KDE LinuxをVMware Workstation Proにインストールする方法
KDEが開発中のKDE LinuxをVMware Workstation Proにインストールしてみました。
- Host OS: Windows 11
- VMware Workstation Pro: 17.6.4
- Guest OS: KDE Linux (kde-linux_202511050556.raw)
KDE LinuxにはISOイメージが提供されていないません。一方VMware Workstation Proではrawイメージを使用できません。そこでrawイメージをいったんUSBメモリに書き込み、VMware Workstation ProでUSBメモリを使用する方法をとりました。
USBメモリの書き込みにはRufusを使用しました。
USBメモリへのrawイメージの書き込み
まず、KDE LinuxのrawイメージをUSBメモリに書き込みます。
KDE Project推奨のライターはISO Image Writerですが、これはLinux用です。Windows環境ではRufusを使って書き込むことができます。

私は手持ちの32GBのUSBメモリに書き込みました。rawイメージが5.6GBなので、8GBでも大丈夫かもしれません。
書き込みが終わったらPowerShellでGet-PhysicalDiskコマンドレットを実行し、USBメモリのディスク番号を確認しておきます。
Get-PhysicalDisk | Sort-Object -Property Number
このコマンド出力のFriendlyName列とSize列でUSBメモリを特定してください。左端のNumber列がディスク番号です。この番号はあとでVMware Workstation ProにUSBメモリを追加する際に必要になります。

スクリーンショットの例では、ディスク番号3がUSBメモリです。
USBメモリをVMWare Workstation Proに追加する
ここがちょっとめんどくさいです。
USBメモリをVMに追加するために、VMware Workstation Proを管理者権限で起動します。VMware Workstation Proのショートカットを右クリックして「管理者として実行」を選びます。
起動したら新しい仮想マシンを作成します。ストレージの選択画面では20GB以上の仮想ディスクを作成してください。このディスクにKDE Linuxがインストールされます。
あとは普通のLinux仮想マシンと同じように設定を進めてください。快適に使うには主記憶は8GB以上、プロセッサは4コア以上を割り当てることをお勧めします。
ハードウェアの設定が終わったら、USBメモリを追加します。仮想マシンの設定画面で追加ボタンを押し、追加するハードディスクとしてハードディスクを選びます。コントローラはSCSIを選択し、「物理ディスクを使用」を選びます。ディスクの選択画面で、先ほどPowerShellで確認したUSBメモリのディスク番号を選びます。
この例では先ほど調べたディスク番号3を選んでいます。

追加が完了したら結果を調べます。物理ディスクの容量を調べて間違いなく自分が希望するドライブであることを確認してください。間違ったドライブを使用すると、最悪の場合ホストOSのデータが破壊される可能性があります。

最後に、仮想マシンのファームウェアをUEFIに変更します。KDE LinuxはUEFIから起動します。

KDE Linuxのインストール
以上の準備ができたら、仮想マシンを起動します。KDE Linuxのライブイメージが起動します。メニューがしゃれてますね。

あとは黙って見ていればライブイメージが起動します。

単にKDE Linuxがどんなものか見てみたいなら、これで終わりです。WaylandセッションでKDE Plasmaデスクトップ6.5が動作していますので、いろいろいじってみてください。
もっとも、これだけだならKubuntuと変わりません。KDE Linuxらしさを体験したいならば画面に表示されている通りInstall Systemをクリックしてインストールを進めてください。
インストールには特に躓くところはありません。Kubuntuの経験があれば鼻歌交じりでインストールできます。もっとも、進捗が15%から一気に100%に飛ぶあたりは「まだまだ開発中だな」と感じます。
KDE Linuxの初回起動
インストールが終わったら仮想マシンを終了します。
ここで終了ではなく再起動すると、ブートメディアとしてUSBメモリが選ばれる可能性があります。こうなると面倒なので、再起動ではなく終了することをお勧めします。そのうえで仮想マシンの編集画面から、先ほど追加したUSBメモリを削除してください。
あとは電源を入れると、インストールしたKDE Linuxが起動します。ログオンすればKDE Plasmaデスクトップが現れます。

触ってみた感触
KDE LinuxはKDE Plasmaを利用したユーザー向けのLinuxディストリビューションです。
KDEプロジェクトにはすでにKDE NeonとKubuntuというUbuntuベースのディストリビューションがあります。KDE NeonはKDE Plasmaの最新機能をいち早く体験したいユーザー向け、Kubuntuは安定性を重視するユーザー向けです。このふたつは十分にその役割を果たしています。
KDEがわざわざ新しいディストリビューションを開発する理由は、不変な(immutable base)OSをユーザーに提供したかったことにあるようです。UbuntuはDebianをベースにしており、パッケージマネージャ―を使って多くのソフトウェアをインストールできます。これは便利ではありますがコアOSにいくらでも手を加えることができるため、今時のセキュリティ的にはよろしくありません。
KDE Linuxが目指す不変なOSは、追加ソフトウェアをコアOSに直接インストールするのではなく、コンテナ技術を使って追加することで実現されます。そのためベースディストリビューションであるArchLinuxのパッケージ管理システムpacmanは意図的に削除されています。
ということで、いくつか気になった点を調べてみました。
- open-vm-toolsはどうするのか。
- 日本語入力はどうするのか。
- アプリケーションはどうするのか。
open-vm-toolsはどうするのか
結論から言うと、open-vm-toolsはインストールできません。
あまりにも動作がトリッキーですので不変なOSの理念には整合しないですね。幸いにも、インストールしたてのKDE Linuxであっても、マウスの自動キャプチャ/自動リリースは機能します。つまり、VMのデスクトップの境界を越えてマウスをシームレスに移動できます。
一方で、ゲストOSとホストOSの間でのクリップボード共有は機能しません。これは残念ですが、VMwareそのものが一般向けとは言い難いため、KDE Linuxのターゲットから切り捨てるのは妥当でしょう。
日本語入力はどうするのか
Kubuntuではapt install fcitx5-mozcで簡単に日本語入力環境を構築できますが、KDE Linuxではpacmanがないためこの方法は使えません。
その代わりに、Discoverアプリケーションからインストールできます。ただし、「MozcをインストールするとFcitx5もインストールされる」という依存関係は無いため、Fcitx5とMozcの両方をインストールする必要があります。
インストール後はFcitx5をVirtual Keyboardから起動するように設定すれば、ストレスのない日本語入力が可能になります。
アプリケーションはどうするのか
他のアプリケーションもDiscoverアプリケーションからインストールできます。KDE LinuxではFlatpakが利用可能になっているため、例えばFlatpak版のVS Codeをインストールすることができます。
そのほか、KubuntuでDiscoverからインストールできるソフトウェアは、KDE Linuxでも同様にインストールできるようです。
- bitWarden
- GIMP
- Inkscape
- Slack
- VLC media player
など、一通りのユーザー向けアプリケーションはDiscoverからインストールできるようです。
一方で、Tailscaleのインストールスクリプトは正常に動作しませんでした。これがTailscale側のサポートで動くようになるのか否かは見守っていくしかありません。なお、TailscaleのDockerイメージは動作しましたので、この問題はDockerを使うことで回避できるかもしれません。 結局、ダウンロードしたTailscaleのLinux用バイナリを直接実行することで動作させることができました。
まとめ
多少トリッキーなところはありますが、KDE LinuxをVMware Workstation Proにインストールすることは可能です。
KDE Linuxはまだ開発中のディストリビューションですが、KDE Plasmaの最新機能をいち早く体験したいユーザーにとっては魅力的な選択肢となるでしょう。一方でカーネルレベルでの変更を必要とするような人には向かないかもしれません。
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