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モバイルアプリ開発がなぜ炎上するのか?必要なのは進捗管理ではなく"実態管理"

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システム開発において、「炎上」は珍しい話ではありません。
その中でも特に、モバイルアプリ開発は計画通りに進めていたはずが、気づけば納期直前に大炎上といった光景は少なくありません。
進捗上ではオンスケに見えていたのに、実際には大幅な遅延や品質問題が隠れていた。
このギャップこそが、モバイルアプリ開発を炎上させる最大の要因です。
※炎上の定義はQCDのいずれか、あるいは複数が当初想定より大幅に劣後することとします。

モバイルアプリ開発においては、単なる進捗管理では不十分です。
必要なのは、「実態」を正確に把握し、早期に手を打つことです。

この記事では、なぜモバイルアプリ開発が炎上しやすいのか、そして“実態管理”の重要性について解説します。

なぜ進捗管理だけでは炎上を防げないのか?

多くのプロジェクトでは、WBS(作業分解構成図)に基づきタスクを管理しています。
タスクの完了予定と実績を比較し、進捗率を出す。このやり方自体は間違っていません。

しかし、モバイルアプリ開発には以下のような特有のリスクが存在します。

  • 計画時点では見えない作業量が多い(OS差分対応、外部連携の不具合対応など)
  • ユーザー要求の変化が早く、仕様変更が頻繁に発生する
  • デザイン・UX改善が開発後に本格化する
  • ストア審査など、外部要因による予期しない遅延が発生する

これらのリスクは、進捗上では表現しにくい部分です。
つまり、報告上は順調にタスクを消化しているように見えても、

  • デザインと実装に齟齬がある
  • 動作性能が悪い
  • 仕様変更による技術負債の蓄積
  • ストア申請時のリジェクト
  • OSバージョンの変化
  • 設計書の更新が追いついていない

といった進捗に現れない【水面下の問題】が蓄積していることが非常に多いです。
計画上の進捗率は90%以上のはず。だが、リリースできるような状態ではない。
これがモバイルアプリ開発の典型的な“炎上パターン”です。

実態管理とは何か?

実態管理とは、単なるタスクの消化率ではなく、
「本当にリリースできる状態に近づいているか?」を常に点検・判断するマネジメント手法です。

具体的には、以下のようなアプローチが求められます。

  • 機能ごとの“完成定義(Definition of Done)”を明確にする
     単に「実装が終わった」ではなく、「デザイン・テスト・レビュー完了まで」一括で完了とみなす。

  • 仕様変更・設計変更のインパクトを定量的に可視化する
     影響範囲、再設計工数、テスト追加など、都度リストアップして管理する。

  • リスク一覧を常に更新し、顕在化リスクを優先管理する
     「潜在リスク」と「現実になった問題」を分けて、対応方針を明示する。

  • プロトタイプや中間リリースで“動くもの”を早期に確認する
     画面・動線・ストア申請要件など、なるべく早く実機レベルで確認して想定外を防ぐ。

これらを通じて、進捗表に現れない「プロジェクトの健康状態」を把握し続けることが重要です。

実態管理を導入すると、どんな効果があるのか?

  • 最後になってから大量のバグや仕様不備が発覚するリスクを減らせる

  • リリース時の「見込み違い(ストア審査NG、動作不良)」を防ぎやすくなる

  • 設計・開発・テストチーム間の認識ズレを早期に修正できる

  • 関係者全員が「どこが危ないか」を共有できるため、早めの打ち手が打てる

つまり、単なる「遅れを後追い修正する管理」ではなく、
「プロジェクトを健康な状態に保つための管理」へとレベルアップができます。

まとめ

モバイルアプリ開発では、“実態”に向き合いましょう。
モバイルアプリ開発は変化が激しく、見えないリスクが多い領域です。
だからこそ、「オンスケ」に安心せず、常に実態を点検し続ける視点が欠かせません。

進捗表の数値だけでは、プロジェクトの炎上は防げません。
“見えている進捗”だけでなく、“隠れたリスク”にも目を向けること。
それが、モバイルアプリ開発を成功させるための、本当のマネジメント力です。

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