新メンバーのオンボーディングを加速させる「プロアクティブな情報提供」アプローチ
はじめに
エンジニアチームに新しいメンバーが加わった時、多くの場合「わからないことがあれば質問してね」というスタンスで対応することが一般的です。もちろん、これは大切なアプローチの一つですが、私はこれだけでは不十分だと考えています。新メンバーが「何を質問すべきか」すら分からない状況にあることが多いからです。
本記事では、私が実践している「プロアクティブな情報提供」アプローチについて共有し、なぜこれが新メンバーの成長と即戦力化を加速させるのかについて説明します。
「聞かれたら答える」から「先回りして提供する」へ
従来のアプローチの課題
「質問があれば聞いてください」というアプローチには、以下のような課題があります。
- 新メンバーは、自分が何を知らないのかを把握できていないため、適切な質問ができない
- 質問することへの心理的障壁(迷惑をかけたくない、無知を露呈したくないなど)
- 断片的な情報取得になりがちで、全体像を掴みにくい
プロアクティブな情報提供のメリット
私が実践している「プロアクティブな情報提供」アプローチでは、以下のメリットが得られています。
- 全体像の早期把握: システムやアプリケーションの処理フローを先に提供することで、新メンバーは早い段階で全体像を把握できる
- コンテキストの理解: 個々のタスクがどのように全体に寄与しているかを理解しやすくなる
- 自己学習の促進: 提供された情報をもとに、自分で考え、調査する力が養われる
- 心理的安全性の確保: 「質問しなければならない」というプレッシャーが軽減される
実践方法:効果的な情報提供の具体例
1. システム処理フローの可視化
新メンバーには、まず以下のような情報を図やダイアグラムを用いて提供します。
- アプリケーションのエンドツーエンドの処理フロー
- マイクロサービス間の連携図
- データの流れ
例えば、投稿機能の実装を担当する場合、ユーザーの操作からデータベース保存、通知発行までの一連のフローを図示することで、自分の担当部分がどこに位置するのかを理解しやすくなります。
2. 実際のアプリや管理画面に触れる機会の提供
ドキュメントや図解だけでなく、実際のアプリケーションや管理画面を操作してもらう機会を設けることも非常に効果的です。
- 本番環境のデモアカウントでの操作体験
- 管理画面の主要機能のハンズオン説明
- ユーザー視点での操作フローの体験
このような実践的な体験は、抽象的な説明だけでは得られない直感的な理解を促進します。例えば、「このボタンをクリックすると、裏側ではこういう処理が走っている」というように、UIと内部処理の関連性を示すことで、システム全体の理解が深まります。
まとめ:プロアクティブな情報提供で即戦力化を加速させる
新メンバーのオンボーディングでは、「質問に答える」という受動的なアプローチだけでなく、「必要と思われる情報を先回りして提供する」というプロアクティブなアプローチが効果的です。これにより:
- 全体像の把握が早まる
- コンテキスト理解が深まる
- 自己学習が促進される
- 早期に即戦力となれる
もちろん、質問に丁寧に答えることも大切です。しかし、新メンバーが「何を質問すべきか分からない」状態から「適切な質問ができる」状態へ早く移行できるよう、プロアクティブな情報提供を心がけることが、チーム全体の生産性向上につながると信じています。
Discussion