「スケートボードから車へ」の図について考えてみた
アジャイル開発やリーンスタートアップの文脈で、この図を見たことがある人は多いでしょう。

実はこれ、Henrik Knibergが2016年頃にMVP(Minimum Viable Product)を説明するために描いたものです。しかし、この図はかなり誤解されているように感じます。
私自身も最初は「微妙な図だな」と思いました。ですが、改めて考えてみると、問題はこの図ではなく、私の受け取り方でした。
出典を確認すると原作者も誤解の問題を認識しているようです。
よくある誤解
「スケートボードは車にならない」
「バイクと車は延長線上にない」「スケートボードを改造しても車にはならない」という批判をよく見かけます。
でも、それは比喩に突っ込んでいるだけです。この図は実際の自動車開発の話ではありません。プロダクト開発の考え方をわかりやすく伝えるためのたとえ話です。
重箱の隅をつつくような批判には、意味はありません。
「ユーザーが車を欲しているなら、車を作るべき」
「ユーザーが車を求めているのに、スケートボードを出したら怒られる」という意見もあります。
しかし、ここで重要なのは、ユーザーも開発者も、車が正解かどうかわからないということです。
そもそもユーザーが解決したいのは「移動に関する問題」です。結果として車が正解だったとしても、その正解を一発で当てることは非常に難しいでしょう。
それに図の下段をよく見てください。ユーザーが最も満足している製品はオープンカーです。上段の最終形でも笑顔ですが、下段ほどの満足度ではありません。
これは各段階でフィードバックを得ながら開発していたからこそ、辿り着けた答えだと言えます。
見落とされがちな視点
もう一つ、あまり語られない視点があります。
上の開発プロセスを選べるのは、資金力のある大企業だけです。
新規事業やスタートアップは、完成するまで収益がゼロという状況に耐えられません。資金を調達しながら、ユーザーを獲得しながら、プロダクトを進化させていく必要があります。
つまり、下のプロセスは「ベターな選択肢」ではなく、多くの場合、唯一の選択肢になるのです。
原作者も誤解を認識していた
Henrik Kniberg自身、この図が誤解されやすいことを認識しています。彼はブログで次のように述べています。
And remember – the skateboard/car drawing is just a metaphor. Don’t take it too literally :o)
「覚えておいてください——スケートボード/車の絵は単なるたとえ話です。あまり文字通りに受け取らないでください」
また、同じ記事で「MVP」という用語自体が混乱を招くとして、代わりに以下の表現を好むようになったと述べています。
- Earliest Testable Product — 最も早くテストできるプロダクト
- Earliest Usable Product — 最も早く使えるプロダクト
- Earliest Lovable Product — 最も早く愛されるプロダクト
「Minimum(最小限)」ではなく「Earliest(最も早く)」。フィードバックを早く得ることが目的だという本質が、より明確に伝わります。
まとめ
「スケートボードは車にならない」「ユーザーが車を欲しているなら車を作れ」——そう思ったら、一歩引いた目線でもう一度考えてみてください。
この図から読み取れるメッセージはこうだと思います。最初から完璧を目指すな。早く出して、早く学べ。
これはアジャイルにも通ずる考え方であり、日々の開発にも活かせるはずです。
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