DrupalのAIモジュールで業務効率化!初心者でもできる活用ガイド
はじめに
Drupalをご存知でしょうか? 多くの企業や政府機関のWebサイトを支える、信頼性の高いCMSプラットフォームです。オープンソースでありながら、高度な拡張性と柔軟性を備えており、世界中の開発者コミュニティによって日々進化を続けています。
そんなDrupalの世界でも、いよいよAI技術の活用が本格的に始まっています。この記事でご紹介する「AIモジュール」は、最新のAI技術とDrupalの優れた機能を組み合わせることで、日々のコンテンツ管理作業をより効率的に変えてくれます。
「AIと聞くと難しそう...」と思われるかもしれませんが、この記事では、DrupalのAIモジュールができることを、実践的な視点からわかりやすくご紹介していきます。システム管理者の方はもちろん、日々コンテンツ管理に携わる方々にとっても、すぐに活用できる内容をお届けします。
この記事でカバーすること
- DrupalのAIモジュール(https://www.drupal.org/project/ai)で利用できる機能の紹介
この記事でカバーしないこと
- Drupalのインストール方法
- AIモジュールのセットアップ方法(別記事で紹介します)
- ECAモジュールに付与するAI機能の詳細(別記事で紹介します)
- Agent機能の詳細(別記事で紹介します)
前提
- OpenAIのAPIキーをあらかじめ取得して、Drupalに登録してあります。
DrupalのAIモジュールとは
DrupalのAIモジュールは、あらゆるDrupalサイトでAI機能を簡単に導入できるようにするためのフレームワークです。このモジュールの特徴的なところは、OpenAI(ChatGPT、DALL-E)、Anthropic(Claude)、Mistralなど、複数のAIプロバイダーに対応していることです。さらに、自分のサーバーで動かすオープンソースのAIモデルにも対応できる柔軟性を備えています。
Drupal.org の AI モジュールのページによると、このモジュールは2023年3月から開発が始まり、現在も活発に機能追加や改善が続けられています。Drupalコミュニティの中でも注目を集めており、すでに3,000以上のサイトで利用されているとのことです。
AIモジュールでできること
このモジュールが提供する主な機能には以下のようなものがあります:
- コンテンツ生成: AIを使って文章やイメージを生成
- コンテンツ分析: 投稿内容の自動チェックや提案
- 多言語対応: ワンクリックでAIによる翻訳が可能
- チャットボット: サイト内に簡単にAIチャット機能を追加
特筆すべきは、これらの機能がコードを書かなくても利用できるよう設計されていることです。サイト管理者は直感的なインターフェースを通じて、必要なAI機能を簡単に設定し、活用することができます。
コンテンツ生成
DrupalのAIモジュールを使えば、ページの編集画面で簡単にAIによるコンテンツ生成が可能です。例えば、次のようなプロンプトを入力するだけで、目的に合った文章を生成できます:
- 「このイベントの魅力を3つのポイントで説明して」
- 「この製品の特徴を初心者向けにわかりやすく書いて」
- 「このニュースを見出し付きの記事形式でまとめて」
「ChatGPTからコピペするのと何が違うの?」と、以前お客様に聞かれたことがあります。これに今、答えるとしたら、サイト管理者が事前にメタプロンプト(AIへの基本的な指示)を設定できる点です。これにより:
- サイトの文体やトーンを統一
- 必要な情報項目を漏れなく含める
- 企業のガイドラインに沿った表現を維持
といったことが可能になります。つまり、誰が使っても一定の品質のコンテンツを作れる環境を整えることができるのです。
コンテンツ分析
コンテンツ分析機能は、作成した記事やページの内容をAIが自動的にチェックし、改善のためのアドバイスを提供します。主に以下のような分析が可能です:
- タイトル提案: 執筆した記事について、適切なタイトルを提案
- サマリー提案: 執筆した記事の要約を作成
- 文章の品質チェック: 読みやすさ、文法、表現の適切さをチェック
- キーワード提案: 記事の内容に関連する適切なタグやキーワードを提案
- 文体変更: 「プロフェッショナルに」、「5歳でもわかるように」、など、文体を調整
これらの分析結果は編集画面で直接確認でき、提案された修正を簡単に適用することができます。コンテンツ作成者は、この機能を使うことで、より質の高い記事を効率的に作成できます。
翻訳
翻訳機能は、Drupalサイトのコンテンツを生成AIで簡単に多言語化できる機能です。 記事やページの内容を、ボタン1つで他の言語に翻訳できます。従来の機械翻訳と異なり、AIが文脈を理解して翻訳するため、より自然で読みやすい翻訳文が得られます。また、各言語ごとに翻訳のためのプロンプトを調整できるため、サイト独自の用語集や翻訳ルールを組み込むことで、一貫性のある翻訳を維持することもできます。
追加モジュールのAI Translation Management (TMGMT)を組み込むことで、より高度な翻訳ワークフローを構築することも可能です。
バリデーション (入力チェック)
AIモジュールのバリデーション機能は、コンテンツの入力時に内容をAIがチェックする機能です。あらかじめ指定したプロンプトに合致した文章を検出して、保存・公開されるのをブロックします。
これまでのルールベースのバリデーションでは難しかったが、AIで行えるチェックは例えば以下です:
- 文脈を考慮したチェック
- 商品説明で必要な情報(価格、サイズ、材質など)が自然な形で含まれているか
- プライバシーに関する情報が意図せず含まれていないか
- ブランドガイドラインとの整合性
- 企業の価値観や方針に沿った表現になっているか
- 指定された文体が一貫して使われているか
- 業界特有の要件確認
- 医療情報の場合、医学的な正確性や必要な免責事項の有無
- 金融商品の説明で、法令で必要な注意事項が含まれているか
- ユーザー体験の観点
- 技術的な用語が一般ユーザーにも理解できる説明になっているか
従来の単純な文字数制限や必須項目チェックとは異なり、より柔軟で高度な入力チェックが可能です。これにより、公開前のコンテンツの品質を確保することができます。
チャットボット
サイトに簡単にチャットボット機能を追加できます。RAGのように、サイト内コンテンツを横断して学習し、それに基づいて回答してくれるようなのですが、検証したところ、まだうまく動きませんでした ... なにか設定が違うのだと思うので、また別記事で紹介します。
他の使い方としては、例えば、Drupalの操作方法や設定方法などを聞けば教えてくれるので、Drupal初心者で、「やりたいことはあるけど、設定方法がわからない!」といった方には有用です。
ただし、このチャットボットの真の力はAI Agentモジュールを追加したときにあります。これをインストールすることで、コンテンツの生成やコンテンツタイプとフィールドの追加などを、チャットで会話するだけで行えるようになります。
注意点としては、漢字変換のときにEnterキーを押すと、入力途中の文章が送られてしまうという問題があります。これは修正してほしいところです ...
その他のAIモジュールの機能
その他、日常的に使わない機能や開発者向けの機能としては以下があります。ECA連携については、掘り下げてゆきたいので、次回以降に別記事で紹介したいと思います。
ECA連携
ECA(Event Condition Action)モジュールと組み合わせることで、サイト上の様々なイベントに対してAIを活用した自動処理を設定できます。例えば、新しいコンテンツが作成されたときに、要約を自動で入力してから保存するなど、サイト運営の多くの作業を自動化でき、管理者の負担を減らすことができます。
ログの確認
AIモジュールへのすべてのリクエストと応答を記録する機能です。これにより:
- どのようなAI機能が使われているか
- どのような質問や要求が多いか
- AIの応答の品質はどうか
といった利用状況を把握できます。また、問題が発生した際のトラブルシューティングにも役立ちます。
API Explorer
AIの動作を試験的に確認できるテスト環境です。主な用途:
- 様々なプロンプトの結果を即座に確認
- 異なるAIプロバイダーの応答を比較
- 設定の微調整を行う前の動作確認
管理者が新しい機能を実装する前の検証に特に便利です。
External Moderation
OpenAIが提供している、文章・画像のモデレーションツールを利用します。これにより、OpenAIのAIモデル以外が生成したコンテンツが不適切でないかを審査することが可能です。(OpenAIのモデルにはすでに備わっているため、利用できません。)
他にもある!いろいろなAI追加機能
今回紹介したのは、AIモジュールをインストールすることで利用できる機能ですが、更に追加モジュールを導入することで利用できる機能がまだまだあります。
画像関連
- ai_image: CKエディタ内でDALL-Eなどを使って画像を生成
- ai_media_image: メディアライブラリに直接AI生成画像を追加
- ai_image_alt_text: 画像の代替テキストを自動生成
コンテンツ支援
- ai_seo: ページ編集画面でSEO分析を提供
- ai_summarize_document: PDFファイルの内容を自動要約
- auto_translation: より高度な自動翻訳機能を提供
サイト管理・運用
-
ai_agents: チャットでサイトの管理操作が可能に
- コンテンツの作成や編集
- 設定の変更
- データの分析など
- ai_agents_evaluations: AIの応答を評価・最適化する機能を追加
翻訳関連
- ai_tmgmt: Translation Management Toolと連携した高度な翻訳管理
このように、Drupalと生成AIの連携は急速に新しい機能が追加されています。
まとめ:DrupalのAIモジュールで広がる可能性
DrupalのAIモジュールは、一昔前では考えられないような、コンテンツ管理の未来を実現してくれています。コンテンツ生成から分析、翻訳、バリデーションまで、これまで手作業で行っていた多くの作業を、AIの力で効率化できるようになりました。特筆すべきは、これらの機能がコーディング不要で利用できる点です。
さらに、ECA連携やAI Agents機能を活用することで、より高度な自動化も実現可能です(これらについても後日紹介したいです)。また、画像生成やSEO分析など、追加モジュールによって機能を拡張することもできます。Drupalコミュニティの活発な開発により、今後も新しい機能が追加されていくことでしょう。
AIモジュールは、技術的な知識の有無に関わらず、誰もが簡単にAIの恩恵を受けられるよう設計されています。ぜひ、この記事で紹介した機能から、みなさんのサイトに合った活用方法が見つかれば幸いです。
今後もDrupal&AIに関する記事を投稿していく予定です。
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