🧮

変調方式 AFM の提案

に公開

これは 学生ハム Advent Calendar 21日目の記事です.
https://adventar.org/calendars/12009

自己紹介

こんにちは, 東京大学アマチュア無線クラブのJK1WVEです. 突然ですが, 皆さんは好きな変調方式はありますか?好きな周波数帯を(聞かれる|話す)事は多いと思いますが, 変調方式に着目した事は少ないのではないでしょうか. 今回はAM, FMの両方を組み合わせたAFMを提案し, 個人的な推しポイントと現在の問題点をここでは掲載します. このAFMは私がこの1年間ダラダラと実装していたものです. それ故, 弊サークルで新歓やハムフェアに発行した部誌においても同じ話題の記事を寄稿しており, 遍歴も見たい方は是非そちらもご覧下さい(新歓号はBOOTHにありました(宣伝)). 今回はその両方で寄稿した内容の最新版という位置付けです.

FMの変調, 復調方式

AMは搬送波の振幅を送信信号に基づいて変えるだけなので, ここで丁寧に語るまでもないでしょう. FM(周波数変調)の何が周波数変調なのか, 気持ちの部分を述べた上でAFMについての話に移ります. まず, FMは以下のような数式で表わされます. 搬送周波数 f, 送信信号 s(t) に対して次のように生成される波が周波数変調された送信波です.

\cos\left(2\pi ft+\beta \int_{0}^{t}s(\tau)d\tau \right)

これを見て分かるように, 瞬時位相が2\pi ft+\beta \int_{0}^{t}s(\tau)d\tauで与えられるため, 瞬時周波数が2\pi f+\beta s(t)となります. これが周波数変調と呼ばれる所以でしょう.

左が無変調時, 右が変調時で, 周波数変調を掛けても振幅は一定となる事が特徴です. これは変調の数式を見ても明らかで, 位相にのみ変化があると考えられるので,

  • AM: 振幅に情報を載せる
  • FM(やPM): 位相に情報を載せる

と解釈できます.
では, FM波にAMを掛けたら振幅位相にそれぞれ別の情報を載せられそうではないでしょうか?即ち, AFMという変調方式では

(1+\alpha s_{1}(t))\cos \left(2\pi ft+\beta \int_{0}^{t}s_{2}(\tau)d\tau \right)

で与えられる信号を送信波とします. 問題は振幅と位相を綺麗に分離できるかどうかですが, 現在のところ, 振幅を綺麗に分離する事には成功しています.

ヒルベルト変換

さて, その振幅と位相を分ける方法ですが, 一番有名な手法はこのヒルベルト変換でしょう. これは一般に包絡線を取得する方法として用いられる物で, 個人的に好きな信号処理の一つです. 数式的には\frac{1}{\pi t}との畳み込みで与えられます. \frac{1}{\pi t}のフーリエ変換が符号関数\text{sgn}(\omega)-i倍で与えられる事を考えると

\begin{aligned} x(t)*\frac{1}{\pi t} &= \int_{-\infty}^{\infty}\frac{x(\tau)}{\pi (t-\tau)}d\tau \\ &= \frac{-i}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}X(\omega)\text{sgn}(\omega)e^{i\omega t}d\omega \\ &= \frac{-i}{2\pi}\int_{0}^{\infty}\left( X(\omega)e^{i\omega t}-X(-\omega)e^{-i\omega t}\right)d\omega \\ &= \frac{1}{2\pi}\int_{0}^{\infty}\left( X(\omega)e^{i\omega \left(t-\frac{\pi}{t}\right)}+X^{*}(\omega)e^{-i\omega \left(t-\frac{\pi}{t}\right)}\right)d\omega \\ \end{aligned}

となり, 元信号の位相が\frac{\pi}{2}ズレる. すると, \cos成分は\sin成分になり, \sin成分は-\cos成分になるため, 信号x(t)=A(t)e^{\theta (t)}をヒルベルト変換した関数\tilde{x}(t)を用いて定義される解析信号z(t)=x(t)+i\tilde{x}(t)は,

\begin{aligned} &|z(t)| &= A(t)\\ &\arg(z(t)) &= \theta (t) \end{aligned}

を満たし, 振幅と位相を分離できます. 実際には\theta (t)=\omega_{0}t+(\text{微小項})という仮定が必要なのですが, 詳しい話は過去の部誌に譲る事にします(読者への課題でも可).

実装結果

振幅と位相を分離する条件は\omega_{0}(搬送周波数)が十分大きい事なので, 送信波のサンプリング周波数の10倍以上で搬送周波数を選び数値実験をしてみました. 適当なwavファイルを変調/復調した結果, AM側の信号はエラーなく取得し, FM側の信号も殆ど誤差なく取れており, 復調結果を聞いても元信号との差異は知覚できませんでした.

しかし, FMのスペクトルを見ると想定外の所にピークが立っており, 復調が完全には成功していません. このピークは信号処理上の問題の様で, (搬送周波数の整数倍)と(送信波s_{2}(t)のサンプリング周波数の整数倍)の差の周波数付近に生じるようでした(まだ詳しくは分かっていない).

今回表示しているのはAMを狭帯域にした場合の結果で, AMを広帯域にするとAM, FMの双方の復調に悪影響が生じます. 数値実験をしていて最悪ケースが次のようでした. FMに関しては大きく影響を受けて, 人が聞いても違いが分かる程度まで悪化してしまいます.

最初の例との違いはAMだけなのでFM波が大きく変化している事が分かるでしょう. AMも微小に変化していますね. あまり数式を精査していないので良く分かっていないのですが, 近似的にしか振幅・位相の分離が出来ないのでそのあたりに限界があるような気もしています. ただ想定以上にAM成分は取得出来ているため, 工夫の余地があると期待してまだ実験中です.

結論

AMとFMを愚直に組み合わせたAFMを提案し, 独立した2つの信号を同時に送信できる可能性を示唆しました. しかし近似的に実現可能な条件を数式を通じて確認し, それに基づいた実装をしたが, FM側の復調に問題がある事が数値実験を通じて確認されてしまっています.

今後の展望

AMがある程度正しく取得できたのならば位相成分(瞬時位相)もある程度正しく取得できているはずで, 瞬時位相を微分して瞬時周波数を得る都合上今回のようなエラーが出ている可能性もあります.
そこで微分をしなくて良いように, PMと組み合わせる事で似たような事が出来ないか試してみる価値はあると思います. 位相を90度ズラすような回路は良くあるので, 電気的にヒルベルト変換をするのは苦ではないと期待して, 回路実装まで出来たら良い, という究極の展望を述べた所で今回の記事はここまで!

数式あたりで行間のある文章でしたが, ここまでお付き合い下さりありがとうございました!!
良ければ皆さんもAFM(or APM)で遊んで頂いて, その知見を下さると嬉しいです!

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