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【bignumber.js】JavaScriptの小数計算ライブラリ

2020/09/17に公開

はじめに

JavaScript では小数の計算が正しく出来ません。
試しに、以下の式を実行してみると…

0.3 - 0.2  // '0.09999999999999998'

0.1 になるはずが、誤差が出てしまいます。
これは丸め誤差と言って、計算処理の都合上、どうしても発生してしまうものです。

JavaScript では細かい数値計算をせず、サーバーサイドなりに任せるのがベストですが、どうしても必要な場合、数値計算ライブラリを使うのが現実的な対応になると思います。
この記事では、JavaScript で小数計算するためのライブラリ bignumber.js について紹介します。

bignumber.js

公式API
GitHubリポジトリ

英語ですが、公式APIも読みやすいです。

インストール

npm でインストールできます。

npm install bignumber.js

または、GitHubリポジトリ から bignumber.min.js を入手します。

git clone https://github.com/MikeMcl/bignumber.js.git

注意

まず最初に注意ですが、BigNumber に対して通常の演算子は使わないようにしましょう。
例えば、以下のコードは正しく動きません。

// NG
BigNumber(0.3) - BigNumber(0.2);         // '0.09999999999999998'

誤差が出ますね。これでは BigNumber を使う意味がありません。
四則演算や比較処理などはメソッドとして提供されています。

// OK!
BigNumber(0.3).minus(BigNumber(0.2));    // '0.1'
BigNumber(0.3).minus(0.2);               // '0.1' (引数は数値も可)

コンストラクタ

new BigNumber(123.4567);    // '123.4567'
BigNumber(123.4567);        // '123.4567' (newはなくてもOK)
new BigNumber('4.321e+4');  // '43210'    (指数表記も可)
new BigNumber(11, 2);       // '3'        (第2引数に基数'2'を指定)

BigNumber のインスタンスを返します。new は無くても大丈夫です。
第2引数で基数を指定することもできます。

四則演算

// 足し算
BigNumber(0.1).plus(0.2);  // '0.3'
// 引き算
BigNumber(0.4).minus(0.1); // '0.3'
// 掛け算
BigNumber(0.6).times(0.5); // '0.3'
// 割り算
BigNumber(0.15).div(0.5);  // '0.3'
// 割り算の整数部
BigNumber(5).idiv(2);      // '2'
// 割り算の剰余
BigNumber(1).mod(0.9);     // '0.1'
// べき乗
BigNumber(0.1).pow(2);     // '0.01'

基本的な算術演算です。
ちなみに掛け算の timesmultipliedBy でもOKです。
このように、関数名が長いものには、短縮した関数が用意されています。(上記はすべて短縮したものです)

端数処理(丸め)

config

端数処理の解説の前に、config の使い方を解説します。

config は、BigNumber のプロパティを操作するための関数です。
プロパティはいくつかありますが、端数処理に関係するのは DECIMAL_PLACESROUNDING_MODE で、
DECIMAL_PLACES は小数部の桁数、ROUNDING_MODEは丸めモード(切り上げ、切り捨てなど)が指定できます。

ちなみに、デフォルトは
DECIMAL_PLACES : 20
ROUNDING_MODE : ROUND_HALF_UP(四捨五入)
となっています。

BigNumber.config({
    DECIMAL_PLACES: 2,                // 小数部2桁
    ROUNDING_MODE: BigNumber.ROUND_UP // 切り上げ
});

上記の指定をすると、「小数部2桁を残して切り上げ」になります。
言い換えると、「小数第3位で切り上げ」ですね。

decimalPlaces (dp)

dp を使用すると、指定した精度で端数処理することが出来ます。

// 引数なしで小数部の桁数
BigNumber(0.12345).dp();  // '5'

// 小数部の桁数(DECIMAL_PLACES)を指定。丸めモードはデフォルト(四捨五入)
BigNumber(0.12345).dp(3);  // '0.123'

// 丸めモードを変更
BigNumber.config({
    ROUNDING_MODE: BigNumber.ROUND_UP // 切り上げ
});

// config指定の丸めモードになる
BigNumber(0.12345).dp(3);  // '0.124'

// 第2引数に丸めモードを指定
BigNumber(0.12345).dp(3, BigNumber.ROUND_DOWN); // '0.123'

割り算での端数処理

割り算の結果について端数処理したい場合は、 config で設定するしかありません。

// 小数第3位を切り上げ
BigNumber.config({
    ROUNDING_MODE: BigNumber.ROUND_UP,
    DECIMAL_PLACES: 2
});

BigNumber(1.234).div(10);    // '0.13'
// BigNumber(1.234).div(10, BigNumber.ROUND_DOWN);    // このように、引数で指定することはできない

(参考) clone

config でプロパティを変更すると、予期せぬ場所で計算結果が丸められてしまうことがあります。
ある程度処理が複雑な場合、clone で新しい BigNumber のコンストラクタを生成したほうが安全です。

RoundUpBN = BigNumber.clone({
    ROUNDING_MODE: BigNumber.ROUND_UP
});

RoundUpBN(1).div(3);  // '0.33333333333333333334'
BigNumber(1).div(3);  // '0.33333333333333333333'

比較演算

BigNumber(0.1).eq(0.1);  // ===
BigNumber(0.2).gt(0.1);  // >
BigNumber(0.2).gte(0.1); // >=
BigNumber(0.1).lt(0.2);  // <
BigNumber(0.1).lte(0.2); // <=

比較用の関数もあります。すべて結果として boolean を返します。上記はすべて true になりますね。

速度について

当然ですが、処理コストはかなり高いです。
試しに、1万回加算する処理を行ったところ、以下の結果になりました。

通常の演算 BigNumberでの演算
0.06ミリ秒 35ミリ秒

かなり大雑把な計測ですが、おおよそ500倍以上、処理時間がかかってます。
必要な処理でのみ、使うようにしましょう。

Discussion

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