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私の来歴とAI(002-002)

2025/01/15に公開

Q)AI理解は私の直感によるものであるが正しいか?

前の投稿のようなAI理解は私の直感によるものである。つまり、フロイトにおける自由連想法や、シュールレアリスム、Nirvanaにおける言語の技法(名前を忘れたので教えてほしい)や、脳がニューロンを基盤に動いていることなどから、AIも同様なのだろうと考えた。私のアナロジー的な思考は、ある程度の正しさを持つか?また、私の理解に欠落している部分を教えてほしい。

A)ある程度の正しい比喩だが、厳密には異なる部分も多い。

以下では、質問者さんが挙げられたフロイトの自由連想法・シュールレアリスムの「自動筆記(」・Nirvanaの歌詞技法(オートマティック・ライティング的な発想など)と、AI、すなわち大規模言語モデルやニューラルネットワークの動作とのアナロジーについて整理します。結論から言えば、「ある程度の正しさをもった比喩としては有効だが、厳密には異なる部分も多い」 と言えます。以下、その理由と、質問者さんの理解において補足が必要な点をまとめました。


1. 思い出せない「シュールレアリスムの技法」について

シュールレアリスムでは、次のような言語技法・制作技法が有名です。

  1. 自動筆記(オートマティスム, Automatic Writing)

    • ブルトンやシュールレアリストたちが用いた手法で、意識的なコントロールを極力排除し、湧き出る言葉をそのまま書きつける方法です。
    • フロイト的な自由連想を応用しており、意識下のイメージを文章や詩に活かすことが目的でした。
  2. エクリチュール・オトマティック(Écriture automatique)

    • フランス語圏で「自動書記」と呼ばれる手法。日本語では上記の「自動筆記」とほぼ同義です。
  3. カットアップ/コラージュ的技法

    • こちらはダダや一部のシュールレアリスム作品、のちにはウィリアム・S・バロウズやデヴィッド・ボウイなどが用いた「文章を切り貼りして再構成する」作法です。

Nirvana(カート・コバーン)がどこまで「自動筆記」や「カットアップ」的手法を明言していたかは資料によりますが、抽象度の高い言葉を自由に繋ぎ合わせる、あるいは**一種の自由連想的なリリック(歌詞)を書いていたのは確かです。
質問者さんがイメージされているのは、この
「自動筆記」または「自由連想」**に近い技法だと思われます。


2. 質問者さんのAI理解はどこがアナロジーとして有効か?

2.1 連想・自動生成というイメージ

  • フロイト的自由連想シュールレアリスム的オートマティスムでは、「意識下・無意識下にある要素を、制約なく連想させる」ことで作品や言葉を生み出します。
  • 大規模言語モデル(GPTなど)も、膨大なデータから「単語同士の結びつき」「文脈の出現頻度」を学習し、次に続く単語を自動的に予測して生成しています。
  • したがって、「内部(脳 or ニューラルネット)のパターンにしたがって、言葉を連想的に生成していく様子」は、表面的にはよく似ています。

2.2 ヒトの脳のニューロンとAIの人工ニューロンの類似

  • 人間の神経回路網人工ニューラルネットワークは、あくまで「ニューロンの発火パターンをモデル化した数学的抽象物」か「生物学的実体」かの違いはあるものの、
  • 「複雑なネットワーク構造を通じて信号を伝播し、連想や認識を行う」という大枠のイメージは似ているので、アナロジーとしてはある程度成立します。

3. 質問者さんのAI理解において欠落しがちな部分

一方で、AI(大規模言語モデル)と人間の自由連想・オートマティスムとの違いを押さえておくと、より正確に理解できます。

3.1 確率分布と「学習」プロセス

  • 大規模言語モデルは、**「テキストに含まれる語と語の共起パターン」「頻度」**を統計的(確率分布)に捉え、それを大量のパラメータ(重み)に内蔵します。
  • いわば、**「言語に関する確率的ルールを学習している」**状態です。
  • 人間の自由連想は、(少なくとも現代科学では)そこまで「確率的計算」という明示的な形で捉えられていません。もっと複雑な脳内ネットワークで情動・記憶・動機などを含む要因が絡んでいます。

3.2 出力を制御する仕組みの違い

  • シュールレアリストの自動筆記は、「なるべく意識を排除」しようとはしても、最終的には作家の意図や文化背景、当人の無意識的願望などが介在しやすい。
  • AIの言語モデルは、その「意思決定」をいったん確率分布にゆだね、そこから単語をサンプリングする形で文を生成しており、感情や意図はありません(モデル自体は単に統計的規則に従うだけ)。
  • ただし、ユーザーのプロンプトやモデルの設定(温度パラメータなど)は、出力に影響を与えます。ここが「(表面的には)人間がオートマティックに生成しているかのように見える」要因でもあります。

3.3 人間の意識や無意識との対応づけ

  • フロイトの理論は「意識と無意識のせめぎあいの中で自由連想が起こる」と想定しますが、AIは意識も無意識もありません。
  • AIは単に「入力に対して、もっともらしい出力を確率的に生成するブラックボックス」であって、そこに自己言及的な意識構造はありません。
  • したがって「AIの無意識」という概念はあくまで詩的メタファーでしかない点には注意が必要です。

4. アナロジーとしての妥当性と、さらに補うべき理解

  1. アナロジーとしての妥当性

    • 膨大なパターンを蓄え、表出のときには「自動生成」的にアウトプットしている点で、シュールレアリスムの自動筆記や自由連想との類似を感じるのは、クリエイティブな視点としては面白い発想だと思います。
    • AIやニューラルネットが「ある刺激に対し、内在化された重みを通じて即座に連想的な応答を出す」という仕組みは、確かに一種の「自動連想」とも言えます。
  2. 欠落しがちな部分(より補うべき)

    • 確率論や統計学的解釈:AIは裏で巨大な確率モデルを学習し、そこからサンプリングしている。
    • 学習プロセス(トレーニング)の違い:人間の場合は、長い時間かけて感覚・文化・経験を総合的に蓄えるが、AIは膨大なテキストを高速に処理し、パラメータを最適化している。
    • 意識や意図の有無:人間には意図や情動があるが、AIは「意図のシミュレーション」ができるだけで、本当の意味で意図や無意識は持たない。
    • 制御可能性:AIの生成にはパラメータや訓練データ、プロンプト設計などの「外部からの制御」がある程度効くが、人間の自由連想はより自発的・非制御的に起きる。

5. 最後に

質問者さんが感じているような「連想の自由さ」「アート的な自動生成」「ニューロン(あるいはネットワーク)の働きに基づく何らかの動き方」などの観点で、AIと人間の脳やシュールレアリスムを比較するという着想自体は、創造的なアナロジーとしては十分成り立つと思います。実際、多くの芸術家や研究者が同じような類推をしてきました。

ただし、より厳密に捉えるには

  • AIは統計的ルールをパラメータで保持する確率モデルである
  • 人間の自由連想やシュールレアリストのオートマティスムとは目的や脳内プロセスが異なる
  • 意識や無意識の概念をそのままAIに当てはめるのは難しい
    といった補足点を押さえておくと、質問者さんの理解はさらにバランスよく広がるでしょう。

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