手段が目的化する本当の理由 ―― 「目的」という言葉が曖昧だから
はじめに
- なぜか目的が合わない。
- いつの間にか手段が目的になっている。
- 手段に集中してしまい目的を見失っている。
そんな経験ないでしょうか?
この記事では、「目的」という言葉の曖昧性に着目し、原因と解決策を紹介します。
対象読者
- 上記のように目的意識に悩みを感じている人。
- ビジネスパーソン一般
結論
- 原因 :「目的」という言葉が曖昧であり、そもそも「目的」を見つけることが困難であるから
- 解決方法:「価値」という言葉に置き換えて考えてみる
以降、具体例を交えつつ、詳細を説明していきます。
「目的」という言葉は曖昧である
「目的」という言葉は、日常的に使われます。しかも、使用頻度も高いです。
よくある説明として、「目的」と「目標」の違いがあります。ただ、ここに罠が潜んでいます。
目的と目標の違い
まず、簡単に目的と目標の違いを説明します。
- 目的 = 「なぜやるのか」(到達したい意味・価値)
- 目標 = 「何を達成するのか」(具体的な到達点)
この説明のポイントは、目的は方向性、目標は具体的に測れる指標という点です。
資格勉強を例にすると、
- 目的:スキルアップする
- 目標:資格を1つ取得する
といった目的と目標が考えられます。目的の「スキルアップ」は具体的には測れないですが、目標の「資格を1つ」は具体的に測れる指標です。
この説明は、一見明確であり、目的という言葉を理解したように思えます。
本当に二層構造なのか?
ここで考えてほしい問いは、目的と目標は「本当に2層構造なのか?」という問いです。
先ほどの資格勉強の例では、以下のような中間の目的/目標もあるのではないでしょうか:
- スキルアップをする
- 設計力を身に着ける
- まずはPythonを中心に学ぶ
- (Python関係の)資格を1つ取得する
ここでは、スキルアップの対象を「設計力」としました。ただ、コーディング経験が薄かったため、Pythonをテーマに学び始めます。そしてその具体的な方法として資格取得があります。
1~3は具体的な指標でないから目的でしょうか?ただ、(上位に比べて)具体性という意味では、目標に近いようにも思えます。
また、1の上には目的はないのでしょうか?4の下の目標はないのでしょうか?
- 年収を上げたい
- スキルアップをする
- 設計力を身に着ける
- まずはPythonを中心に学ぶ
- (Python関係の)資格を1つ取得する
- 資格の模擬試験で70点以上取る
- 毎日1時間勉強する
先ほどの1~4の他にも見つかりました。「なぜ?」や「どうやって?」を考えることで、上位目的も下位目標も見つけることができます。
例えば、この場合の目的と目標の境界はどこでしょうか?何となく、3と4の間な気もします。さらには、どこからが手段なのでしょうか?もはや、境界線がはっきりしているとは思えません。
また、ある人の例なので、年収以外の目的を持っている人もいると思います(評価されたい、難しい仕事にチャレンジしたいなど)。ただ、どういう場合でも、二層構造ではなく、多層構造が見つかりそうです。ここに「目的」という言葉の曖昧性が潜んでいます。
目的は多層構造である
先ほどの例の通り、目的は多層構造です。つまり、以下の点で、目的は曖昧なのです:
「目的」という言葉に対して、「どの階層の目的か?」が曖昧である。
例えば、目的が合わないのは、ある人は上位の目的を見ていて、別の人は下位の目的を見ているケース。手段が目的化してしまうのは、より下位の目的(もしくは目標や手段)しか見ていないケース。
ではどうすれば良いのでしょうか?
大切なことは「誰にとっての」と「最上位の目的」を考えることです。
「価値」という言葉に置き換えて曖昧性を減らす
目的という言葉の曖昧性がわかったところで、次に「価値」という言葉を考えていきます。
例えば、先ほどの資格取得の「価値」は何でしょうか?
まず、「資格を1つ取ること」は価値でしょうか?おそらく、"資格マニア"のような人でない限り、資格を取ること自体に価値を感じる人はいないでしょう。
では、スキルアップや、設計力やPythonを学ぶことはどうでしょうか?こちらは、"勉強好きな人"なら、スキルアップ自体や学び自体に楽しさや喜びを感じる人はいそうです。
一方で、そうでない人もいそうです。他だと、年収をあげる(お金をもらってうれしい人)、難易度の高い仕事にチャレンジできる(新しいことに価値を感じる人)などがいそうです。
「価値」は誰かにとっての最上位の目的である
先ほどの例では、「価値」を考えたとき、自然と「○○のような人なら、xxはうれしいだろう」と考えていたと思います。「価値」の重要な点は、「誰かにとって」と「うれしいかどうか」が自然に考えられるという点です。
目的の場合、「なぜ?」で上位目的が見つかったり、「どうやって?」で下位目標が見つかったり、階層があるのは先ほどの例で見た通りです。
一方で、「誰かにとってのうれしいこと」は、それ自身が「望ましい状態」であり、「なぜ?」で上位の価値が見つかるものではありません。[1]つまり、価値には階層構造がなく、「誰かにとっての最上位の目的」になりやすいです。
したがって、「価値」を考えることは、単純に「目的」を考えるのに比べて曖昧性が格段と減らすことができます。
その他の例:社員検索機能
資格取得の他に、もう一つだけ例を紹介します。
社内システムなどでありそうな「社員検索機能」を考えてみます。まず、目的は何でしょうか?
- 目的:社員が検索できること
- 目標:具体的な要件(検索条件や表示項目など)を満たした機能ができること
これは、目的と目標の定義にはあっていそうです。
ただ、「社員検索機能」に対して、目的がそのまますぎるようにも見えませんか?そこで、価値を考えてみましょう。ユーザーは、本当に社員を検索することがうれしいのでしょうか?
おそらく、「検索できた!楽しい!」のようなユーザーさんはいないでしょう。ここでは、価値を考えるために、もう少し具体的な状況設定をしてみます。例えば、「派遣会社での社員検索機能」であれば、
- 価値:派遣先の要求(人材)に対して、それを満たす社員を見つけること
補足すると、もし機能がないと一人ずつ社員詳細を開く必要があって、大変手間があるかもしれません(つまり機能があると楽ができます)。さらに、よりマッチした人材を見つけることができるかもしれません(より良い提案ができる・受注につながる)。
これなら、ユーザーの価値(最上位の目的)が見えてきたような気がします。価値を考えると、よくある要件を検索条件にしたり、同じ派遣先の経験がある社員を優先表示したりということも考えられます。検索結果を基に、アサイン機能など、周辺機能への導線を設計することもできそうです。これらは、単純に「社員検索機能」といわれるだけでは気づけないでしょう。
注意)価値にも残る曖昧性
最後に1点だけ注意として、「価値」を考えれば何でも解決できるわけではありません。価値にも曖昧性はあります。
- 「誰にとって」とは具体的に誰のこと?
先ほどの例では社員検索機能の直接の利用ユーザーを考えましたが、例えば社長にとっての価値を考えると、少し違ってきそうです。また、ユーザーが多種多様なシステムの場合、"ペルソナ"を具体的に設定しないと、価値が曖昧になってしまいます(先ほどの資格取得の例のように、資格マニアか勉強好きかによって、価値は変わってきます)。
価値を考えることは有用ですが、曖昧性はまだ残っていることも意識してみると、より明確な目的設定ができると思います。
まとめ
- 目的は多層構造で、「どの層の目的か?」が曖昧である。
- 価値は、「誰かにとっての最上位の目的」であり、曖昧性が減る
- 価値を考えるうえで、「具体的な誰の価値か?」は注意して考える必要がある
目的に悩む人は、ぜひ価値を意識して考えてみてください!
-
正確には「なぜ?」で一切深掘りできないわけではなく、特にコンサルなどの文脈では価値を深ぼることも重要であると思います。 ↩︎
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