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無人予備校 - AI Agentが管理する次世代の教育エコシステムによる教育格差の廃絶

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デモ動画・URL

(デモ動画)

理念 - 地域格差と経済格差が生む教育格差

YouTubeなどSNSの普及により、地方と都会の大きな教育格差は一定程度縮小した。しかし受験成功の鍵を握るのは今なお、膨大な受験知識を持ち、個々人に最適な戦略を示し、長い受験生活に伴走する存在——高額な予備校や進学校の熟練教師である。受験の情報格差が縮まった今も、この人的資本は属人的であるが故に未だ都会の生徒にリソースを独占されている。

属人的な仕組みで教育が行われることが教育格差を生むことは、人間が確率論的分布に従った能力のムラを持って産まれていることを考えれば必然であろう。文科省がいくら緻密な教育指導要領を定めても、それを教える教師集団が有限かつ、能力の分布を持つのならば、資本主義のメカニズムに従って富裕層が良質な教師を都会で独占するのは当然と言える。

その結果、都会の経済的余裕のある家庭の子どもと、地方の経済的制約のある家庭の子どもでは、享受できる教育の質が依然として圧倒的に異なる。地方の優秀な人材ではなく、能力的には劣っていても多額の教育投資を受けた都会の若者が、良い大学へと進学し、質の高い教育機会と成功への機会を独占する理不尽な現実が生まれているのだ。

無人予備校では、現状都会の富裕層に独占されている良質な教育資源を、LLMを基盤とするソフトウェアで再構築する。これにより、常に高品質な教育コンテンツを無限に生成し、安価かつどこからでもアクセスできる教育プラットフォームを実現する。今まで属人的に行われてきた伝統的な教育システムを解体し、生成AI時代の新たな民主的な「教育パラダイム」を社会に浸透させることを目指す。

市場の課題 - toBのLLM×教育サービスの問題点

生徒の学習の一部しか支援できない

現状、学生を対象にしたLLM×教育のサービスはいくつか生まれているが、そのどれもが学校や塾に導入してもらうものを目的としたtoBのサービスとなっている。しかしながら現代の学生は、学校と塾など複数の教育機関に所属していることが普通であり、参考書による自習を行なっている人も多いためtoBのサービスでは生徒の学習の一部しか支援できない。

そこで無人予備校では完全にtoC向けにプロダクトを開発することで、生徒の全ての学習を包括的に支援する。つまり、LLM×教育のサービスの中で最も生徒に寄り添ったサービスを目指す。

(図: 既存サービスと無人予備校の包む範囲の違いを絵で説明)

受動的な受け答えしかできない

また、既存のLLM×教育サービスの問題点として、ユーザーの入力に対して応答するだけのものが多い。しかし多くの中高生は「何を学習すればいいのかわからない」「何がわからないのかがわからない」といった悩みを抱えており、LLMに何を入力すれば良いのかすらわからないことが多い。

一方無人予備校では、さまざまな手段を用いて能動的に(Agenticに)生徒の学習に関与し続ける。生徒の疑問だけでなく、「この問題が難しかった」「」などの声も柔軟に拾い上げ、
単なる質問解説サービスの枠組みを超え、生徒の学習管理や過去の学習のリマインド、

最も優秀な教師とは最も物知りな教師ではない。ユーザーの成長には、モチベーションを管理し適切なタイミングで適切な道を自ら示してくれるコーチが不可欠なのだ。

(図: 既存サービスとのユーザーへの関与の違いを説明)

概要 - 自分を深く理解する気の利いた優秀な教師を手のひらに

教師が生徒に提供している価値とはなんだろうか。それすなわち、生徒の学習状況や学力を常に把握し、自らが持つ知識やノウハウを生徒に合わせ、適切なレベルとタイミングで与えることである。
この価値の提供をソフトウェアで行うには以下の三つの要素が必要だ。

  1. 大学受験に関する膨大な知識やノウハウを持つデータベース
  2. 生徒の学習状況や学力を把握するシステム
  3. 1と2をもとにユーザーに最も適切なコンテンツを与えるフロー

(生徒と教師の対話の図)

この図を具体的な技術を用いてアーキテクチャ図に起こすと以下のようになる。

700冊を超える学習参考書データベース

本サービスの根幹をなすのは、700冊を超える市販の学習参考書を網羅した独自のデータベースである。日本の多くの学生が日々の学習の拠り所とする参考書をデジタル化し、1ページ単位で管理することで、ユーザーは「『青チャートI+A』の15ページから20ページまで」といった具体的な範囲を指定し、AIへの質問や学習記録を可能にする。
このデータベースは現状まだまだ小さいものの、将来的には受験情報誌や全国の受験生の集合知であるノウハウをも集積し、その価値をさらに高めていくつもりである。都会や地方といった場所の制約なく、誰もが最高品質の知識にアクセスできる環境を提供する。

学習記録の投稿・AIへの質問

この強力なデータベースを真に活かすのが、生徒の学習状況を詳細に把握する記録システムである。ユーザーは、Studyplusのような直感的な操作で日々の学習を手軽に記録できる。しかし、これは単なる学習時間の記録に留まらない。使用する参考書をデータベースから選択し、学習後には「〇〇という参考書の何ページを学習し、問5と問8を間違えた」「二次関数についての理解がまだ浅い」といった定性的・定量的な情報を簡単に入力できる。それらAIとのチャットでの質問や疑問もすべてデータとして蓄積され、システムは生徒一人ひとりの理解度、つまずきの傾向、思考の癖までを深く把握していく。

個別最適化された教育の提供

こうして蓄積された「膨大な知識データベース」と「個人の詳細な学習ログ」。この二つが組み合わさることで初めて、無人予備校は真価を発揮する。AIは単なる質問応答マシンではなく、生徒一人ひとりのための能動的な学習パートナーへと進化する。

具体的には、以下のような機能を提供する。

  • 日次レポートと復習問題の作成
    毎日の学習記録やAIチャットの内容を分析し、その日のうちに理解度を測るための復習問題や、知識を定着させるための振り返りレポートを自動で作成する。
  • 週次レポートと学習プランの提案
    毎週月曜日には、週の目標達成度を可視化するレポートや週の勉強記録をまとめたPodCastを配信。先週のデータに基づき、「今週はこの単元を重点的に復習すべき」「次は、この参考書のこの範囲に進むのが効果的である」といった具体的なアクションプランを能動的に提案する他、月曜の憂鬱な満員電車の中でも耳から学習を振り返ることができる。
  • 適切なレコメンド
    生成した復習問題は正解率や復習した日時データを持ち、それに基づく忘却曲線に合わせた最適なタイミングでのリマインドや、弱点を克服するためのカリキュラムを自動で構築する。
  • 定期テストや模試までの伴走
    テストの範囲と日付をアプリに入力すれば、AIが学習の進捗をチェックしたり、オリジナルの予想問題を作成したりする。

展望

  • 自分だけの合格プランの作成
    受験情報誌などのデータもAIに学習させ、ユーザーが模試の成績と志望校を入力するだけで、合格までの学習計画を自動で立てられるようにする。
  • 志望校に特化した授業の作成
    将来的には、AIが各大学の過去問を分析し、その出題傾向に合わせた「自分だけの対策授業」をGoogleのTTSなどを用いてアプリ内で作成できるようにすることも目標である。苦手な分野や、志望校で頻出する問題形式に絞った授業を受けることが可能になる。

開発を始めて約二ヶ月と、まだまだスタート地点ではあるが、予備校や学校が持つ教育資源を全てソフトウェア化するという理念を実現させるため、開発を続けていく。

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