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質点としての航空機の運動方程式 Part 2.3: 無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式 - 座標系その2 機体固定座標系(B座標系)

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この記事シリーズでは、航空機を質点とみなした場合の運動方程式を導出し、なぜそのような方程式になるのか?方程式の各部分の意味はどんなものか?について説明します。

この記事を書こうと思った動機や背景は、こちらの記事に書いてあります。また、この記事シリーズ全体の構成や、各記事へのリンクも、こちらの記事から確認することができます。
質点としての航空機の運動方程式 Part 0 - 航空交通や軌道最適化に用いられる飛行ダイナミクス

この記事シリーズは、私の博士論文の Appendix B: Derivation of the Aircraft EoM を英語から日本語に翻訳し、加筆を加えたものです。元論文はここから読めます。もしご自身の論文等でこの記事を参照される場合は、この博士論文を参照してください。


B座標系の概要


図 2.3.1: G(地面固定)座標系とB(機体固定)座標系との関係

機体固定座標系(B座標系: Body coordinate system)とは、その名の通り、航空機に固定された座標系です。したがってこの座標系は、航空機の飛行に伴って並進および回転をします(図2.3.1)。そのため、B座標系は非慣性座標系です。B座標系の原点は、機体の重心に固定されていると考えます[1]

B座標系は、基底ベクトル \bm{e}_{B}^{x}, \, \bm{e}_{B}^{y}, \, \bm{e}_{B}^{z} によって定義されます。x軸は機体の前後方向(縦方向)を向き、機首の向きを正とします。y軸は左右の翼の方向を向き、右主翼の方向を正とします。そしてz軸は、機体の床面に対して垂直で、下向きを正とします。

B座標系は、航空機の位置および姿勢を表現するために用いられます[2]。つまり、航空機の姿勢(ピッチ、ロール、ヨー)は、B座標系(とG座標系: part 2.2参照)を用いて定義されます(下部参照)。また、エンジンの推力ベクトルもB座標系で定義されます。

B座標系はG座標系を回転させることで得られる


図 2.3.2: オイラー角の定義

B座標系は、図2.3.2に示すように、G座標系(part 2.2参照)を3つの軸まわりに順に回転させることで得られます。

まずG座標系(基底ベクトル \bm{e}_G^x, \, \bm{e}_G^y, \, \bm{e}_G^z)を、\bm{e}_{G}^{z} 軸まわりに角度 \psi だけ回転させます。このとき得られる新しい座標系を1-座標系と呼ぶことにし、その基底ベクトルを \bm{e}_1^x, \, \bm{e}_1^y, \, \bm{e}_1^z と書くことにします。この回転によって、回転軸である \bm{e}_{G}^{z} 軸は変化しませんから、 \bm{e}_1^z = \bm{e}_{G}^{z} です。

次に、1-座標系を \bm{e}_1^y 軸まわりに角度 \theta だけ回転させます。このとき得られる新しい座標系を2-座標系と呼ぶことにし、その基底ベクトルを \bm{e}_2^x, \, \bm{e}_2^y, \, \bm{e}_2^z と書くことにします。この回転によって、回転軸である \bm{e}_1^y 軸は変化しませんから、 \bm{e}_2^y = \bm{e}_1^y です。

最後に、2-座標系を \bm{e}_2^x 軸まわりに角度 \phi_b だけ回転する。この結果得られる座標系がB座標系であり、その基底は \bm{e}_{B}^{x}, \, \bm{e}_{B}^{y}, \, \bm{e}_{B}^{z} で表します。この回転によって、回転軸である \bm{e}_2^x 軸は変化しませんから、 \bm{e}_{B}^{x} = \bm{e}_2^x です。

B座標系で定義される航空機の姿勢

上記のような連続する3回の座標系の回転において、\psi\theta\phi_b の値を適切に設定すれば、G座標系を航空機の姿勢(B座標系)に一致させることができます。これら3つの角度は、一般にオイラー角(Euler angles)と呼ばれ、それぞれヨー (yaw)、ピッチ (pitch)、ロール (roll) に対応します。

航空分野では、\psi はヘディング (heading angle) または方位角 (azimuth) と呼ばれることもあります。また、\phi_b はバンク角 (bank angle) とも呼ばれます。

(再掲)Table 2.1.1: 3つの座標系の概要

G座標系 B座標系 A座標系
原点 地上の1点(出発空港など) 航空機上の1点(重心など) 航空機上の1点(重心など)
x-軸の向き 北向き 機種方向 真対気速度 (True airspeed: TAS) ベクトルの方向
y-axis 東向き 右の翼の方向 y軸は運動方程式の導出に用いません
z-axis 下向き(地面の方向) 下向き(航空機の床面に垂直な方向) z軸は運動方程式の導出に用いません
静止座標系か動座標系か? 静止座標系 動座標系(航空機と共に動く) 動座標系(航空機と共に動く)
慣性系か? 慣性系 非慣性系 非慣性系
どのような量を記述するのに用いるか? 航空機の位置、重力、風 推力 真対気速度(TAS)、揚力 (Lift)、抗力 (Drag)

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Part 2.4: 無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式 - 座標系その3 対気速度座標系(A座標系)

脚注
  1. 【とても細かい注】航空機が飛行していくと、厳密には重心の位置が変化していきます。しかしこの解説で導出する運動方程式では、この重心の変化は無視します。すなわち、B座標系の原点を、例えば初期位置での航空機の重心の位置に固定したとすると、その原点の位置は飛行中に変わらないものとします。 ↩︎

  2. この解説では、航空機を大きさの無い質点とみなして運動方程式の導出を行っていますが、B座標系の定義においては、機体の仮想的な形状を考慮します。これは、航空機の姿勢(ピッチ・ロール・ヨー)を記述するために必要だからです。 ↩︎

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