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E ink 系デバイスで投稿サイト系小説を読みたい

青空文庫、小説家になろう、カクヨムあたりの小説を電子ペーパー端末で外出先などで読みたい向けの検討用メモ。

E ink系読書デバイスの選択肢

代表的なデバイス:

デバイス メーカー Android? コメント
Kindle シリーズ Amazon No カラー端末はない
Kobo シリーズ 楽天 No
BOOX シリーズ ONYX Intl. Yes 割高感
Meebook シリーズ 皓擎科技 (Haoqing Tech.) Yes
Bigme e-リーダ Bigme Yes スタイラスペンつきのみ

Meebook は以前は Likebook という名称で販売されていた。また日本向けの販売ポータルサイトが存在しないのでリンクは張っていない。

富士通(FCCL) の QUADERNO は E ink デバイスではあるけど用途がかなり違うのでここでは列挙しない。

上記はいずれも Wi-Fi 接続。SIM 対応 E ink デバイスとして世の中には Bigme Hibreak があるが、技適 (技術基準適合証明) がなさそうで日本では使えない。

Kindle, Kobo

これらはそもそも各社の電書サイト専用端末という位置づけなので、それ以外のものを読もうというのは邪道といえる。端末利用者数が多いのでデバイスそのものの安心感は相対的に高いと考えられる。

  • Kindle, Kobo のデバイスで読もうとすると、これらのデバイスに対応しているファイル形式 (EPUBかPDF) に変換する作業が必須になる。
    • そういうファイル形式に変換する手段を持たない場合、たとえばマガポケやらカドコミのような漫画サイトを直に読むことはできない。
    • 変換したものがどのようにレンダリングされるかなどは実際の物で確認するしかない。この辺りがリスク (とくに EPUB)
  • 現行モデルはどれも SD カード非対応 (のはず)。テキストであれば内蔵記憶のみで十分だが、マンガなど画像中心のものになると (kindle, kobo ライブラリ以外の) データのやりくりが大変になる。

BOOX, Meebook, Bigme

筆者は Bigme デバイスについては全く知らない。

  • アンドロ端末なので、E ink 特有の描画の遅さを除けば Android スマホと同様のアプリが使えると考えて問題ない。
    • Android の Version がやや古めであるとか、画面の縦横比がスマホと異なるあたりで若干問題になることがある。またここで列挙した以外のマイナーメーカーだと日本語表示不可(フォントがない)というハマり方をすることもあるよう。
    • (Bigme はどうだか知らないけど) 中の CPU 性能が Kindle, Kobo より劣るのか、ページ送り性能が Kindle, Kobo より遅め。もともと E ink である時点で高速ではないのだが。
  • どれも中華デバイスである。BOOX は SKT(株) が日本で代理店をやっているので多少安心の程度が大きいかもしれないが、五十歩百歩である。
  • Kindle, Kobo に比べて壊れやすい

壊れやすいデバイスかもしれない問題

Meebook の表示が壊れた状態を紹介する。

  1. 左端と下約四分の一あたりが表示できない
    2年弱使用した Meebook M6 だが、左端と下1/4位の表示がダメになってしまった。椅子から落としてしまった時の衝撃のせいと思われる。カバー(蓋)もあって一応保護はされていたはずだが、壊れる時はこんなもんである。
    Meebook の場合、ベゼル部と画面とかフラット(同じ高さ)なので、面で衝撃を受けると画面部分も等しく衝撃が来る。
    その構造のせいで丁寧に扱わないとこんなことになるのだろう。
    その後数か月放置した状態で久しぶりに立ち上げたところ、
    表示不能領域が拡大
    表示破壊が進行していた。

  2. この Meebook M6、電源ボタンが早々に壊れている(1年持っていないくらい)。本体右上に電源ボタンがあるのだが、反応しなくなっている。衝撃を受けやすい位置にもかかわらず耐久力のない作りになっていると思われる。
    Wi-Fi を使わなければ電池は持つので、電源ボタンが使えなくてもサスペンド&復帰(カバーを開けば復帰する)で問題はなかったのだが。仮に電源が落ちても充電ケーブルを刺して充電状態にすればシステムは立ち上がる。

今回は Meebook の表示故障による乗り換え先として Kobo を選択したが、Kobo での利便性に勝算があったわけでもなく、価格的に候補が Meebook か Kobo の二択に絞られて、なら人柱になっておくかという程度でカラー版 Kobo にしたという経緯である。

Kobo は耐衝撃性に関して考慮されたつくりになっており、カバー(蓋)がある状態ならかなり大丈夫そうに見える。

  • 画面はベゼルよりも一段へこんでいるので面衝撃も(カバー(蓋)さえしていれば)直撃しなさそう。
  • 電源ボタンは背面にあり、くぼんだボタンであるので落下衝撃が直撃することはなさそう。

なお、Koboはたまにサスペンド&レジュームに失敗する(復帰せずにハングする)ことがある。そのため現状ではサスペンド後さっさと電源断するようにしている。電源投入からの立ち上げにはそれなりに時間がかかるのでちょっと不便。

Kobo (Clala Colour) と Meebook (M6 2023年モデル) の表示比較

Kobo VS. Meebook

左が Kobo Clala Colour、中央が Meebook M6、右がスマホ(AQUOS R9)。
左と中央はバックライト Off の状態。Kobo はカラーモデルのせいか背景がちょっと暗い。

Kobo Clala Colour の色表現

Kobo Clala Colour

Kobo Clala Colour のカラー写真の表示。スマホとの比較。

Kobo Clala Colour with back-light

こちらはバックライト On にした状態。
いずれにしても E ink では現状まだ写真集やら画集やらの閲覧に向いているとは言えない。

考慮すべき読書環境

Wi-Fi 常時接続できるか否かにより使い方に一部影響が出る。
またデバイスの画面サイズなどによっても使い方は変わってくる。

「小説家になろう」対応のオフラインリーダーアプリが存在しない問題

  • 2024年初頭のなろうオフラインリーダー絶滅騒動により、「小説家になろう」サイトの小説をオフラインで読めるような Android アプリが全滅している [1]
    • したがって、Wi-Fi のない環境で読もうと思えば (EPUB や PDF に変換するなどして) 別途保存するといった手間が必要になり、こうするのなら Android デバイスであることが要件ではなくなり Kindle, Kobo も選択肢になる。
    • 自宅など常時 Wi-Fi があるような環境であれば前項のような問題はないが、Meebook は Wi-Fi を on にしていると電池の減りが早いことに注意。いつでも充電できる環境で使うのであれば気にすることはない。
  • 「Web小説リーダー」などオフラインリーダーアプリが存在するので、オフラインリーダーを禁じているなろうグループ以外はどうにかなると思われる。
  • カクヨムは公式アプリがあるがオフライン対応ではない(ある程度はキャッシュしている)。PC 環境などほかの読書環境と (例えば読書履歴を) 連携させたいという事情がある場合は問題になる。

デバイスの画面サイズ

PDF 形式の書類(論文など)を読むことを想定している場合、PDF は基本的に A4 (もしくはUSレターサイズ) を想定しているので、6インチ画面では縮小されて文字がつぶれて非常に読みづらくなる。かといって E ink デバイスはスクロールがスムーズにはいかないので拡大操作して読むのも不向き。
だからといって10インチだと片手で持つのが大変になってくる。逆に10インチクラスは、その辺の読者ニーズを考えて読書ではなくスタイラスペンで書き込みできることを売りにしていることが多い。
マンガも判型に依存するものだと同様の問題を抱える。利用用途を考えてサイズを決めないとミスマッチで使い物にならなくなる。

6インチクラスのデバイス利用を考えるなら、PDFではなくEPUB形式など、画面サイズに応じてレンダリングされる形式 (それこそ HTML でブラウズするのでもよい) で読む方法を確立することになる。アンドロ端末系ならそういうアプリを用いるのでもよいことになるが、Kindle, Kobo の場合はそれぞれのデバイスで対応している形式への変換をすることになる。[2]

縦書きを望むか

  • 「青空文庫」はそもそも縦書きを想定しておりどうにでもできるはず。

が、

  • 「小説家になろう」公式の縦書き PDF 出力は PDF ビューワーによっては読むに堪えないことがある (長音が横向きとか)
  • 「カクヨム」は Webビューワは縦書き対応しているがアプリ版は非対応

なので、縦書きで手元で読みたいのなら別途生成するなど自力で対応することになる。

縦書きに関するいくつかの問題例

変換ツール側の問題か、リーダー側の問題か、どちらかはわからないが、期待するような表示にならない組み合わせというのがまま発生する。また EPUB3 に限らず、PDF であれ専用リーダーアプリの縦書き表示であれ、縦書き表示にすると問題が起きるときはある。
読めるけれど気になる程度の問題から、読めないレベルの問題までいろいろあるので、ある程度確認の作業が必要になるだろう。

三点リーダーの位置が1文字分ずれる
文字が横かつ反転する
三点リーダーの位置がずれる(2)
長音他の向きが横

これらが起きないような組み合わせを探索する必要に迫られる場合がある。AozoraEpub3 (+Narou.rb) で対応デバイスを指定して変換すれば問題はおきないはずだが、逆に言えば違う組み合わせだと問題がおきたりする。
つまり縦書きに関して EPUB3 に可搬性はあんまり期待できない。

EPUB 形式への変換

AozoraEpub3 と narou.rb による方法を述べる。

AozoraEpub3

AozoraEpub3 Java Ver. 補足
本家 8 (最新不可) メンテされていない。 要自力ビルド。 EPUB3 に厳密準拠していない出力になっているらしい。
改造版 21以降 (最新OK) AozoraEpub3 の更新時期によっては narou.rb への手入れが必要になるケースがあるかもしれない

入手

AozoraEpub3 本家は9年前に更新を止めてしまっており、ソースコードは github にあるので入手できるものの、実行ファイルが同梱されているはずの zip ファイルが入手できなくなっている。本家版を使うには JDK8 を入れて自力でビルドする必要がある。

が、これをもとに改造版を作っている方がいて、こまめにアップデートがなされている。

また、ここで本家版の版数に相当するビルド済zip一式も入手できるようだ。

narou.rb 不要で AozoraEpub3 だけでいい人は改造版を使うほうがよいだろう。本家版は現行の各小説サイトのレイアウトに追従していないのでそのままではうまく動かないと思われる。

narou.rb を使う場合は narou.rb が本家準拠でメンテナンスされているため、AozoraEpub3 の内部設定を上書き更新して問題を吸収しており本家版を用いても問題ないはず。
改造版を用いるときは、最新版を使うと narou.rb 側がまだ変更対応に追い付いていない、という可能性に留意しておく必要があるかもしれない[3]。 (AozoraEpub3 は青空文庫向けのツールであるため、narou.rb の更新とは同期しない)

Java Runtime 環境

改造版 AozoraEpub3 の最新版を動かすためには、Version 21 以上が必要とのことなのでそれを入れる。本家版なら Version 8 以上であるから最新でもいいとは思うがかなりバージョンの違いがあるのでバージョンを合わせられるのならそのほうが良いかもしれない。

narou.rb

入手

Narou.rb - 小説家になろうのダウンローダ&縦書き整形&管理アプリ

ここの説明では本家版 AozoraEpub3 を使う (1.10b46 + JDK8) ことになっており改造版への誘導案内は出ていない。

Ruby 実行環境

入れる。また gem を最新にしておく (sudo gem update)

OpenIndiana 環境での苦難

OpenIndiana だとここからが苦難の道のりである。一昔前までなら Solaris でこんな苦労をさせられることもなかったはずなのだが、商用 UNIX の凋落著しいことよ。

とはいえ、改造版 AozoraEpub3 の JDK バージョン問題よりは解決の余地がある分だけまだましである。

以下の問題を行き当たりばったりで対応したりしなかったり。

  1. pkg で導入されている ruby (3.2) 環境配下で gem install narou をすると、依存関係でインストールされる gem 各種の途中で失敗して narou を入れられない。したがって、gem の問題を逐次解決するか、さもなくば pkg 版 ruby で無理なのでソースビルドするしかなくなる。
  2. ruby 最新版をソースビルドすると、gmake check で失敗する。これは NetBSD の類似ケースを見る限りかなり根の深そうな問題 (そもそも OpenIndiana 標準の make だと意味不明なこけ方をするので GNU 版 make すなわち gmake を使う必要がある)。test suite のリンクに失敗しているだけなので、と無視してインストールもできるが gem の更新でこける。fiddle (libffi) 周りの問題のようで、libffi が存在しないかのように扱わせられれば回避できそうなのだが、回避しても他にも何か出そう。
  3. configure で指定しないと /usr/local がインストール先だが、まっさらの OpenIndiana にそんなディレクトリはないのであらかじめ作っておかないとこける。
  4. ruby 2.7系をソースビルドしてもやっぱりこける…のは bison が入ってないからだった。これも因果のわからないこけ方をして原因調査に手間取る。configure スクリプトでこけてくれればいいのに。
  5. gem の実行も make ではなく gmake を呼ばせるようにしないとこける。sudo MAKE=gmake gem update という感じで実行するかもう MAKE 環境変数を設定するか。
  6. それでどうにかなるかと思えば、じつは gem install narou の依存関係で要求される securerandom, activesupport の現行版が ruby 3.1 以降を要求するので古い当該 gem に明示的に差し替えないといけない。

narou.rb の導入

AozoraEpub3 を展開したところで gem install narou すると narou コマンドが入る (ruby と同じパス)。

OpenIndiana 環境での苦難

WebUI を使おうとすると tilt/erubis の load error になる。tilt を入れても解決しない。旧版 tilt をいれると今度は narou init でこける。なんだこれは。
解決できていないので WebUI は OpenIndiana 環境ではつかえていない。


Trademark

  • E Ink は、E Ink Corporation の登録商標です。
  • Kindleは Amazon.com, Inc.またはその関連会社の登録商標です。
  • Kobo は 楽天 Kobo インコーポレイテッドの登録商標です。
  • BOOX は Onix International Inc. の登録商標です。
  • Likebook は 深圳市博閲科技股份有限公司の登録商標です。
  • BIGME は 深圳市大我雲読写科技有限公司の登録商標です。
  • QUADERNO は、富士通クライアントコンピューティング株式会社の登録商標です。
  • Solaris, Java, JDK は、Oracle Corporation 及びその子会社、関連会社の米国及びその他の国における登録商標または商標です。
  • UNIX は The Open Group の米国およびその他の国における登録商標です。
  • Linux は Linus Torvalds 氏の日本およびその他の国における登録商標または商標です。
  • Windows は 米国Microsoft Corporation の米国およびそのほかの国における登録商標です。
  • Android は、Google LLC の商標または登録商標です。
  • Mac OS は、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。
  • NetBSD は The NetBSD Foundation, Inc. の登録商標です。
  • Wi-Fiは Wi-Fi Allianceの登録商標です。
  • カクヨムは、株式会社KADOKAWAの登録商標です。
  • 小説家になろうは、株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です。
  • GitHub は、GitHub Inc.の商標または登録商標です。
  • AQUOS は、シャープ株式会社の商標または登録商標です。

そのほか不注意で商標を書いているかもしれませんがそれぞれの会社の商標です。

meebook は 2025年4月現在は少なくとも日本での登録商標ではないようです。


初版公開日: 2025/5/6

脚注
  1. なろうがサイト利用規約として事実上オフラインリーダーを禁止しているのが根本理由。広告収入のことを考えると禁止したい気持ちはわかる。 ↩︎

  2. Kindle の場合は Chrome 拡張機能である「なろうダウンローダーEx」という選択肢もあるようだ ↩︎

  3. 実際筆者はそのタイミングでハマったことがある ↩︎

  4. 具体的には Studio コンパイラ環境 (現在の Oracle Developer Studio) を入手して JDK のビルド環境を作るのが不可能だろうと思う ↩︎

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