦略取り組むべきは、なぜ成績が悪いのか、その原因のほうである。
良い戦略とは「何をやるか」を示すだけでなく、「なぜやるのか」「どうやるのか」を示すものであるべき。
良い戦略のカーネル(戦略の核)は、次の三つの要素から構成される。
- 診断 - 状況を診断し、取り組むべき課題を見極める。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす
- 基本方針 - 診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す
- 行動 - ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する
スタッフエンジニアの道を読んだときは戦略の項は軽く読み飛ばしていたが、改めて『良い戦略、悪い戦略』を読むとより深く理解できる。
良い戦略はツールによる落とし込みでテンプレート的に解き明かされるものではなく、自分の仮説を反証して検証していくものである。戦略はテンプレート的に簡単に診断できるものではないのだ。安易にテンプレートを使うと悪い戦略に陥る。
また、その仮説の結果として、さまざまな要求にノーといえること。戦略を立てるときには、「何をするか」と同じぐらい「何をしないか」が重要。
本書の中でストラジストの思考法として紹介されていた
『あなたにできる重要なことを10項目列挙したリストをつくることをおすすめします。リストが出来上がったら、一番目の項目から実行してください』
はネクストアクションとしてわかりやすい。
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