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開発チームでAIツールを活用するための社内ドキュメント整備

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はじめに

開発現場にAIツールが次々と導入される中、ふと気づいたことがありました。便利なツールはあるのに、実際に活用している人はまだ限られているのではないか、と。

以前導入されたDevinという完全自律型AIエンジニアツールは、結果的にあまり活用されずに終わってしまいました。ツール自体の質もあったかもしれませんが、振り返ってみると「使い方が分からない」「どんな場面で使えばいいか分からない」という声が多かったように思います。

そんな経験から、新しいAIツールについては、知っている情報をきちんとドキュメント化して共有することで、もっと多くの人が価値を実感できるのではないかと考えました。

なぜドキュメント整備が大切なのか

ツールの導入と活用のギャップ

新しいツールが導入されても、実際に日常的に使われるまでには様々なハードルがあります:

  • 基本的な使い方が分からない
  • どんな場面で役立つのかイメージできない
  • 試してみたいけど時間がない
  • 失敗して壊れたら困る
    これらの不安や疑問を解消できれば、もっと気軽に使い始められるはずです。

知識の共有で開発力を底上げ

せっかく便利なツールがあるのに、一部の人だけが使っているのはもったいない。チーム全体で活用できれば、開発スピードも品質も向上するはずです。

実際に作成したドキュメント

1. GitHub Copilot Coding Agentの使い方ガイド

GitHubのIssueから自動でPull Requestを作成してくれるこの機能について、実践的な使い方をまとめました。

ドキュメントの主な内容:

1. 基本的な使い方
   - Copilotへのタスク割り当て方法(スクリーンショット付き)
   - 作業進捗の確認方法
   - 生成されたPRのレビュー方法

2. カスタマイズ方法
   - .github/copilot-instructions.mdの活用
   - プロジェクト固有のコーディング規約の反映
   - よくある間違いを防ぐための設定例

3. 実践例
   - 実際に使用したIssueとPRへのリンク
   - 成功事例と学んだこと

特に重視したのは、実際の画面を見せることでした。「ここをクリックすれば始められる」が一目で分かることで、最初の一歩のハードルを下げられると考えたからです。

2. Claude Codeの使い方ガイド

Claude Codeについては、上司がセットアップ方法のドキュメントを作成してくれていたので、実際の使い方の部分を追記する形で充実させました。

追記した内容:

1. 効果的な使い方
   - plan modeを使った計画的な開発
   - @記法によるファイル指定のコツ
   - セッション管理のベストプラクティス

2. 実践的なTips
   - よく使うコマンド一覧
   - 作業を効率化するショートカット
   - トラブルシューティング

3. 活用シーン
   - リファクタリング作業での活用
   - テストコード生成での使い方
   - ドキュメント作成の効率化

セットアップで止まってしまう人が多いので、「セットアップの次」を充実させることで、実際に使い始めてもらえるようにしました。

ドキュメント作成で心がけたこと

1. 実体験ベースの内容

まず自分で実際に使い込んでから書きました。公式ドキュメントの受け売りではなく、「実際に使ってみてこうだった」という生の情報を提供することを重視しました。

2. スモールスタートを意識

完璧なマニュアルを目指すのではなく、「まず動かせる」ことを優先。詳細な機能説明より、最初の成功体験を作ることが大切だと考えました。

3. 失敗談も価値ある情報

「こうするとうまくいかなかった」という失敗例も積極的に記載。同じ失敗を繰り返さないための貴重な情報として共有しました。

4. 継続的な更新

ツールは日々進化するので、新しい発見があればすぐに追記。生きたドキュメントとして育てていくことを意識しました。

これから期待していること

ドキュメントを公開したばかりなので、実際の効果はこれから観測していく段階です。ただ、以下のような変化を期待しています:

最初の一歩を踏み出す人が増える

まずは「使ってみようかな」と思ってくれる人が一人でも増えれば成功だと考えています。ドキュメントがその後押しになれば嬉しいです。

フィードバックをもらえる

実際に使った人から「ここが分かりにくかった」「こういう情報も欲しい」といったフィードバックがもらえれば、ドキュメントをより良いものに改善できます。

活用事例が集まる

使い始めた人たちから「こんな風に使ってみた」という事例が集まってくれば、それをドキュメントに反映させて、さらに実践的な内容にしていけるはずです。

今後の展望

ドキュメントの育成

これから実際に使われる中で、足りない情報や改善点が見えてくるはずです。利用者の声を反映させながら、より実用的なドキュメントに育てていきたいと思います。

効果の測定

どのくらいの人が使い始めたか、どんな場面で活用されているか、といった情報を収集できれば、ドキュメントの価値を客観的に評価できるようになります。

文化として定着させる

「新しいツールを使ったら、その知見を共有する」という習慣が根付けば、今後導入される新しいツールについても、自然と情報共有が進むようになるはずです。

まとめ

AIツールの真の価値は、導入することではなく、活用することで初めて発揮されます。そのためには、使い方を知っている人の知識を、チーム全体で共有することが不可欠です。
今回の取り組みを通じて学んだことは:

  1. 小さく始めて大きく育てる - 完璧を求めず、まず共有することから
  2. 実体験は最高の教材 - 使った人の生の声が一番説得力がある
  3. 継続的な改善が鍵 - 一度作って終わりではなく、育てていくことが大切

開発チームの生産性向上は、個々のスキルアップの積み重ねから生まれます。AIツールを「知っている人だけのもの」から「みんなが使えるもの」に変えていくことで、チーム全体の開発力が向上すると信じています。
もし「便利そうだけど使い方が分からない」というツールがあれば、ぜひ使ってみて、その経験を共有してみてください。きっと誰かの役に立つはずです。
これからどんな変化が起きるか、楽しみに観察していきたいと思います。

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