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AIを使う目的は生産性を上げることばかりではない

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AIは、エンジニアの生産性を上げるための道具として語られることが多いように思います。たしかに、それは間違っていません。コードを書く手を助けてくれたり、わからないことを調べる時間を短くしてくれたりします。私も日々の開発で、その便利さに助けられています。

でも、それとは少し違う形でAIの存在をありがたく感じることが多いです。

ソフトウェア開発をしていると、どう進めるか迷う場面がよくあります。設計の方向に自信が持てなかったり、手を動かす前に「これでいいんだろうか」と立ち止まってしまうこともあります。そんなときにAIに相談すると、すぐに答えが見つかることもあれば、考えを整理するきっかけになることもあります。「これで進めて大丈夫そうだ」と思えるだけで、だいぶ気が楽になります。

ふり返ってみると、これは単に効率が上がったという話ではないのかもしれません。迷いながらも前に進めるように、自信を持つための支えになっていたように思います。

『組織パターン』という本の中に、こんな言葉があります。

プロジェクトが最もうまくいくのは、関わる人々がプロジェクトによい印象を持っていて、自信があるときだ。
しかし、ここにはニワトリが先か、タマゴが先か論がある。
つまり、自信は成功を生むが、成功が自信を作り出すのだ。

確かに、自信がないまま動くのは不安ですし、かといって結果が出ないと自信も生まれません。この循環から抜け出すのは、簡単なことではありません。

だからこそ、AIが自信のきっかけになるというのは、案外大事なことなんじゃないかと思います。たとえば、「今の考えで合っていそうだ」と確認できるだけでも、前に進むエネルギーになります。大げさな話ではなく、日々のちょっとした安心の積み重ねが、長い目で見ればプロジェクトの力につながっていく気がします。

プロジェクトの中心にいるのは、今でも人でありチームです。AIは生産性を高める道具でもありますが、それ以上に、人が少しでも安心して動くための、自信の支えとしての役割があると思います。そういう視点からAIを使うことも大事な気がします。

目の前の生産性を高める工夫ももちろん大事だけど、それ以上に、人やチームそのものが少しずつ成長していくことのほうが、長い目で見ると大きな価値を生む気がします。小さな成功体験が積み重なって、自信や信頼になっていく。その土台があるからこそ、自然と生産性も上がっていくし、いい仕事にもつながる気がします。

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