NTT DATA TECH
🐙

ふりかえり手法「ポジティブ星人」を試してみた

はじめに

スクラムでチーム運営をしていると、スプリントごとにレトロスペクティブ(ふりかえり)を実施していると思います。一方で、毎回同じ進め方を続けていると、どうしてもマンネリ化してしまい「やってはいるけど盛り上がらない」「新しい気づきが出にくい」といった悩みが出てくることもあります。
そんなとき、ふりかえりの“型”を少し変えるだけで場の空気が変わり、参加意欲や発言のしやすさが上がることがあります。
そこで、「もっとふりかえりを極めたい!」という思いを持った有志で、『ふりかえりカタログ(コミュニティ版)』を参考に、まだ使ったことのない手法を実際に試してみることにしました。

今回は「ポジティブ星人」にトライしてみます。

ポジティブ星人とは

「ポジティブ星人」は、『ふりかえりカタログ』で紹介されているふりかえり手法のひとつです。

このカタログは、書籍『アジャイルレトロスペクティブズ』で示される5つの活動分類がマッピングされているのですが、ポジティブ星人はそのうち 「ふりかえりの場を作る」「出来事を思い出す」「アイデアを出し合う」「アクションを決める」 の4つをカバーしている、守備範囲の広い手法です。
短い時間でも「場づくりから次の一手まで」流れを作りやすそうで、期待が高まります。

なお、ポジティブ星人の引用元は「ふりかえりam」というPodcastのエピソード38で紹介されています。
聴いているだけでも楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
これによると、この手法が生まれた背景は、『Fun! Done! Learn!を実施したときにDoneが少なかったので、Doneできてる感覚を育ててチームの自己肯定感を高めたかったから』とのことです。
そして、手法のねらいは、

  • やり遂げたことや学んだことを祝う
  • ネガティブをポジティブに変える

です。

実際の進め方

私たちの担当で実施しているOKR活動について「ポジティブ星人」でふりかえりを実施してみました。
今回の進め方は以下の通りです。

実施環境

全員がMicrosoft Teamsのオンライン会議に参加して実施

利用したツール

ふりかえりボード(キャンバス)は Confluence のホワイトボード機能を利用

タイムテーブル

合計40分で実施しました。

  1. ファシリテーターから実施方法の説明(5分)

  2. 「Norm Kerthの最優先指令」を読む(1分)

  3. 「ポジティブ星人からの言葉」を読む(1分)

  4. 各自で付箋出し(5分)

    1. お祝いごと
    2. 成功の種
  5. 共有(10分)

    1. お祝いごと(5分)
    2. 成功の種(5分)
  6. 育てる種の選定(6分)

    1. 投票(ひとり1票)(1分)
    2. 話し合い(5分)
  7. 育てる種を「どう育てるか」の話し合い(7分)

実施結果

成果物

当日のふりかえりボードは以下です(付箋の内容はブログ公開にあたりぼかしています)。

「KPT」と「ポジティブ星人」の違い(フレーム編)

参加者から「観点がKPTと近い」という声があったので、KPTとの違いを整理します。まずフレームとしての違いです。
やっていることは近いのですが、入口の問いが違う分、場の温度感や引き出したい発言の方向 が少し違うという印象です。

観点 KPT ポジティブ星人
ねらい ・良いところを維持する
・改善点を見つけ次のTryにつなげる
・やりとげたことや学んだことを祝う
・ネガティブをポジティブに変える
問いのフレーム ・Keep
・Problem
・Try
・お祝い
・成功の種(失敗やミス)
・どの種をどんな風に育てるか
抽出しやすい内容 問題・改善アイデア 成功・学び・伸びしろ・次の一手
場の雰囲気 チームの課題を落ち着いて分析 明るく前向きに次を見つめる

実施してみた感想

実際にやってみたところ、参加者からはポジティブな声も、改善のヒントになる声も出てきました。印象的だったものをいくつか紹介します。

  • 「観点がKPTと近い」と感じてしまい、ポジティブ星人になりきれなかった
    • たしかにフレームが似ている分、いつもの思考に寄ってしまうことがあります。今回はオンラインだったこともあり、見た目から入る演出(ポジティブ星人のアイコンを置く/読み上げをちょっと遊ぶ等) の工夫をすると良さそうです。
  • 書き始めの心理的ハードルが低かった
    • 「問題点を出す」よりも「まず祝う」から入ることで、最初の一歩が軽くなる感覚がありました。
  • 成功のタネが少し出しにくかった(テーマが広すぎたかも)
    • 状況によっては、「成功のタネ」の対象(期間・活動・ゴール)を少し絞っても良いかもしれません。
  • Problem的なものを出すハードルが低かった
    • 失敗や問題を“そのまま”扱うのではなく、なんでもプラスに捉え直す前提があるので、言い方が柔らかくなり、出しやすかった印象です。
  • Tryの案が出しやすかった
    • 「マイナスをゼロへ」ではなく「ゼロをプラスへ」の発想になるので、自然と前向きな改善案が増えました。
  • KPTに近いので初学者でも入りやすい
    • いつものKPTに飽きてきたとき、チームの雰囲気を上げたいとき、少し楽しさを足したいときに、ちょうど良さそうです。

また、少し本音が見えるコメントとして「最近ネガティブなチームでポジティブ星人になる度胸を持ち合わせていないです」という声もありました。共感しつつ、こういうときこそスクラムの価値基準のひとつである「勇気」が試される場面なのかもしれません。
ただし、無理に明るく振る舞う必要はなく、安心して話せる場づくり(心理的安全性)を前提に、少しずつポジティブに言い換える練習をするのが良さそうだと感じます。

やってみて分かったこと(使いどころ編)

ここからは、今回の実施で出てきた感想を踏まえた「使いどころ」の整理です。

観点 KPT ポジティブ星人
初学者の取り組みやすさ 定番でわかりやすい ・KPTに近くハードルが低い
・質問に答えやすい
向いている状況 ・スクラムの基本を習得するとき
・問題の原因分析や再発防止を短時間で詰めたいとき
・マンネリ打破、雰囲気改善
・成果の再確認、自己肯定感の向上
注意が必要な状況 ・問題が複雑で深掘り不足になりやすいとき(5 Whys等の併用が必要)
・Problemが強く出て責める空気になりやすいとき
・チームの心理的安全性が低い/空気が荒れているとき
(「ポジティブでいよう」が負担になることがある)

次回に向けた改善点

今回の学びを踏まえて、次に試すなら以下を改善したいと考えています。

  1. 「ポジティブ星人になりきる」ための導入を工夫する
    • 開始時に「今日の目的:祝う、ポジティブ変換する」を改めて宣言する
    • アイコンや背景、読み上げなど 見た目と演出 を少し工夫して “場のスイッチ” を入れる
  2. 「成功のタネ」を出しやすいようにテーマを絞る
    • 期間/活動/ゴールの観点で対象を明確にする

おわりに

ふりかえりでは、課題や問題に向き合い対処していくことがもちろん大切です。一方で、ふりかえりは単なる改善会議ではなく、チームの関係性を育てる時間でもあります。
良い関係性は良いコラボレーションを生み、モチベーションを高め、結果として「もっとチームに貢献したい」という前向きな行動につながります。
そして、良いチームから良いものが生まれる——そんな好循環をつくっていきたいと改めて感じました。

楽しく働き、良いものを生み出し、ユーザーを笑顔にし、組織が成長する。
みんながいつでも「ポジティブ星人」になれますように。

NTT DATA TECH
NTT DATA TECH
設定によりコメント欄が無効化されています