【Inkjet】03. GF180 Inkjet Driver 設計探索(続編2)— 300dpiを前提としたHVドライバアレイの成立点
GF180MCU open PDK を用いたインクジェットドライバ IC の設計探索において、
400dpi 配列が DNWELL 制約により不成立であることを確認した。
本記事ではその結果を踏まえ、
300dpi ピッチに設計条件を固定した場合に
HV_SW_UNIT アレイがどこまで実装対象として成立するのかを、
GDS レイアウトベースで整理する。
本記事は、以下の記事の **続編(結果編)**です。
- 前編:GF180 Inkjet Driver 設計探索
https://zenn.dev/samizo_aitl/articles/024_gf180-inkjet-driver - 続編:400dpi の限界と 300dpi への現実解
(400dpi が DNWELL 制約により構造的に不成立であることを GDS で確認)
前稿では、
GF180MCU + DNWELL 前提では
400dpi(63.5µm)インクジェットドライバは構造的に不成立
という結論に到達しました。
本稿ではその結果を踏まえ、
300dpi(約85µm)に設計条件を固定した場合、
HV ドライバアレイはどこまで「実装対象」として成立するのか
を整理します。
なぜ 300dpi に固定するのか
300dpi のピッチは:
- 25.4mm / 300 ≒ 84.7µm
これは、GF180 の HVMOS において支配的となる
- DNWELL エンクロージャ
- 高電圧デバイスのドリフト領域
- ガードリングおよび分離マージン
を 同時に満たせる最小クラスのピッチです。
400dpi の探索で重要だったのは、
「どこまで詰められるか」ではなく
「どこからが現実解か」
を GDS で確定できた点でした。
300dpi は、その 確定した成立点です。
300dpi 専用 HV_SW_UNIT アレイ
300dpi では、以下の設計方針を採用しました。
- dpi をパラメータ化しない
→ 300dpi 固定 - HV_SW_UNIT 内のガードリングは廃止
- アレイ外周で 列単位の Guard Ring 共有
- DNWELL 連続性を最優先
アレイ生成コード上の本質的な変更点は、
実質的に ピッチ指定のみです。
pitch_x = um(85.0, layout.dbu) # 300 dpi
pitch_y = um(85.0, layout.dbu)
400dpi では破綻していた構造が、
300dpi では 無理なく配置できるレンジに入ります。
※ 本アレイ検証は、DNWELL 分離が最も厳しく効く条件を想定し、
NMOS 主体・4×2 構成を最小評価ブロックとして実施している。
これにより、300dpi における成立性は
単セルや理想配置ではなく、
アレイ中心部を含む実効的な物理条件で確認されている。
GDS 上で確認できたこと
300dpi アレイ GDS を生成・確認した結果、
以下が明確になりました。
- DNWELL のエンクロージャが自然に収まる
- Guard Ring が「邪魔な存在」ではなく、
意味を持つ隔離構造として成立 - ユニット間に 配線・電源引き回しの余地が見える
- 配列全体が、もはや「配置実験」ではなく
IC の土台構造として読めるレベルに移行した
重要なのは、
300dpi は「工夫すれば成立する」ではなく、
「前提として成立している」
という点です。
400dpi では、どれだけ構造を削っても
常に 無理をしている感 が残りましたが、
300dpi では 設計判断が自然に下せる状態に変わりました。

300dpi はゴールではないが、入口ではある
もちろん、300dpi に落としたからといって、
- 製品レベルの信頼性
- フル機能のドライバ回路
- Pad / ESD / テスト構造
までが即座に完成するわけではありません。
しかし、
- DNWELL
- 高電圧デバイス
- ガードリング
- 配列ピッチ
という 最も重い物理制約をクリアしたことで、
「設計を進める資格」が得られた
と言えます。
300dpi 前提で次にやること
300dpi を前提にした次フェーズでは、
以下が現実的な検討対象になります。
-
HV_SW_UNIT の実デバイス置換
- プレースホルダから GF180 HV MOS への差し替え
-
電源・GND 配線骨格の検討
- HV / LV の分離とリターン電流意識
- DRC ベースでの寸法確定
-
PEX → SPICE による sanity check
- Id–Vd / Id–Vg
- スイッチング過渡
- 最小限の Pad / I/O 構成
ここから先は、
「成立するかどうか」を見る探索ではなく、
成立する前提で IC を仕上げていくフェーズです。
まとめ
- 400dpi:
GF180MCU + DNWELL 構造では物理的に不成立 - 300dpi:
GDS レベルで成立点を確認 - 本検討の成果は、
「できる/できない」の境界を物理で確定したこと
300dpi は妥協ではなく、
現実に立脚した設計判断の結果です。
おわりに
高電圧・混載・高密度という条件が重なると、
設計は必ず 物理に引き戻されます。
GF180MCU open PDK は、その現実を
誰でも GDS で確認できる貴重な環境です。
この先に進むなら、
それはもう 300dpi を前提とした別フェーズになります。
本記事では、
ここで一度、結果を確定します。
本プロジェクトとの関係
本検証およびその後のレイアウト成果は、
以下の技術探索プロジェクトの一部である。
gf180-inkjet-driver
-
目的: インクジェット・プリントヘッド向け
高電圧 mixed-signal ドライバ IC の物理設計探索 - 方針: 自動化ではなく レイアウト主導設計
🔗 Links
-
GitHub Repository
https://github.com/Samizo-AITL/gf180-inkjet-driver -
GitHub Pages(設計ドキュメント)
https://samizo-aitl.github.io/gf180-inkjet-driver/ -
Design Docs(GDS / Layout中心)
https://samizo-aitl.github.io/gf180-inkjet-driver/docs/
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