言葉で考えることが得意じゃない自分が、ちょっと楽になってきた話
はじめに
1年以上前に、同僚にYouTubeの動画(絵で物事を考える「視覚思考者」にはどんな世界が見えるのか?)を紹介してもらい、『ビジュアル・シンカーの脳: 「絵」で考える人々の世界』という本を読みました。
これらのコンテンツでは、視覚的に考える「視覚思考タイプ」の人の捉え方や感じ方が語られていました。自分にも少しそういうところがあると感じていて、そのときは興味深く感じていただけだったのですが、最近のAIの発展でこのことを思い出します。
言語中心の社会
本にも書かれていたと記憶していますが、現代の社会は、言葉で考えたり、論理的に説明したりすることが自然と重視される傾向があると思います。
エンジニアの世界でも、設計思想を文書化したり、コードレビューで論理的に説明したり、チームでの議論をリードしたりといった場面で、言語的なコミュニケーション能力が重要視されることが多いです。
自分にとっては、そういう言語的なやり取りはちょっと苦手な部分もあって、うまく伝えられないもどかしさを感じることもよくありました。
- 設計のアイデアは頭の中で立体的に見えているのに、それを文章にするのに時間がかかる
- コードの構造は直感的に理解できるのに、それを他の人に説明するのが難しい
- 問題の解決策は見えているのに、なぜその方法が良いのかを論理的に説明するのに苦労する
でも、だからといって「思考力がない」とか「何も考えていない」というわけではなく、むしろ、システム全体を俯瞰で見る力や、複雑な関係性を直感的に理解する力、パターンを視覚的に認識する力は、言語思考タイプの人よりも得意な部分もあると思っています。
そのため、自分の場合は言葉にするのはうまくはない分、自分なりには言葉を尽くして伝えることを意識していました。
AIによってかわりつつあること
最近、開発において自分や仲間がAIを使う中で、少しだけ楽になってきたように感じています。
具体的な変化
NotebookLMでのポッドキャスト作成
- 技術文書をアップロードすると、2人の会話形式のポッドキャストを自動生成してくれる
- 文字で読むより、音声で聞いた方が理解しやすいこともある
設計文書の作成
- まとまらないままの思考を箇条書きで伝えると、それを構造化された文書にしてくれる
- 図やダイアグラムから、説明文を生成してもらえる
コードレビューでの説明
- 「なんとなく気になる」コードの違和感を伝えると、具体的な改善点を言語化してくれる
- 実装の意図を曖昧に説明しても、それを整理して他の人に伝わりやすい形にしてくれる
チーム内での議論
- 会話の中で出てきたアイデアを、後からAIと一緒に整理して、提案資料にまとめられる
- 技術選定の理由を、感覚的な判断から論理的な根拠に変換してもらえる
そんな風にAIがサポートしてくれることで、これまで伝えきれなかった部分にも光が当たるようになってきた気がしています。
いろんなタイプのエンジニアがいる
エンジニアの中にも、さまざまな思考タイプの人がいます。
- アルゴリズムを数式で美しく表現するのが得意な人
- システムアーキテクチャを図で直感的に設計する人
- ユーザーの気持ちを感覚的に理解してUXを作る人
- データの中からパターンを視覚的に見つけ出す人
これまでは、そうした多様な才能を「言語」という共通のインターフェースを通して表現する必要がありました。でも、AIがその翻訳者の役割を担ってくれることで、それぞれの思考スタイルがより活かされる環境が生まれているように感じます。
これからの話
もちろん言語で考える文化そのものはとても大切ですが、それに頼りすぎていた部分もあったと思います。ある意味、別の才能を活かしきれなかった面もあるというのも事実だと思います。
だからこそ、言語だけに依存しない新しい形の開発手法や、チームコミュニケーション、技術表現が受け入れられていくといいなと思っています。
- 視覚的な設計ツールとAIを組み合わせた開発フロー
- 図や動画で技術を伝える新しいドキュメンテーション
- 多様な思考スタイルを活かすチーム運営
そうすれば、自分のように言葉でうまく考えたり伝えたりするのが苦手な人も、もう少し自分らしくいられる場所が増えていくかもしれません。
いろんなタイプの人にとって居心地の良い社会となるように、AIはその後押しをしてくれると良いなと思います。
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