Vertex AIってなんだ? Google CloudのAI統合プラットフォームを徹底解説
「うちもAI導入したいんだけど、なんかいいサービスない?」
上司からこう聞かれて頭を抱えた経験、あるんじゃないだろうか。ChatGPTは知ってる。Claudeも聞いたことある。でも「企業でちゃんと使う」となると、急に話がややこしくなる。
そこで今回は、GoogleのAI開発プラットフォーム「Vertex AI」について、基礎からがっつり解説していく。
そもそもVertex AIとは何者か
Vertex AIは、Google Cloudが提供するフルマネージドのAI開発プラットフォームだ。
公式ドキュメントにはこうある:
Vertex AI is a machine learning (ML) platform that lets you train and deploy ML models and AI applications, and customize large language models (LLMs) for use in your AI-powered applications.
(Vertex AI は、ML モデルと AI アプリケーションのトレーニングとデプロイを行い、AI を活用したアプリケーションで使用する大規模言語モデル(LLM)をカスタマイズできる ML プラットフォームです。)
要するに、AIモデルの開発からデプロイ、運用管理まで全部ワンストップでできる環境ということだ。
従来のAI開発では、データ準備、モデルトレーニング、評価、デプロイ、監視と、それぞれの工程で別々のツールを使い分ける必要があった。それがVertex AIでは全部まとめて管理できる。まさに「AI開発のオーケストレーター」だ。
Vertex AIの主要コンポーネント
Vertex AIは単一のサービスではなく、複数の機能が統合されたプラットフォームだ。主要なコンポーネントを見ていこう。
1. Model Garden(モデルガーデン)
これがVertex AIの目玉機能といっても過言ではない。
Google公式によると、200以上のエンタープライズ対応モデルが用意されている。使えるモデルは大きく3種類に分類される:
- Google製モデル: Gemini、Imagen、Chirp、Veoなど
- サードパーティ製モデル: AnthropicのClaude、AI21 Labs Jambaなど
- オープンソースモデル: MetaのLlama、Gemmaなど
そう、ClaudeもLlamaもVertex AI上で使えるのだ。これは地味にすごい。企業としては「どのモデルを使うか」という選択肢を残しつつ、統一されたインフラ上で運用できる。
2. Vertex AI Studio
生成AIモデルをコード不要でテスト・カスタマイズできるGUIツール。
プロンプトの設計、モデルのチューニング、音声とテキスト間の変換など、開発者じゃなくても触れるレベルで使いやすい。「とりあえず試してみたい」という段階ではここからスタートするのがオススメだ。
3. Vertex AI Agent Builder
2024年のGoogle Cloud Nextで大々的に発表されたサービス。AIエージェントの構築・デプロイを支援する機能群だ。
構成要素としては:
- Agent Garden: サンプルエージェントやツールのライブラリ
- Agent Development Kit (ADK): マルチエージェントシステム構築用のオープンソースフレームワーク
- Agent Engine: 本番環境でのデプロイ・管理・スケーリング
ノーコード・ローコードでエージェントを構築できるため、「人間の代わりにAIが情報収集してアクションを実行する」みたいなシステムを比較的簡単に作れる。
4. Vertex AI Search
大規模言語モデルを活用したエンタープライズ検索エンジン構築機能。
自社データに基づいてGoogle品質の検索アプリを構築できる。RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を実現したい場合、ここが入り口になる。
AutoMLと カスタムトレーニング
Vertex AIでのモデルトレーニングは、大きく2つのアプローチがある。
AutoML
コードを書かずにモデルをトレーニングできる。表形式データや画像データを投げ込めば、あとはVertex AIがよしなにやってくれる。
公式いわく、従来比で80%ものコード行数を削減できるらしい。機械学習の専門知識がなくても、ある程度のモデルは作れてしまう。
カスタムトレーニング
自分でトレーニングコードを書いて、任意のMLフレームワーク(PyTorch、TensorFlowなど)で動かす。Vertex AIはジョブ実行に必要なリソースをオンデマンドでプロビジョニングしてくれる。
ガチの研究開発や、AutoMLでは対応できない複雑なユースケースはこっち。
料金体系:従量課金制の罠と恩恵
Vertex AIは基本的に従量課金制だ。使った分だけ払う。
Google Cloud公式ドキュメントによれば:
料金は、使用したコンピューティング時間数に基づく従量制です。
主な課金ポイントは:
| 項目 | 課金単位 |
|---|---|
| Geminiモデル利用 | 100万トークンあたり(入力/出力別) |
| AutoMLトレーニング | ノード時間あたり |
| オンライン予測 | マシンタイプ × 稼働時間 |
| バッチ予測 | 処理データ量 |
Geminiの料金例(2025年時点)
Gemini 2.5 Flashの場合:
- 入力: 100万トークンあたり $0.30
- 出力: 100万トークンあたり $2.50
出力が入力の8倍以上高い。これは設計時に意識しておくべきポイントだ。出力トークン数を減らす工夫(JSON形式でindexだけ返すとか)で、コストを大幅に削減できる。
無料トライアル
新規のお客様には**$300分の無料クレジット**が提供される。まずはこれで試してみるのがいいだろう。
要注意:放置課金
ちょっと怖い話をすると、「Vertex AIを軽く触って放置していたら10万円課金された」という体験談がネット上に転がっている。
特にFeature Storeのオンラインサービングノードなど、デプロイしたリソースは使わなくても課金されるケースがある。試した後は必ずリソースを削除すること。
Google Cloudとの統合:これがVertex AIの真価
Vertex AIの本領発揮は、他のGoogle Cloudサービスとの連携だ。
- BigQuery: 大規模データ分析との統合
- Cloud Storage: トレーニングデータの保存
- Cloud Logging / Monitoring: 運用監視
- IAM: アクセス管理
すでにGoogle Cloudを使っている企業なら、データの流れがシームレスになる。BigQueryに貯めたデータをそのままVertex AIでトレーニングに使う、みたいなことが自然にできる。
他サービスとの比較:AWS Bedrock、Azure OpenAI
クラウドベンダー各社がAI開発プラットフォームを提供している。ざっくり比較すると:
| サービス | 提供元 | 特徴的なモデル |
|---|---|---|
| Vertex AI | Google Cloud | Gemini、Imagen |
| Amazon Bedrock | AWS | Claude、Titan |
| Azure OpenAI | Microsoft Azure | GPT-4、DALL-E |
Vertex AIの強みは:
- Geminiとの親和性(当然ながらGoogle製モデルはここが最も使いやすい)
- 200+のモデルライブラリ
- 既存Google Cloudリソースとの統合
逆に、OpenAI系のモデルを使いたい場合はAzure OpenAI、Claudeメインで行きたい場合はBedrockも選択肢に入る(まあClaudeはVertex AIでも使えるが)。
実際に使い始めるには
Vertex AIを使い始める手順は以下の通り:
- Google Cloudプロジェクトを作成
- Vertex AI APIを有効化
- 課金を設定(無料トライアルでもOK)
- Vertex AI Studioでプロンプトをテスト
# Python SDKでGeminiを呼び出す例
from vertexai.generative_models import GenerativeModel
model = GenerativeModel(model_name="gemini-1.5-flash")
response = model.generate_content("こんにちは、今日の調子はどう?")
print(response.text)
Python、Node.js、Java、Go、C#など主要言語のSDKが用意されている。
まとめ:Vertex AIは「AI開発の道具箱」
Vertex AIは単なるAPIサービスではない。
- 200以上のモデルから選べるModel Garden
- ノーコードで試せるVertex AI Studio
- エージェント構築のAgent Builder
- エンタープライズ検索のVertex AI Search
- 従来型MLのAutoML / カスタムトレーニング
これらがGoogle Cloudのインフラ上で統合されている。
「どのモデルを使うか」から「どうやって本番運用するか」まで、AI開発のライフサイクル全体をカバーする。まさに「AI開発のオーケストレーター」だ。
Google Cloudをすでに使っているなら、導入のハードルは低い。そうでなくても、$300の無料クレジットで試してみる価値はある。
参考資料
- Vertex AI の概要 | Google Cloud
- Vertex AI の料金 | Google Cloud
- Vertex AI Platform | Google Cloud
- Vertex AI Agent Builder | Google Cloud
- Vertex AI の生成 AI | Google Cloud
次回は「Vertex AI Studioで実際にGeminiを動かしてみる」あたりを書こうかな。興味があればフォローしておいてほしい。
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