【組織】前任者のいないプロジェクトなめすぎ
はじめに
対象
- 前任者のいないプロジェクトに残されてしまった方向け。
前任者のいないプロジェクトの意味するところ
引き継ぎが成されないという事実
前任者がいない理由はいくつかあると思います。怪我や事故で急に来られなくなった。鬱病や適応障害で休職してしまった。退職代行を使用して退職届を出し、翌日から有給消化に入ってしまう。中には集団辞職で一気に人が辞めたということもあるでしょう。
少々、厳しいことを言います。理由はどうあれ会社という組織として、引き継ぎ業務を遂行できなかった。この事実には変わりません。
どんなに理由を並べたところで、事業の継続に支障が出ている以上、まずはそのような事態を招いた運営体制に責任があったと認めるところから始めなければなりません。現代日本の企業活動において、たった1人抜けただけで組織崩壊や事業停止に陥るなどあってはならないこと。
前任者が既におらず、引き継ぎもろくにないという事実は、
- そのような事態に陥らないためのコストを払ってこなかった。
- 現場で起きている問題を放置してしまった。
- 採用の場でマッチングを正しく行えなかった。
- ...
などの、企業の姿勢を体現するに余りある事実なのです。
去る側は消化試合になる
退職届を出した後の社員は、有給消化開始まで引き継ぎ作業を行います。しかし実際のところ、引き継ぎ作業をまともに行う開発者は、それがネガティブな退職であるほと少ないです。退職後に障害や不具合が発生しようと、既に辞めた側には関係ありませんから。
当方、前任者不在の現場に入ったことは何回かありますが、総じてドキュメントというものが存在しなかったです。また顧客側の無茶振り・技術への理解のなさ、ほぼ素人の開発者が不勉強のまま実装して面倒見きれなくなったなど、後任者としてもうっすら原因を察することはできました。
引き継ぎを受ける側も経験がありますが、相手にしてみれば一刻も早く撤退したい現場な訳です。会社に残るメンバーは食いつくような勢いで、持ってる情報を根こそぎ寄越せと、ガッチリ舵取りしないといけません。
特にブラックボックスを作りがちな前任者のときは大変でした。その深刻さを理解しているのが開発者と一部のシゴデキなメンバーだけで、責任者や経営層が事態を軽く見ているというのも、ありましたが。それ放置してたら連鎖退職なりますわな。
失われる経験と歴史
属人化の功罪でも説明しましたが、プロジェクト初期から居るメンバーが抜けるだけで甚大な損失です。歴史を勉強することはできますが、当時を経験することはできません。後任者がどんなに頑張っても、その現場での経験の差には詰められないものがあります。
特に既存機能の改修を行う際には、他の機能に影響が出ないよう、慎重な調査から始めないといけません。まだ資料やメモが残っていれば良いですが、チケットやプルリクエスト、コード中のコメントが皆無だと、リバースエンジニアリングするしかなく、調査コストは爆上がりします。
たとえ口伝でも「聞こうと思えば、聞ける人がいる」というのが重要でして、人が抜けると紐付いた情報が根こそぎアクセス不可になるんですよね。技術的な推測は可能ですが、ヒアリングや検討によって決定した仕様の理由が分からないと、触らないのが正義になってしまいます。
前任者不在の現場でまずやるべきこと
後任者のコストは倍以上で見積もれ
工数は少なくとも倍で見積もってください。後世に必要な知識的遺産を残さず、自分が作った部分を完全に把握している前任者と違い。後任者は細かい仕様を一つひとつ調べ上げ、判明したことを記録しながら調査・設計・実装・試験をしなければいけません。
ここでかかる工数は技術的負債の返済に当てていると思ってください。残すべきドキュメントを残さず、引き継ぎ・技術継承できない体制を放置し、その因果の結果として支出せざるを得ないコストというべきでしょうか。当時であれば軽く済んだコストを利子付きで後から支払っていると。
また後任者は前任者と同等かそれ以上の実力者である必要があります。人に教えるには3倍理解していないといけないといわれますが、人が魔改造したものを解析して更なるカスタマイズをするのですから、初心者を何人揃えても無理です。尻拭い代も含め単価を積んでください。
人手不足のこのご時世、優秀なITエンジニアはまず市場に出てきません。運よく遭遇したとしても案件は星の数ほどあります。その中でどうしてわざわざ、このような企業姿勢が見え隠れする案件に来てもらえるというのでしょうか。ビジネスでは金で示すしかありません。
これは余談になりますが。有識者を採用できたとしても、直ぐに撤退判断されては人件費を溝に捨てるようなものです。組織の悪しき風習があるなら直しましょう。そして適切な権限と裁量を与えてコストを支払うことです。今までの自分達に合わせろ、では同じことの繰り返しです。
あるべき姿は引き継ぎ不要
ここまで引き継ぎを中心に話を勧めてきましたが、本来引き継ぎ業務は不要であるべきです。引き継ぎが必要になった段階で、慌てて対処をするものではありません。
よくある話ですが、引き継ぎの段になって突貫工事された手順書ほど役に立たないものはありません。必ずといっていいほど、本人が無意識に行っている作業、最初に設定したまま忘れているセットアップなどが含まれています。
試行回数は多いに越したことはありません。実装して終わり・環境設定して終わりではなく、詳細を記録したドキュメントや作業手順書を合わせて作成する。そして別の開発者が手順書に沿った作業を試し、不足項目や分かりにくい点があれば加筆修正を加える。これです。
もし明日、自分がトラックに跳ねられて異世界でスローライフを送ることになったとしても、次の日の仕事を代わりの誰かが行えるのが理想です。理想というのは、この人材不足のご時世にそのような人材を2人以上確保しておけるかという現実的な制約があるからです。
たとえ完璧に理想の状態を作れずとも、
- チケットに作業内容を記録することを、チームの習慣として定着させる。
- 作業は必ずマニュアル化し、それを読めば中堅開発者が対応できるようにする。
- 会議の議事録やチャットなど、後から必要になる情報は流れない場所に貯める。
など、日々の業務の中でできる引き継ぎは沢山あります。
最優先は辞めたいと思わせないこと
これは口酸っぱく話していることですが、転職したくてしている人はいません。転職するには体力・気力・金など、様々なコストがかかります。経歴書にも傷が付きます。何回も短期離職を繰り返して良い仕事にありつけるほど、世の中甘くないと思います。
年収がアップするから転職したいにしろ、スキルアップのために転職したいにしろ。それが今いる環境でできるのであれば転職しないでしょう。もしそれ以前の、面接や面談でのミスマッチが原因ならば、変な嘘や誤魔化しをせずに確認できる社会……なら良かったのですが。
本当の退職理由筆頭が人間関係ですから、どんなに面接で頑張っても現場入りしないと分からないのが辛いところです。ITエンジニア特有かは分かりませんが、まともな人に仕事が集中しやすい割に、日頃の感謝はなくて障害時だけ文句を言われる、みたいな理由も。
最終的には退職理由なんて人によるので、雑談や飲み会、1on1などで不満を口にしていたら早急にアクションを起こすことが大事なような気がします。いきなり辞める人なんていません。何度も何回もサインは出していて、それに会社が応えなかった。それだけです。
おわりに
個人的には早くベーシックインカムな世の中になって、自浄作用がきちんと働く社会になって欲しいところです。
今は仕事に生殺与奪の権を握られているので、次の仕事探しや職歴や金の問題もある手前、どんなにブラックでもトキシックでも辞めることができませんが。当面の生活の心配がなくなり転職・休職が当たり前になれば、今度は問題のある社員や体制の放置の方がリスクになりますから。
究極的には人間の仕事を全部奪ってくれたらありがたいですが、私が生きているうちには到来しなさそうなので、来世に期待することにしています。
私自身は今日も今日とて、地道にチケットを汚し、ドキュメントを書き続けようと思います。
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