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Cloudflareとその中立性

に公開
2025/12/13

以前次のような投稿を目にしました。(部分抜粋)

Cloudflareは著作権違反を知りながら、何度も権利者から申告を受けたにもかかわらず、発信を続けたことで、相当悪どいです。
この事件は、漫画村に広告を出していた広告業社が大儲けして、犯罪者にお金を還流させ、そのお金がCloudflareに払われ、3社とも著作権違反でボロ儲けする構図でした。
このような犯罪集団の一味であるCloudflareが罰せられなくて、何が法治国家でしょうか?

引用元:田中邦裕社長@さくらインターネット「Cloudflareに有罪判決という記事に、日本は出遅れている、おかしいという意見が多い...」at X

Cloudflareは本当に「そう」なのか?

田中氏が言ったように、Cloudflareは「犯罪集団の一味」なのだろうか?
私はそうは思わない。寧ろCloudflareは真っ当だと言えるのではないだろうか?
今回はその理由を考察していく。

まず、事実としてCloudflareは米法人だ。日本法人があろうが、本社は米法人だ。
インターネットという国境なき空間において、過度に厳格な現地法の適用を強いることは、技術的中立性やサービス提供の予見可能性を阻害するため、Cloudflareが合衆国法典に従う方針を取っていると予想する。

米国にはDMCA(デジタルミレニアム著作権法)という強力な法律が存在する。Cloudflareはこの法律に基づき、適切な手続き(通知と削除、あるいは裁判所の命令)があれば動く方針を取っている。
これは、適正手続きを重視する企業として真っ当だと言える。

また、出版社ら対Cloudflareの直近判決において、Cloudflareは敗訴している(令和4年(ワ)第2388号 損害賠償等請求事件(令和7年11月19日判決))が、この中には興味深いCloudflareの主張に関する記載がある。

ア 2号要件
(ア) 米国ではDMCA通知の悪用が横行しているから、通知の記載をそのまま信用することができない。原告らと被告は、過去の裁判上の和解において、出版権の権利行使の枠組み(以下「本件枠組み」という。)を合意していたにもかかわらず、本件通知は、本件枠組み外で、しかも、本件枠組みに際して原告らを代理したのと違う弁護士によりされた。
また、本件通知は、DMCA通知でありながら法定記載要件(DMCA512条(b)(2)(E)ただし書の「当該素材がかつて発信サイトから除去され若しくはアクセスを解除されたことがあること又は裁判所が当該素材を発信サイトから除去若しくはアクセスを解除することを命じたことがあることを確認する陳述」。以下「本件記載要件」という。)を欠いていた。
このような事情に照らせば、被告は、本件通知の内容を信用することができなかった。
判決文 12ページ(「原告らの主張」)より。

仮にCloudflareの主張が事実と仮定すれば、彼らの行動を否定するのは問題では無いだろうか?

米国法(米国法典)を参照してみよう

17 U.S.C. § 512(b)および17 U.S.C. § 512(b)(2)(E)は、CDN等サービスプロバイダーに対する免責(システムキャッシュに関する責任制限)を明確に定めており、CloudflareによるCDN提供の適法性を裏付けている。

また、17 U.S.C. § 512(c)(3)(A)は、DMCA通知が有効と認められるための必須要件を厳格に規定している。
さらに、17 U.S.C. § 512(c)(3)(B)によれば、要件を満たさない無効な通知を無視したとしても、17 U.S.C. § 512(c)(1)(A)(ii)にいう「明白な認識(Apparent Knowledge)」の根拠とはならず、セーフハーバーによる保護を喪失する理由にはならないと定められている。

被告は、DMCA通知の悪用が横行しているから、本件通知の記載をそのまま信用することができず、原告らの権利の侵害を知ることができたとはいえないと主張する。
(中略)
また、被告は、本件通知が本件記載要件の記載を欠いていたことも指摘するが、本件記載要件の内容に照らし、本件記載要件の記載を欠くことは、本件通知の信用性を揺るがすような不備であるとはいえない。
判決文 31~32ページ(「当裁判所の判断」)より。

また、17 U.S.C. § 512(c)(3)(B)(ii)は、確かに要件を満たさない通知を受け取った場合に通知者に連絡する義務を規定するが、それは明確に(A)項の(ii)、(iii)、(iv)に実質的に適合する場合に限るとある。つまり、512(b)(2)(E)の要件を満たさない不備のある通知に対し、わざわざ不備の修正を助言する義務(手取り足取り修正を促す義務)を課すものではないから、この点においてもCloudflareに正当性があるといえるだろう。

以上であって、無効な通知に関しそれ以上の対応をCloudflareに課す如何なる事由は存在しない。
寧ろ、無効な通知を送信した原告側に過失を主張するべきであるといえる。

また、Cloudflareは任意でコンテンツの適法性を判断する義務を負っておらず、その中立性の方針に照らし合わせると、適切な通知のみに準拠する姿勢は適切で模範的だといえる。

本件各ウェブサイト上の本件コンテンツのページのURLも記載されていたのであるから、
当該ページにアクセスすれば、本件コンテンツのタイトル欄に無料の海賊版であることを示す「Raw-Free」という記載があり、各頁に本件各ウェブサイトのドメイン名の透かしが挿入されていることを、
さらに、同ページを起点とすれば、本件各ウェブサイトにおいて、本件コンテンツを含む多数(4000タイトル以上)のコンテンツが全て無料で配信され、全てのコンテンツについて「Raw-Free」の記載やドメイン名の透かしが挿入されていることを読み取ることができたといえる。
判決文 29ページ(「当裁判所の判断」)。

とあるが、サービスプロバイダは、侵害活動を示す事実を積極的に監視したり、調査したりする義務を負わないと、17 U.S.C. § 512(m)が明記している。つまり、それを判断もしくは考慮する義務をDMCA法は明確に否定しているのだから、彼らの対応は適切だったと言えるのではないか。

DMCA通知について、ちょっとだけ

米DMCA法は通知者に偽証罪に問われるリスクを明示的に認識させ嘘ではないと宣誓を必須としている。偽証罪は連邦犯罪であるから、通知者は嘘だった場合に賠償責任を負うのだ。
この厳格な要件によって、プロバイダは要件を満たす通知を有無を言わず信頼し削除を即座に行う義務を課している。

一方、日本においてその仕組みはまるで違う。
情報流通プラットフォーム対処法第三条を見てみよう。
1項によれば、「侵害の事実を知っていて、若しくは知れたのに、対応を行わなかった場合、賠償責任がある。」らしい。
2項は「侵害だと信じるに足りる理由があって、配信を止めたことにより発信者に生じた損害を賠償しなくて良い。」とある。

すなわち、プロバイダが違反の有無を判断する事になっているのだ。
尚且つ、「侵害だと信じるに足りる」と認めて貰えなければ、侵害だと判断することはリスクである。
もちろん、侵害でないと判断することも、リスクであるのだ。

これは筆者の意見であるが、これは他責思考的であり、明らかに日本法の欠陥であると言える。

結論:Cloudflareは模範的

グローバル企業として複数の国の法律に適合するのは困難である。
特にCloudflareのようなCDN等を提供する企業にとっては、その問題は複雑である。
仮に、日本でサービスを提供するならば日本国法に従うべきと言う理論により、本社を構える米国法への準拠を否定される自体を容認してしまう場合、それは危険な兆候と言える。

もし『現地法人があるなら本国の法を無視して現地の法に従え』という理屈が通れば、中国に支店を持つあらゆる日本企業は、中国政府の命令一つで日本人の顧客データを差し出さなければならなくなる。

つまり、Cloudflareのような企業は本社を構える米国法に準拠するといった一貫性を求められていると言える。

これは筆者の意見であるが、偽証罪のリスクを負う宣誓であっても、正当な権利者であれば躊躇する必要はないはずだし、この時代十分な量の情報が簡単に手に入るのだから、DMCAの要件に適合することは極めて容易だと言える。
Cloudflareと著作権に関する問題を抱える企業団体は、ただ適切な通知を送信すればいいだけであって、何も難しいことは言われていないのではないだろうか。

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