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ツールの全社導入プレゼンで学んだ、「伝わるスライド」の作り方【設計編】

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「伝わりやすいスライド作り」「伝わりやすい説明をする」
こういったことが苦手なエンジニアは、多いんじゃないでしょうか?

自分も少し前までこんな感じでした

  • とりあえずAIに投げて、なんとなく資料が出来上がる
  • 作った資料を上からなぞるだけの説明
  • 結局は相手に響かず、手応えもなく終わる

しかし最近、全社向けの基幹ツールを導入(移行)するにあたり、多くの人に「伝わる説明」をする必要がありました。
試行錯誤した結果、自分史上最高のスライドを作れて、社内でも「わかりやすい」「レベルが高い」と好評でした。

今回は「伝わるスライドの作り方」というテーマで、私が実践していることを共有できればと思います。

https://zenn.dev/maya_honey/articles/purpose-driven-slide-visual

先に全体像:スライドはこの順番で作る

スライドツールを開く前に、4つのステップで中身を決め切ります

STEP やること 決まるもの
1 目的をきめる この発表が「何の手段」か/発表の目的(3つ以内)
2 聞き手を想像する 誰に・何を渡すか
3 構成をきめる アジェンダと各スライドの中身/載せないもの
4 話し方を仕上げる 「聞きやすさ」と「わかりやすさ」

見た目を作り始めるのは、STEP 3が終わってからです。

ここから、実物のスライドを見せながら4ステップをひとつずつ解説します。

今回作成したスライド

題材は、この説明会で実際に使ったスライドです。

前提:どんな説明会だったか

項目 内容
テーマ タスク管理ツールの全社移行(Backlog → Linear)
聞き手 エンジニアからサービス部・管理部まで全職種
形式 オンライン、30〜40分(Q&A含む)

聞き手の知識量も関心もバラバラ、しかも「いま使っているツールを取り上げられる」というネガティブ反応が出やすいテーマです。

私は社内の開発生産性向上とAI活用を推進する立場で、BacklogからLinearへの全社移行プロジェクトをリードしました。
この記事はその「本導入説明会」の実例をもとにしています。移行プロジェクト全体の記録は別記事にまとめているので、興味があればそちらもどうぞ。

https://zenn.dev/rakko_inc/articles/backlog-to-linear-migration

STEP 1:目的をきめる

何より先に決めるべきは、スライドを作る目的です。
ここが曖昧だと、なんとなくの中途半端なものができます。

導入説明会は、それ単体で存在するわけではありません。
ひとつ上の階層には「スムーズなLinear導入を実現する」という上位の目的があります。「スムーズ」を分解するとこうなります。

  1. 社内からの反発がなく、むしろ好意的に受け入れられる
  2. 業務が滞ることなく、旧ツールからの移行が進む

この上位目的のための手段は、説明会だけではありません。

  • 小さく始める:一部チームで1ヶ月の試験導入を実施し、評価データを取る
  • 対話する:各チームのMTGに参加して、導入についてコミュニケーションを取る
  • 自己解決できるようにする:操作説明動画(12本)、Q&Aボット、運用ルールの整備
  • 困ったら頼れるようにする:サポート窓口とフォロー担当の設置

実際、説明会の他にこういった取り組みを行っていました。
つまりこの説明会は、導入を成功させる唯一の場ではなく、積み上げてきた手の最後のダメ押しという位置づけでした。

ここまで遡って初めて、説明会そのものの目的を3つに絞れます。

  1. 移行の背景・狙いを理解してもらう
  2. 移行への不安を払拭し、期待感を持ってもらう
  3. チーム・個人がいつ・何をすべきか理解してもらう

この3つは、そのままスライドの2枚目「今日のゴール」になりました。

「今日のゴール」スライド。この説明会を聞いた後の状態として、なぜ移行するのか理解している、いつ・何をすればよいのか理解している、運用ルールを把握している、の3つを提示している

逆に言えば、この3つに寄与しない情報は、どれだけ丁寧に作っても説明会では雑音です。

STEP 2:聞き手を想像する

目的が決まったら、次は聞き手です。
彼らが説明会に対し「何を求めているか」を想像して書き出します。実際ヒアリングするのも良いです。

今回の説明会では、ざっくりこういう分類になりました。

聞き手 状態・関心 説明会で渡すべきもの
試験導入済みのエンジニア すでに使いこなしている 導入背景を改めて説明。正式な運用ルールの説明
新規参加のエンジニア GitHub連携に興味。英語UIに不安 メリットの具体と「1〜2週間で慣れる」見通し
サービス部・管理部 エンジニアのためのツール移行なの?使いこなせるか不安 「覚えるのは3つだけ」という安心
PO・リード 全体業務への支障はないか 運用ルール、フォローアップ体制の説明

この分析は、そのままスライドになります。たとえば「エンジニア以外のメリット」というスライドは、「自分には関係なさそう」と感じている非エンジニアの聞き手がいると分かっているから存在します。
「ロール別のステータス運用」スライドで、サービス部向けに「覚えるのは3つだけ」と明言したのも同じ理由です。

STEP 3:構成を決める

目的(STEP 1)と聞き手分析(STEP 2)が揃うと、アジェンダは半自動的に決まります。今回の7部構成は、3つのゴールにこう対応しています。

説明会のゴール 対応するアジェンダ
1. 背景・狙いの理解 Part 1: 導入の背景と目的
2. 不安の払拭と期待感 Part 2: 試験導入の結果 / Part 6: サポート体制
3. いつ・誰が・何をすべきか Part 3: 移行スケジュール / Part 4: 運用ルール / Part 5: 操作説明資料の紹介

ポイントは、どのゴールにも紐づかないパートが存在しないことです。目的の最上位層から要素分解と具体化を繰り返していくと、スライドの内容と構成はどんどん形作られていきます。

ここからは、要素分解が実際のスライドにどう落ちたかを、3つのゴール別に見ていきます。

ゴール1:背景・狙いの理解

「なぜBacklogから移行するのか」スライド。Backlogは長年使ってきた安定したツール、Backlogが悪いわけではない、と前置きした上で、AI連携の不足とGitHub連携の不足という2つの課題をカードで提示している

「なぜ移行するのか」のスライドでは、「ツールの問題ではなく、開発の進化に合わせた移行」という位置づけを明確に示しました。

移行の理由はいくつもありますが、スライドでは「AI連携不足」「GitHub連携不足」の2つに絞っています。
理由を10個並べるより、2つに絞った方が「なぜ」は記憶に残ります。

ゴール2:不安の払拭と期待感

「試験導入の結果」スライド。全体満足度4.31/5、エンジニア4.44/5、サービス部4.40/5の3つの数値カードと、好評TOP3(動作が速い、GitHub連携が便利、UIがシンプル)を提示している

不安の払拭に一番効くのは、きれいな言葉ではなく実測データです。試験導入アンケートの満足度(4.31/5)と「困った点は特になし:16名中10名」をそのまま見せました。
「先に試した同僚が問題なく使えている」という事実は、どんな説得よりも強い安心材料になります。

もうひとつ意識したのが、不安への先回りの言葉をスライドと台本のあちこちに仕込むことです。

  • 「迷ったらデフォルト設定のままでOKです」
  • 「最初から完璧に使いこなす必要はありません」
  • 「慣れ期間が1週間あるので、焦らなくて大丈夫です」

聞き手が「これ、ちゃんとできるかな」と思った瞬間に、その不安を拾う一言が入っている。この積み重ねが「反発のない導入」につながったと感じています。

ゴール3:いつ・誰が・何をすべきか

「移行スケジュール」スライド。4/3本日(説明会・Linear起票開始)、4/3〜10慣れ期間、4/10一括移行、4/13全面移行の4ステップをタイムラインで提示している

スケジュールは日付で4ステップに区切り、「今日から何が変わるか」「いつまでに何をすればいいか」を明確にしました。

そして個人のアクションは、ここまで絞り込みました。

「通知の設定 やること2つ」スライド。Inboxを1日1回確認、Slack通知チャンネルに参加、の2つだけをカードで提示している

聞き手が説明会から持ち帰れる行動は、多くありません。
10個お願いすれば全部忘れられますが、2つなら実行しやすいです。

スライドを作りながら「結局この1枚で聞き手に何を残したいか」を問い続けると、無駄を削れると思います。

STEP 4:話し方を仕上げる

中身が決まったら、仕上げに話し方です。とはいえ、プレゼンの出来はここまでの設計で8割決まっていると感じています。話し方はあくまで残りの2割、設計を聞き手に届け切るための仕上げです。

1. 自分の話し方を録画して改善する

エンジニアには早口の人が多い気がしますが、基本的には「ゆっくり話す」ほうが、聞き取りやすく、理解されやすいです。

一度、自分の発表を録画して、表情や話し方などを客観的にみてみるのがおすすめ
以下の観点でアップデートできるところがないか探してみてください

  • 話す「速さ」と「間」
  • 声の「大きさ」と「滑舌」

特に大人数の前だと緊張して、沈黙が怖くなり、どんどん早口になりがちです。
このペースで話すと良さそう...みたいな感覚を掴んでおくと良いです

2. 現在地を示し続ける

セクションが変わるごとに「今スライド全体のどこにいるか」「これから何を説明するか」を示し続けます。
30分の説明で聞き手が迷子になるのは、内容が難しいからではなく「いまの話が全体のどこで、何のための話か」を見失うからです。

アジェンダ進行スライド。7項目のアジェンダのうち現在のセクションだけが強調表示され、他はグレーアウトしている

このスライドでは「次に〇〇について説明します」とだけ話して次に行きます。
短いですが、それだけでも効果は絶大。

3. 声や内容に緩急をつける

全てのスライドを同じ熱量で語ると、重要な情報が刺さりにくい。
スライドの中で「情報の重要度」を整理しましょう。

特に伝えたい箇所は、「ここからが大事なところで...」「ここから注意して欲しいのですが...」のような前置きをすると効果的です。

結果:ツール移行は無事に完了

説明会と移行の結果です。

  • 質問の山は説明会直後の数日がピークで、1週間でほぼゼロになった
  • 疑問のほとんどは、事前配布した動画とQ&Aボットの段階で自己解決されていた
  • 移行は予定通り進み、説明会の1週間後に一括移行、その5日後に旧ツールの未クローズ課題ゼロを確認
  • 懸念していた反発は起きず、好意的に受け入れられた

「説明会が上手かったから」とは言いません。試験導入もサポート体制も含めた積み上げの結果です。ただ、その最後のダメ押しとして、説明会は確実に役割を果たしてくれました。そしてそれは、スライドツールを開く前の要素分解で大半が決まっていたと感じています。

まとめ:4ステップのチェックリスト

以上が、伝わるスライドの作り方でした!

  • STEP 1:目的をきめる
  • STEP 2:聞き手を想像する
  • STEP 3:構成をきめる
  • STEP 4:話し方を仕上げる

ここまでが「何を伝えるか」の設計の話です。
決めた内容をスライドの見た目に落とすときの技術(論理の見せ方・レイアウトの型・色と強調のルール)は、続編の【見せ方編】にまとめました。

https://zenn.dev/maya_honey/articles/purpose-driven-slide-visual

また、デザインや清書の工程はAIに任せるのがおすすめです。私はClaude Designを使っており、その方法は別記事に書いています。

https://zenn.dev/rakko_inc/articles/claude-design-company-deck

最後までお読みいただきありがとうございました。あなたの次のプレゼンが、聞き手に届くものになりますように。

ラッコ株式会社

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