🚨

AIは犯罪の『芽』に気づけるか?犯罪なき社会を目指す挑戦

に公開

事件になる前に止めることができていたら、どんなに良かっただろうか。
こんなに小さなすれ違いからこんなに大きな問題になってしまったなんて。

夕方のニュースを見ながら、
「これを止める方法はあったのか」

非現実的な"もしも"を考えながら

「でも本当に止められたとしたら」
そんな想像をしてしまいます。


はじめまして。都内でデータサイエンティストとして働く鈴木るなです。会社員としてデータに向きあい、この秋で4年目になりました。

本記事では、AIで犯罪の芽に気づくことはできるのか?という問いについて、
私自身の経験と考えを交えながら綴ります。

これは私のキャリアのマニフェストです。

問い

私の子どもの頃の夢は警察官でした。小さい頃は単純に「善と悪」がハッキリ分かれた世界を信じていましたが、成長するにつれ人にはそれぞれ事情があるという現実を知ります。

そして、考えるようになりました。
「犯罪者は本当に悪人だったのだろうか?」
その問いは私の中に根を下ろし、以来、私のライフワークとなりました。

趣味として犯罪学の本を読み、時には学会が主催する集中講義にも参加して、この学問が積み上げてきた知見に触れ続けてきました。

その探求心は、やがて「社会そのもの」への関心へと変わっていきました。

大学時代に社会問題に取り組む2つの団体に参加します。
1つはビジネスコンテスト、そしてもう1つはボランティアです。

お金を介する世界と、介さない世界。

両方から社会を眺めた結果、私が出した結論は「持続可能な仕組みを作るには、ビジネスの力が必要だ」というものでした。
そして学生時代に出会った先輩とともに、地域課題に挑む事業を立ち上げました。

起業してからは売上と成長を追いかけ気絶するように眠る毎日。
事業は拡大し仲間も増え、確かに充実した日々でした。

それでも、心のどこかで燻る“物足りなさ”が消えませんでした。
「私が本当に解きたかった問いは、これなんだろうか?」
その焦燥が私を2社目の創業へと駆り立てます。

結局、5年間スタートアップの世界で社会と向き合っても、私の思考はいつもあの子どもの頃の問いに戻っていくのです。

「なぜ、人は罪を犯すのか。」

遠回りをしましたがようやく自分が本当に向き合うべきテーマがこの場所にあったのだと確信しました。

データが映す『社会的孤立』のグラデーション

もし私が食い逃げをしたとして、有罪判決を受けることはあるのでしょうか。
考えてみると食い逃げで有罪になるまでの道のりは想像以上に険しいものです。

代わりに支払ってくれる友人がいて、心配してくれる同僚がいて、
そして何より面倒を見てくれる家族がいる。

多大な迷惑をかけるとしても、幾重にも守られている私は最終的に「有罪」になる可能性は極めて低いでしょう。
しかし現実に「食い逃げ」で有罪になる人は、確かに存在します。

私とその人の差は何なのでしょう。
考えてみると、その境界線は私たちが思うよりずっと曖昧で脆いものなのかもしれません。そしてその境界線を守っているのが社会的なセーフティネットです。

セーフティネットが綻び、社会から孤立していく兆候は日々のデータの中に静かに現れていると私は考えています。

例えば、これまで定期的にあった公共交通機関の利用履歴が途絶える。
スーパーでの買い物が生鮮食品から日持ちのする加工食品へと極端に偏り始める。
自治体の生活保護のページへのアクセスデータが増え始める。など…。

複雑に絡み合ったデータの中から、手を差し伸べるべき「状況」のサインを見つけ出すことができれば、人が犯罪という最後の崖にたどり着く前に気づけるのではないか。

もちろんAIが直接介入するわけではありません。
これは福祉の話かもしれないし、新しいテクノロジーの話かもしれません。個人への直接のアプローチかもしれないし、地域作りで解決できるのかもしれない。

これもまだまだ探求すべき問いです。

これは「誰が」ではなく「なぜ」の物語

ここで一つ大事なことをお伝えさせてください。私がやろうとしていることは『危ない思想を持つ人』を事前に見つけ出すことでは決してありません。ましてや、人をランク付けして『犯罪者予備軍リスト』を作ることとは全くの無縁です。

私が知りたいのは『誰が』危険かではありません。『どんな状況が』人を追い詰め、罪を犯させてしまうのか、その一点です。

これは監視や管理の話ではなく、支援とセーフティネットの話なのです。

社会を映す鏡としての「データ」、AIという名の「顕微鏡」

今の私はデータサイエンティストとしてこの問いの前に立っています。

「データ」は社会を映す鏡として冷徹な事実を突きつけます。
「AI」は顕微鏡のように、人間の目では見えない微かなパターンを浮かび上がらせてくれます。

犯罪に陥る前にデータにはどんな痕跡が残っていたのか。私たちの社会はどの時点まで時間を巻き戻し、手を差し伸べることができたのか。データはどこまでその可能性を教えてくれるでしょうか。

もちろん、これは決して簡単な道ではありません。考えなければならない課題は山のようにあります。

最大の課題は『予測の公平性』、すなわちAIのバイアス問題です。

例えば、AIが過去のデータから『貧困』を犯罪リスクと過度に結びつけて学習してしまえば、特定の所得層に対する不当なラベリングを生みかねません。

これを防ぐためには、アルゴリズムの透明性を確保し、判断根拠を説明可能にすること(Explainable AI)、そして何より、AIの分析結果が特定の属性を持つ人々へ不利益を与えていないかを常に監視・評価する第三者機関の設置が不可欠だと考えています。

ロードマップ

この挑戦が単なる夢物語ではないことを証明し、私自身の覚悟を示すため、最初の半年間の具体的な行動計画をここに約束します。

知の深化と発信(1〜3ヶ月)

これまでライフワークとして学んできた犯罪学の知見を、一度データサイエンティストの視点から体系的に整理し直します。

その上で、AIが過去に人を差別した失敗事例(COMPAS事件など)と本格的に接続させ、この領域における課題の輪郭をより明確にしていきます。

まとめた結果は適宜Zenn記事を通して共有していきます。

実践と対話(4〜6ヶ月)

日本の公的な犯罪データを実際に分析し、この国で何が起きているのかを可視化します。

机上の空論ではなく現実のデータと向き合うことで構想を具体化します。
分析の過程では説明可能AI(XAI)などの技術も駆使しながら「理論」を「実践」へと繋げていきます。

この過程を成功も失敗も含めてZennやGitHubで発信していきます。

ご意見をください

正直、自分がどれほど途方もないテーマに手を伸ばそうとしているのか、足がすくむ瞬間もあります。
でも不可能だと思っていたことを現実のものにしてきたのが私たち人間の歴史だったはずです。

データとAIが、人を裁くためではなく、守るために使われる未来を信じています。
この記事は、私の挑戦の宣言に過ぎません。同じ志を持つエンジニア、研究者、そして現場で人を支える全ての方々と繋がり、議論し、このビジョンを現実のものにしていきたいと思っています。

あなたの専門知識、現場での経験、あるいは純粋な疑問の一つひとつが、この挑戦を加速させる力になります。ぜひ、ご意見をお寄せくださると嬉しいです。

お読みくださり、ありがとうございました。

Discussion