因果推論本『Causal inference: What if』のまとめページ(Part I)
Part I: Causal inference without models
このPartでは、シンプルな状況下で、因果推論の考え方、条件、方法を説明しています。この書籍ではDAGを多用しています。そのため、DAGの見方・考え方にも一つのChapterで説明します。
また、バイアスを交絡、選択バイアス、測定バイアスに分けており、特に選択バイアスの考え方は特徴的です。
このPartで説明している内容は、適宜KRSK氏のブログを参考にすると理解が捗ると思います。
Chapter 1 A definition of causal effect
このChapterでは、潜在アウトカム(Potential outcome) から因果効果(Causal effect) を定義します。対となる関連(Association) との違いは重要です。
Chapter 2 A Randomized experiments
このChapterでは、処置をランダムに割り付けるランダム化比較試験 のもとで、因果効果を推定する条件の一つである (Conditional) Exchangeability を主に学びます。また関連から効果を識別できる条件が満たされたときに、データから効果を推定する方法である Standardization(標準化) とInverse probability weighting(IPW, IP weighting, 逆確率重み付け) も学習します。
Chapter 3 Observational studies
このChapterでは、処置をランダムに割り付けていない状況で、因果効果を推定する条件である識別可能性(Identifiability) を学びます。この条件は、交換可能性(Exchangeability)、正値性(Positivitiy)、そしてConsistensy[1]から構成されます。
最後に、ランダム化比較試験を模倣した観察研究の考え方であるTarget trialの導入も学びます。Target trialの詳しい内容は、Part III Chapter 22で学習します。
Chapter 4 Effect modification
このChapterでは、これまでのChapterで学習してきた集団に対する因果効果ではなく、その一部の集団における因果効果に注目します。層ごとに因果効果が異なるとき、効果修飾(Effect modification) があると言います。
生物統計学で交互作用(Interaction) という概念を学びますが、効果修飾として捉えるていることが多いです。Chapter 5では、別概念として交互作用を学びますので、区別して考え、解析的な操作である積項(Product term)も交互作用項とは言わない方が良いということがわかります。
さらに、何を推定しているのか?というEstimandについても、このChapterで学習します。
Chapter 5 Interaction
このChapterでは、2つ以上の興味のある処置や変数の潜在アウトカムから推定する因果効果を学習します。この書籍の中で比較的、疫学的な考え方であるSufficient causeについても学習します。
Chapter 6 Graphical representation of causal effects
このChapterでは、因果構造を図で表すDAG(Directed Acyclic Graph) を導入します。DAGを用いて、交換可能性が成立しないときの条件(バックドア基準)やバイアスの種類を整理します。
Chapter 7 Confounding
このChapterでは、処置とアウトカムが共通原因(Common cause)を持つときに生じるバイアスである交絡(Confounding) を学習します。従来の交絡因子の選択方法でもバイアス(例えば、M-バイアス)が生じてしまう場合でも、DAGを使えば同定できることを示します。
また、Part IIIで利用する、変数の潜在的な構造も考慮したDAGであるSWIG(Single-world intervention graphs) の導入もおこないます。
Chapter 8 Selection bias
このChapterでは、処置とアウトカムが共通効果(Common effect)または合流点(Collider) を持つときに生じるバイアスである選択バイアス(Selection bias) を学習します。選択バイアスは分野内外でさまざまな定義があり、これについてもKRSK氏のブログが参考になります。
選択バイアスは、ランダム化比較試験であっても試験途中の脱落や欠測があれば生じてしまうことに注意してください。ここでは逆確率重み付けを用いてバイアスを調整する方法を説明します。
Chapter 9 Measurement bias
このChapterでは、データの測定に誤差があった場合に生じるバイアスである測定バイアス(Measurement bias) を学習します。情報バイアス(Information bias)とも呼ばれます。測定バイアスは、研究デザインや解析方法で調整することが難しいです。研究の計画段階でデータを誤差なく測定するための工夫が重要です。
さらに、ランダム化比較試験において、処置を割り付けた効果であるIntention to treat effect(ITT effect)と実際におこなわれた処置の効果であるPer protocol effectについても学びます。
Chapter 10 Random variability
このChapterでは、他のChpaterとは異なり統計学に焦点を当てています。これまでサンプルサイズが無限であるという統計学的なばらつきがない条件で、因果効果を推定する方法を学習してきました。ここでは、有限なサンプルサイズのもとでの推定値の振る舞いを学習します。
「ランダム化比較試験において、背景情報がバランスとれていないときに、どのような対処をするか」について活発な議論がおこなわれました。
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このConsistensyは、統計学の文脈の一致性と異なりますので注意が必要です。 ↩︎
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