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GitLab Epic Tour Japan 2025 参加レポート

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この記事は「ビギナーズ Advent Calendar 2025」の22日目の記事です。

1. はじめに

2025年11月28日、東京・Toda Hall & Conference Tokyo にて 「GitLab Epic Tour Japan 2025 〜AI駆動ソフトウェア開発の攻めと守り〜」 が開催されました。GitLab合同会社が主催する本イベントは、AI の進展によって大きく変わりつつあるソフトウェア開発・運用・セキュリティの未来像を探ることを目的としたもので、約300名のエンジニアやIT専門職が参加しました。

筆者も本イベントに参加し、AIがSDLC(Software Development Life Cycle: ソフトウェア開発ライフサイクル)全体のプロセスにどのように影響を与え、今後どの方向に進化していくのかについて多くの示唆を得ました。本記事は、その内容についての参加レポートです。

本記事では多数のセッションの中でも GitLab 社の社員の方が語った内容 にフォーカスしてまとめます。構成としては、事実ベースのレポート(第2,3章)に加えて、筆者自身の気づきとまとめ(第4章)と続きます。


要点まとめ

日本のソフトウェア開発が抱える3つの課題

  • 技術的負債
    • レガシー、属人化、スパゲッティ構造
    • AI 活用の足かせになる構造的問題
  • セキュリティリスク
    • OSS 脆弱性が公開後「数時間」で攻撃される時代
    • 人手のチェックでは速度・量ともに限界
  • 人材の役割変化
    • AI 時代は「判断・評価」が中心スキルに
    • コーディングより AI と協働できる力が重要

GitLab が提示したポイント

  • 単なる コード生成AI では課題は解決しない
  • SDLC全体にAIエージェントを配置するアプローチが必要で、(GitLabのような)統一されたプラットフォームが望ましい
  • 構成情報を ナレッジグラフ化(Beta) し、AI が文脈的に理解できる基盤を整備

2. 日本のソフトウェア開発が抱える課題と、その一般的な解決アプローチ

GitLab社の各セッションでは、日本のソフトウェア開発が直面している課題として「技術的負債」「セキュリティ」「人材・スキルシフト」の3点が繰り返し指摘されていました。本章では、それぞれの課題と、それに対して一般的に有効とされるアプローチをプレゼンをもとに整理します。

2-1. 技術的負債 — 多くの企業が抱える構造的な問題

第一に挙げられた課題が「技術的負債」です。定義として筆者は借金の利息のように後から影響が膨らんでいく未解決の技術的課題の累積と解釈しています。これは多くの企業が長年にわたり蓄積してきた問題であり、特定の組織だけに限定される課題ではありません。

例としては

  • ドキュメントが乏しい古い言語の継続利用
  • テスト自動化基盤の欠如
  • スパゲッティ化したアーキテクチャ

などが挙げられます。これらは保守性を低下させるだけでなく、AI を活用した開発効率化を阻害する要因にもなっており、現代的な開発プロセスを実現するうえで大きな障壁となっています。

こうした技術的負債に対する解決策として、GitLab社の登壇ではガートナーが提唱するモダナイズ手法の中でも リアーキテクトre-architect) にあたる "仕様逆算"のプロセス が効果的だと説明されていました。

仕様逆算のプロセス

  1. レガシーソースコード→基本設計・詳細設計(.md)の逆算

    古い言語やスパゲッティ化した構造は人手での理解に限界があるため、まずソースコードを解析し、仕様情報を抽出して構造化する。

  2. 基本設計・詳細設計(.md)→新たなコードの生成

    構造化された仕様をもとに AI を活用して新たなアーキテクチャで動く新たなコードやテストを生成する。

この一連のプロセスにより、技術的負債を整理しながらモダナイズを進める基盤が整備されます。ドキュメント整備や依存関係の可視化といった基本的な取り組みも、負債の増加を抑制するうえで効果的です。

2-2. セキュリティリスク — OSS 時代に求められるセキュリティ対策

次に指摘されたのが、OSS を前提とした現代の開発環境におけるセキュリティリスクです。要点は以下の2つです。

  1. 増え続ける OSS への依存が攻撃対象の増加につながっている
  2. 脆弱性が公開されてから数時間で攻撃が始まることがあるので手作業では対応できない

このような背景から、GitLab では「セキュリティを後付けするのではなく最初から組み込む」というシフトレフトセキュリティ・バイ・デザインの考え方とセキュリティ対策を自動化することが不可欠であると強調していました。そのためには、以下のような一般的アプローチが有効とされています。

  • CI/CD パイプライン内での脆弱性スキャンや依存関係チェックの自動化

  • 開発初期段階からセキュリティを組み込むシフトレフトの実践

  • 継続的な監視と改善を可能にする運用プロセスの設計

これらを組み合わせることで、人手では追いつけないスピードの攻撃や脆弱性に対応可能な体制を構築できます。

2-3. 人材・スキルの変化 — AI を活用できるエンジニアが求められる

三つ目の課題は、人材とスキルの変化です。GitLab 社の登壇者は、今後求められるのは「AI をうまく使えるエンジニア」であると繰り返し述べていました。

その要素として、以下の点が挙げられます。

  • 作成から「生成+評価へ」
    • コードを書くより、適切なプロンプトを作成し AI が生成したコードの品質を評価する能力が重要になること
  • 加速する学習サイクル
    • AI の登場によって学習サイクルが高速化しており、それに継続的に追随する姿勢が必要であること
  • 「AI:単純作業、人間:問題解決」の区分
    • 反復的で単純な作業は AI に任せ、人間はより高度な問題解決や判断に集中する必要があること

エンジニアは AI と協働して開発を最適化する役割へと移行しており、組織としてもナレッジを継続的に蓄積・共有し、AI が参照できるデータ基盤を整えることが生産性向上の鍵となります。


3. GitLabの解決アプローチ — SDLC全体を支えるAIエージェント

続いて、第2章で登場した課題に対する GitLab の解決策を見ていきましょう。

GitLab が示す方向性の中心には、統合された開発プラットフォームを提供すること自体が開発効率化につながるという考えがあります。GitLab は、SDLC の多くの、可能であればすべての工程を一つのプラットフォームに統合することで、データの一元化と自動化の幅を最大化しようとしています。

3-1. GitLab Duo Agent Platform — SDLC の広範囲を支援するエージェント群

GitLab が提示する中心的なアプローチの1つが GitLab Duo Agent Platform です。これは、開発プロセスの多くの領域に AI エージェントを配置し、作業の自動化や支援を行うものです。GitLab を使うことで、以下のような支援が可能になります。

  • 要件・設計に基づく実装支援
    コードの生成だけでなく、修正提案、改善ポイントの提示など幅広いアシストを行う。
  • セキュリティの継続的チェック
    依存関係の監視、脆弱性検出、修正案の提示などを自動化できる。
  • テスト生成と補完
    仕様に基づくテストケース生成や、既存テストの改善支援が可能。
  • コードレビューの効率化
    変更内容の要点整理やレビュー観点の提示を行い、レビュー効率を高める。

また、GitLab は SDLC の部分的な工程においても AI を活用できますが、工程が統合されているほど AI の支援範囲は広がり、より高い効果を得られるとも話されていました。

3-2. ナレッジグラフ(Beta) — 自律的エージェントに向けた基盤

GitLab が開発中の ナレッジグラフ(Beta) は、GitLab の AI 活用戦略を象徴する機能として紹介されました。これは、リポジトリ内のファイル構造やコード依存関係を読み取り、それらの関係性をグラフ構造としてモデル化する仕組みです。


ナレッジグラフの例[引用元]

現時点では構造化されるオブジェクトが限られていますが、GitLab社は将来的にイシューやマージリクエスト、CI/CD の実行結果、ドキュメントなどあらゆる開発データを統合的に反映できる方向性を示しています。これにより、AI は単なるコード補助ではなく、より高度で文脈を踏まえた判断ができる"自律的エージェント" に近づいていきます。

3-3. 統合プラットフォームとしての強み — 部分導入でも価値を発揮し、全体導入で最大化する

GitLab の強みは、すべての工程を GitLab だけで賄える点ではなく、SDLC の各工程が同じ基盤上で連動する設計にあるということです。これにより、次のような価値が生まれます。

  • 学習コストの削減と統一された UI/UX
    多数のツールを覚える負担が減り、オンボーディングが容易になる。
  • データの一元化による AI 活用の促進
    分散したツールでは困難だった、横断的なデータ分析や判断が AI にとって容易になる。
  • セキュリティ・開発・運用の統合管理
    CI/CD、コード管理、脆弱性管理、運用結果までが一連の流れとしてつながり、無駄がなくなる。

GitLab のアプローチは、AI を個別機能として提供するのではなく、統合されたプラットフォーム全体で AI を活かす設計思想が根底にあります。これにより、開発プロセスそのものが AI に適した形へと進化していく点が大きな特徴です。


4. イベントを通じて得た気づきとまとめ

本イベントを通じて強く感じたのは、AI が扱える形でデータを管理することの重要性に対しデジャブを覚えたという点でした。Markdown 形式のように AI が解釈しやすい構造化されたデータ管理の必要性は繰り返し強調されていましたが、これは十数年前にビッグデータ活用が進んだ際に「学習機が使えるデータを蓄積せよ」と言われていた構造と酷似しています。当時から十分に整備されてこなかったデータが今になって技術的負債として積み上がっているという危機感すら生まれ、デジャブでありながら今回の AI 時代ではより深刻にその重要性を突きつけられたように感じました。

また、この課題を解決するためには、データが一元化された開発プラットフォーム上で作業を進めることが合理的であるという理解も深まりました。AI がコードやイシュー、CI/CD の結果など多様な情報を横断的に解釈するには統合環境が効率的であり、これは GitLab に限らず今後の開発基盤選定の重要な視点になると感じました。さらに、AI の台頭に伴いエンジニアには単純作業の自動化を前提に、本質的な判断や問題解決に注力する役割転換が求められている点も実感しました。

変化の速い AI 時代で今後も GitLab をはじめとした最新情報にキャッチアップしつつ、日々精進しようと思えるイベントでした。

5. おまけ

イベント後の懇親会で以下のビールをいただきました。書いてある通りのフルーティーさがあり、ジュース感のあるビールで非常においしかったです。

また、各種イベントスペースを回ってスタンプを集めると参加できる抽選会でなんと特賞のスニーカーを引き当てました!ロゴが入っていて非常にかっこいいです。(映っているお守りはアンケートに答えるといただけました。)

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