エントロピーと、わたしだけのタイムマシン─非線形に揺らぐ意識─
物理法則では、「時間は一方向にしか進まない」。
でも、わたしたちの意識はときに、過去を生き、未来をさまよい、現在を見失う。
エントロピーが支配する世界で、それでも“わたし”だけの時間を持ち続けるとは、どういうことなのか?
科学と心のあいだにある、見えない“時間の揺らぎ”を見つめてみた記録です。
※この記事は、noteに掲載したエッセイを加筆・再構成したものです。
🔹【1】エントロピー = 時間の矢印
自然界のほぼ全ての現象は、「エントロピーが増える方向」に進む。
つまり──
• 熱いお茶は冷める
• 枯れ葉は元に戻らない
• 生き物は老いていく
これが“時間は一方向である”という直感の正体。
私たちは「変化=時間」だと理解している。
🔹【2】でも、“意識”はちがう
人の意識や感情、記憶の世界にはエントロピーのルールが通用しない瞬間がある。
• 忘れたはずの記憶が、匂いや言葉ひとつでよみがえる
• 時間が止まる、あるいはゆっくり進む、または速く進むように感じる瞬間
• 亡くなった人との「記憶の中の会話」
• 過去に後悔し、未来に憂いを感じて、「いま」に意識が留まれなくなる瞬間
これは、「エントロピーが増え続ける世界」の中で、“意識だけが別の時間の流れ方をしている”ように感じることだと思われる。
🔹【3】時間は進むのに、わたしだけが取り残される
• 時計は進む。カレンダーも進む。
• でもわたしの中だけ、時間が動かない。
• 逆戻りしてしまい、取り残されているような感覚。
🔹【4】逆に、未来のことを想うとワクワクする。
• 楽しい未来を思い浮かべる。
• 夢が叶う瞬間を想像する。
• 今夜は何を食べようかなと考える。
暗い未来しか思い浮かばないかもしれない。
でも、人はそこへ光を探し、それに向かって進もうとする。
光のない闇に向かって進むのは、易しいことではない。
もしかしたら、研究が進めば──
エントロピーと意識のつながりも、いずれ解明されるかもしれない。
脳波や呼吸などは、その兆しなのかもしれない。
そしていつか……
身体のエントロピーを止める方法が、見つかるのだろうか。
いまこのとき、ひとは年を重ね、老いていくのを止められない。
✧・゚: ✧・゚: :・゚✧:・゚✧・゚: ✧・゚: :・゚✧:・゚✧
でも、意識は時間を自由に旅することができる。
過去、現在、未来。
ひとが永遠に奪われないタイムマシン。
いつでも乗れる。いつでも降りられる。
意識は、誰の手も届かない。
わたしだけのもの。
わたしだけの自由。
Discussion