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【マネジメント】ブリリアント・ジャークに続くガリブル・シープ(盲従する羊・だまされやすい羊)という概念を提唱してみる

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毒舌注意

はじめに

https://zenn.dev/noranuko13/articles/b30c8ed65e8e27

対象読者

  • ブリリアント・ジャークだけが悪いのか疑問な方向け。

Netflixは「ブリリアント・ジャークをチームに入れない」とハッキリ明言しています。つまり確固たる意志を持って、人事やチーム運用の中でそのような人材は認めないという立場を表明しているということです。

それができない存在としてのガリブル・シープを定義してみようと思った次第です。

ブリリアント・ジャーク

※サメ(シャーク)ではない。

No matter how brilliant someone may be, there’s no place in our Dream Team for people who don’t treat their colleagues with decency and respect. When you have talented people who work well together — trusting each other’s intentions and respecting their differences — it makes everyone more successful.
Netflix Culture Memo - Careers at Netflix

https://jobs.netflix.com/culture

意訳すると「どんなに優秀でも、礼節を軽んじ、メンバーに敬意を払えない人」とでもいいましょうか。医療の現場・スポーツ業界・研究者などなど、IT業界以外にもいます。

似た用語にトキシックワーカー(有毒社員)があります。こちらの方がより広い概念で、優秀であるとは限りません。様々な問題行動が知られており、説明すると長いので割愛します。今回はあくまでブリリアント・ジャークに焦点を絞ります。

ガリブル・シープ

※勝手に作った造語です。羊です。

直訳すると「盲従する羊・だまされやすい羊」です。簡単に説明するとトキシックワーカーやブリリアント・ジャークのイネイブラーです。

イネイブラーというのは、例えばアルコール依存症の患者が飲酒可能な状態を持続させてしまう人です。この行為をイネイブリングといいます。呑兵衛が酔い潰れても警察の厄介になっても、何とかしてくれる家族とか。酒を飲むためなら手段を選ばない輩に屈してしまう人とか。

このようにブリリアント・ジャークの行動をイネイブリングし、都合の良い状態を持続可能にしてしまう人をガリブル・シープと定義します。

補足ですが、このガリブル・シープには大きく2種類あります。人事権を持つか・持たないかです。前者は学校の先生やスポーツチームの監督、後者は無関係の生徒やチームメンバーです。後者については議論の余地がありますが、前者は本来ガリブル・シープであってはいけない立場です。

ガリブル・シープの特徴

有害行動や不正に盲従する

ブリリアント・ジャークは本当に優秀なこともありますが、頭の回転が速くてそう見えるだけのこともあります。いずれにせよ、もっともらしい屁理屈をこね、自分の意志を通せる状況になるようにチームをコントロールしようとします。

典型的なものが仕事のブラックボックス化です。自分にしかできない作業や、自分にしか扱えない技術を意図的に導入することで、仕事から外せないようにします。プロジェクトを人質に取り、機嫌を損ねると計画や品質に露骨に反映させます。こうして辞められたら困る状態を醸成します。

問題はブリリアント・ジャークと同じか、それ以上の優秀さ・専門知識がなければ、この状況を見抜きようがないという点です。小難しい技術が必要だと言われれば導入せざるを得ませんが、それが本来不要であり容易な代替案が存在すると、誰が気付けるでしょうか。

目先の会議やチャットでは「他の誰にもできない」「この方法でなければできない」など、一見正しく見える意見が出ますが。そのようになる状況自体が、既に彼らの手のひらの上で踊らされているに過ぎないのです。これが騙されるということです。

余談ですが本当に優秀であれば、仕事の属人化を防ぐことの重要性や、業務を円滑に進めるコミュニケーションの大切さを理解している筈です。だからこの場合の優秀はハードスキルのみにかかる言葉であり、ソフトスキルの面では優秀とはいえない人材といえるでしょう。

心理的安全性より現状維持を優先する

こうした状況下では、一刻も早く属人化を解消し、痛みを伴ってでも人・仕事を引き剥がさなければなりません。時間が経てば経つほどに、病巣を取り除くときのダメージは大きくなります。

しかしガリブル・シープは行動を起こさず、現状維持を最優先として動きます。

  • 自分が攻撃のターゲットになるかもしれない。
  • プロジェクトが一時的に回らなくなるかもしれない。
  • なるべく波風を立てないでいたい。

だって我慢すればプロジェクトは回るのですから。

傍観者効果もとても良く働いてくれます。ガリブル・シープであるメンバーが多ければ多いほど、誰も事態の解決に向けて動こうとはしません。そこに「このプロジェクト・製品をもっと良くしていこう」なんて思考は生まれません。

それどころか、なるべく深く関わらないように業務とは関係ない、余計な回避行動を取るようになります。またブリリアント・ジャークと接点が生まれそうなら、たとえ必要な仕事でも後回し・見てみぬ振りをするようになります。現状維持なら問題ありませんよね?

思考停止し判断を委ねる

技術的な誤りには気付けなくとも、共に働くメンバーとしてリスペクトされているかくらいは分かる筈です。倫理的な問題以前に、パワハラなどコンプライアンス違反なら尚更です。しかし何故、これほどまでに問題になっているのに、現状維持に甘んじるのでしょうか。

それは声の大きい人や権力を持つ人に迎合する方が楽だからです。技術的な正しさや倫理、一緒に働くチームよりも、組織の社内政治を優先する方が安全だからです。この状況を作り出しているのは、人事権を持つガリブル・シープです。

どこかのいじめ問題でも聞いた話ですが。ブリリアント・ジャークにプロジェクトを乗っ取られているなんて話せば、自分は元より引き入れた人事部の評価に影響します。いっそ何事もなく回っているようにした方が楽なんです。

一度、迎合することを許容してしまえば、あとは何も考えずにコントロールされているだけで、プロジェクトは勝手に進んでいくのですから。

ガリブル・シープがもたらすもの

技術的・倫理的不正がはびこる

どんな人間も一人では間違えます。いかに優秀であろうと、人間ミスするときはミスします。いくらブリリアントといえど、常に正しいとは限りません。だから間違えないように検証と思考を重ねます。そして時に誰かに相談し、客観的で冷静な意見を求めるのです。

全員ではありませんが、ブリリアント・ジャークの中には自身の失敗を自己否定と捉え、ミスを認めることができずに、押し通すべく頭脳をフル回転させる人もいます。それが技術的な内容であれば脆弱性や複雑性の悪化に繋がり、倫理的であれば不正の温床になります。

現場で幅をきかせている裏番長やお局がいいと言っているのだから、それらの開発環境悪化や不正行為を止める術はありません。むしろ推奨されることもあるかもしれませんね。周囲は黙って服従するだけです。それがまた本人の承認欲求を満たすイネイブリングなのですが。

優秀な開発者が辞める

残念ですが優秀な開発者であるほど判断は早いです。他に現場のツテもあるでしょうし、なくても開拓できるだけのスキルを持っていますから。きっとしばらく仕事をしなくてもいいだけの貯金や備えもあるでしょう。

彼らはブリリアント・ジャークを相手にしても冷静に事務的に対処するだけです。不誠実な現場では組織的に正当に評価されないことも知っています。そして早々に見切りを付け、次の現場へ向かうでしょう。何も言わずに去っていくことが大半です。それで正解です。

私は例外中の例外のようで、辞める前に明確な理由を伝えてから去りますが、そういった現場に本当のことを伝えたとしても変わることはないようです。伝聞系なのはあくまで人伝に聞くしかないからです。とはいえ退職や契約終了を伝えてからの短期間でも変わることはありませんでしたが。

しかし実は本当に見られているのは、ガリブル・シープの行動です。もしもまともな人で構成されていて、しかるべき管理者に報告が行っていないだけなら望みはあります。しかし関わる者全てがガリブル・シープという状況では多勢に無勢、どうしようもありません。

そのような現場で頑張るよりは、自分と環境を変えた方が建設的でしょう。

ガリブル・シープを脱する方法

仕事の良し悪しと誠実さは分けて評価する

いかにスキルが高いとはいえ、敬意に欠ける行動を許容してはいけません。それとこれとは話が別です。勉強が満点でも集団生活が赤点なら失格です。

以下の記事で軽く触れましたが。チームワーク軽視・ゴミのポイ捨てなど、医師国家試験の禁忌肢(選んだ時点で不合格になる選択肢)のような、開発者以前に社会人として即アウトな行為は存在します。それをも許容してしまうのがガリブル・シープです。

https://zenn.dev/noranuko13/articles/e24f79e2ebb7fd

だからいくら優秀であろうと仕事ができようと、チーム内での立ち回りについては別のこととして区別して評価しましょう。「それはそれ、これはこれ」です。

ちなみに自己申告ではなく、周囲の特にメンバーからの評判を聞くのが良いです。彼らは露骨にゴマはすりませんが、社内評価をハックする頭を持っています。評価する人々からさえ良く見えていればよいのです。評価軸に入っていない項目には労力を割きません。

できればしっかりと正式な評価に乗る形で制度本体に反映した方が良いですが、誠実さという指標は定性評価の側面が強いため難しいこともあると思います。最終的には評価制度ではなく直接的な人事判断にはなりますので、制度に頼るのではなく利用するスタンスでいたいものですね。

チーム内で法律ベースの掟を定める

「この発言・行動はアウトである」という共通認識を、チーム内で合わせておく方法です。個人の感想や違和感ではなく、チームという組織内でのルール違反とすることで、気付きやすくなる・報告しやすくなる土台を作ります。

例えばメンバー全員参加の会議で「ついてこれなきゃ、辞めればいい」などとと発言する行為は、パワハラまがいの退職勧奨と認められ、アウトになる可能性があります。実際に発言しているのを現場で幾度か見たことがありますが、誰一人として止める者はおらず。

ちなみにこの発言は不特定多数の参加者に刺さる可能性があります。つまり今ついてこれてない新人も、将来ついてこれなくなる可能性のある若手も。それを現場で誰よりも"優秀"な人が、会議で発言し周りが無言の肯定をするという、端から見たら結構な惨状です。

ちなみにITエンジニアなら、ちゃんと法律の勉強しようね! という話は以下でしたので省略。

https://zenn.dev/noranuko13/articles/baf337f4e57aa2

確かに明らかなスキル不足が問題になることはあります。ですが組織内の話ですので、地道に証拠を集めた上で1on1や少人数の打ち合わせなど、まずは限られたメンバーや直属の上司に報告し、駄目なら更に上に報告するという手順を踏むのが正攻法です。

事例が少々長くなってしまいましたが、単に掟を定めるといっても「そんなルール従わない」と当然のように突っぱねられる可能性があります。ですからまずは法律をベースにすることをおすすめしています。日本で仕事をする以上、法律は守る必要がありますので。

利害関係のない第三者に判断を仰ぐ

既にエコーチェンバー現象が発生・グルーミングが完了していると、自分達だけで気付くことは困難だと思います。エコーチェンバー現象は閉鎖的空間で類似する意見が凝集し、それらが一般的に正しいと誤認する現象。グルーミングとは加害する前に手懐けることです。

途中から参加したメンバーは客観的な評価ができます。もし参加したメンバーから具体的に名指しで指摘があった場合、慎重に判断・行動すべきです。

(参加した人自身の技術的スキルが伴わなかったり、トキシックワーカーだったりすると問題がありますが。そういった例外の話はここではしないでくださいね。極稀に観測されるのは悲しい事実ではありますが)

また他部署でも知人でも構いませんが、まずは利害関係のない第三者に聞いてみるのも良いでしょう。もちろん自分に都合が悪い事実も含めて話すこと、主観を交えず客観的事実を並べること。必要があれば両サイドの意見を聞ける場を持つのが公平で良いです。

古くは掲示板の時代から、自分にとって都合の良い部分だけを話し、自分にとって耳障りの良い言葉を引き出そうとする行為はありました。自覚のある・なしに関わらずです。もし自分が相談された第三者であったとして、一方の言い分を鵜呑みにしないようにしたいものです。

おわりに

いじめ問題になるとよく出てくる、傍観者は許されるか問題もあると思いますが。もちろん最もギルティなのはブリリアント・ジャーク本人です。当たり前です。

ただ、その横暴を放置して助長させまくっているのも良くないという話です。プロジェクトに寄与しているならまだしも、ブリリアント・ジャークがいると組織の生産性が30%~40%低下するという研究結果もあるとか。

長期間我慢し続けて精神をぶっ壊されると元には戻りません。いえ壊れるだけならまだ良くて、知らないうちに考える力や抵抗力を失っているのが怖いんですよね。自分で考えて動くとコントロールから外れるので、彼らの格好の否定対象に。そして学習性無力感に陥ると。

個人的には無理に対峙せず撤退をおすすめしますが、職歴やスキルの問題があると思いますので、この言葉に責任は持てません。正常なうちに判断はした方がいいと思います。

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