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なぜ、SIerが始めるDXオファリングビジネスは「SIの看板の付替え」に終わるのか?

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はじめに

日本の大手SIerはLumadaUvanceBluStellarといったDXブランドを立ち上げ、成長しているように見せています。しかし現場で起きていることは、従来の受託開発人月商売に対して「DX」というラベルを貼り直しているだけというケースが非常に多いです。経営者は「DXで利益率を改善する」と言い、現場は「人を稼働させないと赤字になる」と考え、両者の優先順位が一致しないまま、DXが看板の付替えの口実となってしまいます。DXは、本来 プロダクトサービスが収益を生み続けるビジネスモデルですが、SIerにとっては「直接稼働率の敵」でしかありません。

DXとSIはビジネスモデルの構造が根本的に異なる

DXはプロダクトプラットフォームで稼ぐモデルであり、利益は仕組みから生まれます。
一方、SIは人月で稼ぐモデルで、売上は労働者の数に比例します。
DXは「仕組みを売る」モデル、SIは「労働力を売る」モデルです。

項目 DX(プラットフォーム型) SI(受託/人月型)
売上 サービスが稼ぎ続ける 人の稼働が売上
利益 伸ばせる(スケール) 人数が天井
資産 プロダクトが資産になる 人件費が即費用

DXは、労働ではなく仕組みが利益を生む世界です。
しかしSIerは「人が稼ぐビジネス」を捨てられません。
この構造的な違いが、最初からDXを困難にしています。

本来は変動費ビジネスなのに、SIerでは人材が固定費になっている

SIビジネスは、本来は案件が増えたら人を増やし、減れば外す“変動費モデル”であるべきです。
しかし、日本のSIerは
終身雇用
固定人員前提の文化により、人材を完全に固定費化しています。

固定費化してしまう理由は次の3つです。

  • 正社員比率が高すぎる
  • 評価指標が稼働率である
  • プロジェクトがなくても人件費が発生する

固定費を抱える企業にとって、DXは敵です。
なぜなら、DXの初期は「人を稼働させない時間」が必要だからです。
結果として、現場はDXを推進する動機を持てません。

DXには赤字期間(投資)が必要だが、SIerは耐えられない

DXビジネスは初期投資で利益率が下がり、軌道に乗ってから利益が上がるという特徴があります。
ところが、SIerは投資よりも直接稼働率維持が優先され、DXを進める余裕がありません。

DX担当:プロダクト開発に投資したいです
部門長:直接稼働率が落ちるからダメです

評価制度が 短期売上と稼働率に最適化 されている限り
DXの投資は「コスト」と扱われてしまいます。
SIerがDXを始めても、利益率が上がらないのは当然です。

経営者はDXを求めるが、現場は既存ビジネスを死守する

経営者は「DXで利益率を高めたい」と言います。
しかし現場は「SIを止められない、止めたら自分の部署の数字が落ちる」と考えます。
この温度差こそが本質です。

そして起きるのが 看板の付替えDX です。

  • 従来のSI案件 → DX案件として計上
  • クラウド移行作業 → DXと称して報告
  • Excel自動化 → RPAによるDXと謳う

中身は何一つ変わらず、名前だけ入れ替わるのです。
この現象は、評価制度が変わっていない限り止まりません。

プラットフォーム企業は人材を“変動費”として扱える(だからDXが成立する)

GAFAMは大量採用と大量解雇を行います。
これは法律以前に、ビジネスモデルが

  • 人材=コスト(変動費)
  • サービス=収益源(固定収入)

になっているからです。

サービスのユーザ数は増えるほど売上が増えますが、従業員は必ずしも比例して増える必要がありません。
つまり、プロダクトが収益を稼ぎ、人材は「成長のための燃料」として扱えるのです。
使わない燃料は、切り離せる構造になっています。

SIerがDXに転換できない最大の理由は「組織が大きすぎる」

SIerがDXに踏み出せない最大の理由は、巨大な固定費(従業員) です。

DXには以下が必要です。

  • 少数精鋭のコア人材
  • 赤字期間に耐える覚悟
  • 既存の稼働率評価の撤廃

しかし、SIerの現実はこうです。

  • 大量の従業員を抱えている
  • 従業員全員を稼働させる必要がある
  • 稼働させるためにSI案件を取り続ける

つまり、DXではなくSIの延命を優先せざるを得ません。

これは能力や意思の問題ではなく、構造上の必然です。

まとめ

SIerのDXが看板の付替えに終わる理由は、以下の3つに集約されます。

  1. DXは仕組みが稼ぐモデルなのに対し、SIは人が稼ぐモデルだからです。
  2. DXには初期投資が必要ですが、SIerは固定費(従業員) の維持を優先するからです。
  3. 組織が巨大であるほど稼働率維持=既存SIの維持になってしまうからです。

DXが成功する企業は、仕組みを作り、労働依存から脱却します。
SIerが成功するには、まず 評価制度と固定費構造を変える覚悟 が必要です。

DXは「看板」ではありません。収益構造そのものを変える行為です。

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