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麻雀は将棋より運ゲーなのか?競技階層数。ゲーム設計について 

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先日Xで以下のポストがバズっていた。内容としては将棋には運要素が少なく、実力差が出すぎるゲームだという内容だ。
https://x.com/kecak9/status/2017105171873185963
これに関して、将棋は麻雀を見習うべきだという投稿もある。
https://x.com/highmotivation8/status/2014602289345151100
はたして彼らの言う通り、将棋は運要素が少ないからゲームとして良くないのだろうか?麻雀を見習うべきなのだろうか?
ところで、運とは何だろうか。Wikipediaで調べてみる。

:運(うん)とは、その人の意思や努力ではどうしようもない巡り合わせを指す。

では、将棋と麻雀の運要素とはどのようなものがあるのか。
将棋:先手、後手の決定。
麻雀:席順の決定。配牌。
ちなみに、将棋の先手後手がどのくらい勝敗に影響するかというと、プロの棋戦だと先手勝率53%、後手勝率47%ほどである。対して麻雀はある程度打てるようになると、勝敗がほとんど配牌によって決定するように思える。
なるほど、将棋は麻雀に比べて確かに運要素が少ないように思える。

2種類の運

突然だが、ゲームには2種類の運がある。

  1. 本質的な運:先手後手の決定、サイコロの目、カードの配布、クリティカルヒットの判定など。ルールに組み込まれた制御不能なランダムネス。
  2. 能力限界由来の運:理論上は決定論的だが、人間の計算、身体能力や反応速度の限界により、プレイヤー視点では制御不能に見える、勝敗に影響する要素。

人によっては1.のみを運要素とし、2.について運ではないと考えるだろう。しかし、1.も2.もプレイヤーがゲーム中に制御できない要素という点は変わらない。[1] そして将棋では1.の運の要素は小さいが、2.の運要素はかなりある。そしてそれを将棋指しの間では指運という。

1.と2.を考慮すると将棋と麻雀、どちらがより運ゲーなのか?それはプレイヤーの実力による。もう一度、Wikipediaの運の意味を引用する。

:運(うん)とは、その人の意思や努力ではどうしようもない巡り合わせを指す。

運の意味からしてその人の能力に依存していることが分かる。
将棋の初心者の対局を見れば、初心者にとって将棋がいかに運ゲーかが分かる。局面を読み切れず、読み抜け、うっかりと制御不能な要素だらけだからだ。
ちなみに、1.の運についても運ゲー具合はプレイヤーの能力に依存する。なぜかというと、その運要素が勝敗に影響する度合いがプレイヤーの能力によって変わるからだ。
先ほど、将棋だと先手勝率53%、後手勝率47%ほどと説明した。しかし、これは人間のプロ棋戦に限ったはなしだ。最先端の将棋AI同士だと先手勝率は9割以上と言われている。つまり、先手後手が決まったタイミングでAI同士の対局では勝敗はほとんど決まっているのだ。AIにとっては将棋は麻雀以上に運ゲーなのかもしれない。
結局、運とはプレイヤーの能力に依存するもので、その運要素が勝敗に与える影響もプレイヤーの能力に依存する。異なるゲーム同士の運ゲー具合を比較することはできない。将棋が麻雀と比べて運要素が少ないと断言することもできない。

問題は運要素ではなく、競技階層数

問題は運要素の大小ではなく、プレイヤー間に実力差がありすぎることである。
勝負の前に勝敗が決まっているゲームは例外なく糞ゲーである。
多くのゲーム・スポーツではプレイヤー間の実力を示す指標としてイロ・レーティングが用いられている。レーティングとは勝率である。レーティング差と上位者の勝率の関係を以下に示す。

レーティング差 勝率(上位側)
0 50%
100 約64%
200 約76%
300 約85%
400 約91%

将棋の対局サイトも多くはこのレーティングを参照して段級位を定めマッチングを行っている。レーティング差が離れすぎていれば、手合い違いとなり、プレイヤー双方はその勝負を楽しめない。何らかのハンデを要する。
両者のレーティング差が大体±200以内に収まっていればプレイヤーは勝った負けたを楽しめるかと思う。下位の者も4回に1回は勝利を見込めるレート差である。多くの将棋サイトもレート200を段位の間隔として定めている。ここではレート差200を一つの階層として定める。そして、そのゲームの最上位プレイヤーのレーティングと最下層のレーティングの差を200で割った数をそのゲームの競技階層数とする。[2]
将棋はこの階層がとにかく深い。代表的な将棋サイトであった将棋倶楽部24ではトップのレーティングは約3000~3200である。つまり競技階層は15~17層と推定される。
一方、麻雀はどうだろうか。仮にトッププロが初心者と半荘をプレイしたとして、初心者に75%勝てるだろうか。初心者に75%勝てる人にトッププロは75%勝てるだろうか。おそらくだが麻雀(半荘)の競技階層は1~2層程度だと推定される。[3]
注意:競技階層数はそのゲーム自体の奥深さや複雑さを表していない。[4]
ゲームの競技階層数はゲーム自体の面白さというよりはそのゲームの競技環境による面白さを表している。競技階層数が多ければその競技環境の中で成長を実感しやすい一方で不特定多数が集まったときにそのゲームで一緒に遊ぶことは難しくなる。メリデメである。理想的な競技階層数はない。ただし、ゲーム開発者にとってはどの層数が適切なのかを吟味する必要がある。最近はインフルエンサー同士の大会などが行われておりその盛況がゲームの繁栄に大きく影響する。層数が小さすぎても大きすぎても問題になる。

いろいろなゲームの競技階層数

じゃんけん

0~1層。読み合い要素があるにしても、2層はなかろう。

ポケモン

ランクマッチをマジメに取り組んでいる人のレーティングが1300~2200なので、競技階層数は(2200-1300)/200 = 900/200 = 4.5層 完全な初心者を含むと5~6層と推定される。

スト6

MRはあるが下位層はLPしか見れないためおおざっぱに推定して8層程度と推定される。スト6はインフルエンサーとプロが交流し、プロとアマの差を視聴者が感じられる程度の差がありながらもインフルエンサー同士の競い合いを楽しめる理想的な競技環境のように思われる。ということは競技性強めのゲームは8層程度になるようにゲーム設計をするのがいいのかもしれない。ちなみに、スト6は将棋と同様に1.運の本質的な運要素はほぼない。しかし、将棋の約半分の層数である。

MR相当レベル プレイヤー帯
1 800〜1000 完全初心者(Rookie〜Iron)
2 1000〜1200 初級者(Bronze〜Silver)
3 1200〜1400 中級者(Gold〜Platinum)
4 1400〜1600 マスター下位(ダイヤ上位〜マスター)
5 1600〜1800 ハイマス〜グラマス
6 1800〜2000 アルマス〜レジェンド下位
7 2000〜2200 レジェンド〜プロ下位
8 2200〜2400 トッププロ

硬式野球

見当もつかないけど成人男性草野球初心者チームを下限として、MLBオールスターを上限とすると10~12層くらい?

男子100m走

1.の本質的な運要素はほぼなし。(レーン差くらいか?)
2.の能力限界由来の運要素はある。
レース条件は同じとする。同一人物の生体コンディション由来の変動係数を1%と仮定する。競技者のタイムの下限を14秒とする。以上の条件だと、競技階層数は37~38層と推定される。

脚注
  1. 2.が運要素ではないことに納得できない人も多いだろう。そもそも、定義がプレイヤーの能力依存で曖昧だ。一つ例を。やり投げというスポーツがある。槍を遠くに飛ばせば勝ちなわけだが、その飛距離は飛んでいる槍が受ける風の向き、風速に大いに影響する。では、やり投げにおいて風は運要素だろうか?普通は運要素と捉えるだろう。しかし、プレイヤーが風を制御できないのはプレイヤーの能力不足を意味しないのだろうか?風魔法を使って制御できるプレイヤーからすれば、風は運要素ではないはずだ。
    将棋においても似た話である。初期局面で局面を全部読み切れば人間相手には必勝になるわけだが、その局面数は10^68オーダーである。これは天の川銀河の原子数に匹敵する数だが、では天の川銀河の全原子を数え上げることと、競技会の風を制御することはどちらが人間にとって難しいのだろうか? ↩︎

  2. どの集団を競技者集団に含めるかによって1~2層くらい変動する。この記事ではわざと負けるといった人たちは勘定に入れない。 先行研究?: Depth, balancing, and limits of the Elo model ↩︎

  3. 4人麻雀での2者間の勝敗を単に順位で定める。 ↩︎

  4. 例えば、年収を比べ合うゲームの階層数は1万以上あるが奥深さはない。また、ゲームの試行回数を上げることによって階層数は増加する。 ↩︎

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