[Groovy][QuPath] 章4 QuPath入門3 ~細胞検出~
※ 画像解析ソフトQuPathに関する本を執筆中。完成した章から公開していく。
細胞検出
使用データ) OpenSlide Test data/Aperio/CMU-3
細胞検出には解析対象となるAnnotationの作成が必要になる。ここでは事前に四角いAnnotationを作成しておいた。
上部メニューからAnalyze
> Cell detection
> Cell detection
を選択する。
まずはデフォルトの設定でRun
を押してみる。
選択状態のAnnotaionが無ければ、解析対象が聞かれるが、Annotations
を選ぶと全Annotationに解析が実行される。
デフォルトで十分の精度を発揮している。
上部メニューのView
もしくは画像上で右クリック > Cells
からCell objectの表示方法が変えられる。
Nuclei only | Cell boundaries only | Centroid only |
---|---|---|
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細胞検出パラメーター
綺麗なHE画像であればデフォルトで十分な精度が得られることも多いが、免疫染色画像など全体的に薄い画像ではパラメーターの調整が必要になる。結果にcriticalな個所を紹介する。
ただし、真に完全な細胞検出はできないのである程度で妥協する必要はある。
パラメーター変更により検出できる細胞が増えても、逆に検出できていた細胞が検出できなくなったり、1つの細胞を2つと認識したり、完璧にはならないだろう。
使用データ) OpenSlide Test data/Hamamatsu/OS-3, OpenSlide Test data/Aperio/CMU-3
Detection image
Hematoxylin OD
かOptical density sum
から選択。
HE画像の場合はヘマトキシリンのoptical densityを指標に核を検出させる。
ヘマトキシリン以外で核染色している場合や、核抗原を免疫染色している場合は陽性細胞はOptical density sum
を選択すると良い。
ちなみにView
> Channel viewer
からヘマトキシリンやOptimal density sumの画像が確認できるので、十分に核を捉えているか見てみるとよい。
Background radius
バックグラウンド値の推測ために必要。
値を高めた方が、薄い細胞も検出できるようになるが、擬陽性も増える。下げると核の中でも濃い色の箇所のみを検出するようになる。
Background radius 2 | Background radius 8 | Background radius 20 |
---|---|---|
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Threshold
Thresholdを上げると薄い細胞や擬陽性は検出されなくなる。逆もまた然り。
Threshold 0.01 | Threshold 0.05 | Threshold 0.15 |
---|---|---|
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Minimum area/Maximum area
明瞭な核が見えるにも関わらず検出されていない場合は、デフォルトの最小サイズ閾値が原因の場合がある。
Minimum area 10 | Minimum area 5 |
---|---|
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デフォルトのMaximum areaは400 μm^2とかなり大きい細胞でも拾えるようになっている。大きいゴミのような黒い塊も細胞検出されるようであれば最大サイズ閾値を下げるとよい。
Median filter radius/Sigma
細胞同士が重なっているような箇所は複数細胞で1つの塊として認識されやすい。
元データ | デフォルト |
---|---|
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中央値フィルタやガウシアンフィルタでの画像ぼかし/ノイズ除去の値を変えると改善されることがある。
この例ではMedian filter radiusを0から1に上げる or Sigmaを1.5から1.0に下げる ことで巨大な細胞隗が解消された。
Median filter radius 1 | Sigma 1.0 |
---|---|
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一方で、検出できていた細胞が検出できなくなっている。
残念ながら、絶対的な条件を見つけることはできない。ある程度で妥協せざるを得ないだろう。
その他パラメーター
- Split by shape: 核が重なっている箇所でも形状に基づいて核を分離する。チェックを外すと核同士が少しでも接していると1つのObjectになってしまう。外す必要はない。
- Cell expansion: 細胞質領域の設定。細胞検出はあくまで細胞核を検出しており、細胞質は単純に核の領域を拡張しているだけである。defaultでは核から5 μm外縁が細胞質として登録される。細胞が密集しているところは5 μmに達しなくとも周囲核との中間に細胞質が作られる。
- Smooth boundaries: チェックを無くすとピクセル単位のガタガタのObjectになる。
- Make measurements: 細胞検出時に、細胞Objectの計測を行うかどうか。計測内容には細胞の面積や周囲径、丸さ、核/細胞質比、ヘマトキシリン色/エオジン色の値などの計測が自動で行われる。
細胞検出 + 陽性細胞検出
細胞内抗原の免疫染色では、その陽性細胞数や陽性細胞率を計測することに意義がある。
ここでは上記の細胞検出に加え、特定の色の値で陽性/陰性判別する方法を紹介する。
※ ただし、ここでの紹介例はお手本のような染色画像である。陽性細胞が集合すると細胞検出の精度は落ちるし、それが細胞質や細胞膜の抗原ならなおさら細胞検出が難しくなる。
使用データ) OpenSlide Test data/Hamamatsu/OS-2
Analyze
> Cell detection
> Positive cell detection
から陽性細胞検出を行う。
パラメーターの大半は上記で説明したCell detectionと変わらず、細胞検出までは同じである。実行方法も解析対象となるAnnotationを用意したうえでRunを押すだけである。
Intensity threshold parameters
では検出された細胞を分類するための閾値設定を行う。
陽性細胞検出パラメーター
陽性検出に重要なパラメーターを説明する。
Detection image
HE画像での細胞検出と異なり、Detection image
は染色に合わせて変更する必要がある。この核抗原の染色例ではOptical density sum
が相応しい。ヘマトキシリン色で細胞検出するとDAB陽性の細胞は、ヘマトキシリン色が薄く細胞として検出されない。
一方、細胞質抗原や膜抗原などで核のヘマトキシリン色が明瞭であればHematoxylin OD
を選択するとよい。
Score compartment
- どの分画でスコアリングするかを決めていく。染色した抗原に合わせてNucleus, Cytoplasm, Cell (Nucleus + Cytoplasm)のどれかを選択する。
- スコアに用いる値はOptical densityの平均値か最大値から選択する。基本的には平均値で良いと思われるが、細胞内のさらに細かい構造体を検出する場合は、平均値だと値が低く見積もられる可能性もある。こちらも抗原に応じて変更する。
Cell expansion
細胞質抗原を対象とする場合、細胞質領域を大きく取り過ぎると平均値が下がる。
デフォルトの5 μmは組織内の細胞には大きすぎるため、1や2 μmまで落としても良いだろう。
2値分類 or 強度分類
Single threshold
にチェックが入っている場合は、陽性 or 陰性 の2値分類が行われる。その場合はThreshold 1+
のパラメーターのみ使用される。
2値分類
Single threshold
のチェックを外すと、染色強度により陽性細胞を3段階に分類できる。その場合は
Threshold 2+``Threshold 3+
のパラメーターも有効となる。
強度分類 黄->橙->赤で色分けされる。
実際の閾値の設定は決め打ちで行うよりもRunを繰り返しながら尤もらしい値を選ぶとよい。
結果の書き出し
Annotation内の陽性細胞数などの集計結果を得るにはMeasure
> Show annotation measurements
を選択する。
Copy to clipboard
かSave
で数値データをテキスト形式で保存できる。
- Num Detections: 総検出細胞数
- Num 1+, Num 2+, Num 3+: 各染色強度の陽性細胞数
- Num Negative: 陰性細胞数
- Positive %: 陽性細胞率
- H-score: 陽性細胞の染色強度も加味したスコアリング。次のように計算される。
H-score = (Num 1+の存在率%)*1 + (Num 2+の存在率%)*2 + (Num 3+の存在率%)*3
全細胞が強陽性細胞なら値は300になる。
細胞オブジェクト1つ1つの計測結果を得るには、Measure
> Show detection measurements
を選択する。
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