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いまエンジニアを目指すならコーディングから始めるべきか? ― AI時代の採用現場から思うこと

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はじめに

エンジニアを目指すなら、まず何から勉強すればいいのか。悩んでいる方も多いのではないでしょうか。多くの方がプログラミングから始めようとするかもしれませんが、今のAI時代に本当に必要でしょうか?
少し立ち止まって考えてみても良いかもしれません。

私の個人的な意見としては、今の時代はコーディング能力は必ずしも優先すべき能力ではないと考えています。

もちろん、できるに越したことはありません。しかし学習時間には限りがあり、何を優先して学ぶかは戦略的に考える必要があります。そして、これからのエンジニアには、コーディングより先に身につけるべき能力があると感じています。

エンジニアを採用する立場で多くの応募者を見てきた経験からも、正直に書いてみます。

歴史は繰り返す ― 道具が変わると、求められる能力も変わる

少し歴史の話をさせてください。

産業革命以前、工場では職人が手を動かしてものを作っていました。熟練の職人ほど価値が高く、「手作業でどれだけ精密に作れるか」が腕の見せどころでした。
ところが機械化が進むと、求められる能力は変わっていきました。「手で精密に作れる職人」より「機械を正しく動かせるオペレーター」「機械そのものを設計できるエンジニア」の方が重要になっていったのです。職人の技術が不要になったわけではありません。道具が変わったことで、求められる役割の階層が変化したのです。

もっと直接的な例があります。

コンピュータが登場する前、"Computer" は職業名だったそうです。数値計算を専門に行う人間のことを指していたのです。Wikipediaにもそう書いてあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/計算手
NASAの宇宙開発を支えた映画『ドリーム』でも描かれているように、何十人もの人間が手計算で軌道を算出していた時代がありました。

ところが、Computerつまり電子計算機の登場で「計算する」という仕事そのものが機械に置き換えられました。しかし「何を計算すべきか」「その結果をどう使うか」を判断する人間の仕事は消えませんでした。むしろ重要性が増しました。

今、同じことがコーディングの世界で起きています。

「コードを書く能力」より「設計力」を優先しよう

生成AIの登場で、「コードを書く」作業は急速に自動化されつつあります。仕様を伝えれば、それなりの実装を出してくれます。

だとすれば、今後エンジニアに求められるのは何でしょうか。

私は 設計力 だと考えています。設計力とは、「何を作るべきか」「どう構造化すべきか」「何を優先して、何を後回しにするか」を判断する能力です。コードを書く前の思考力とも言えます。

「やりたいことを伝えれば、AIエージェントが何を作るべきかも提案してくれるのでは?」と思う方もいるかもしれません。確かに、今のAIエージェントはそこまでやってくれます。ただ、それが本当に必要なものかどうかは別の話です。提案されたものを評価し、取捨選択し、最終的に判断するのはまだ人間の仕事です。
数年後にはこの辺りの事情も変わっているかもしれませんが、少なくとも今は、その判断力を持っている人間がいないと、AIエージェントは的外れなものを丁寧に作り続けてしまいます。

AIエージェントを「使いこなす」力を身につけよう

加えて、今のエンジニアにすでに求められている能力があります。AIエージェントをうまく動かす能力です。
「オーケストレーション」という言葉で表現されることもありますが、難しく考える必要はありません。要はPMやリーダーの仕事に近いイメージです。

チームのメンバーに仕事を振る時、ただ「よろしく」と丸投げするのと、「この目的のために、この制約の中で、こういうアウトプットを出してほしい」と伝えるのでは、成果物の質が全然違いますよね。AIエージェントも同じです。

具体的には、こういう能力が必要です。

  1. 要件を整理して伝える
    • 何をどこまで作るかを言語化できる
  2. 出力を評価する
    • AIエージェントが出してきたコードや提案が正しいか判断できる
  3. 問題を特定して修正指示を出す
    • 「なぜ動かないのか」を分解して、的確に修正させられる
  4. 全体を統合する
    • 複数の作業結果をつなぎ合わせて、ひとつのプロダクトに仕上げられる

これはまさに設計力と表裏一体の能力です。そして「チームを動かすリーダー・PMの能力」に近いものです。

つまり今のエンジニアは、最初から高い能力を求められる時代になっています。コードが書けるだけでは、AIエージェントに頼んだほうが早い。人間でないとできない付加価値を持っていないと、正直厳しい時代です。

エンジニアは不要になるか? ― そんなことはありません

ここまで読んで「じゃあエンジニアはいらなくなるの?」と思った方もいるかもしれません。

そんなことはありません。

素人が適当にAIエージェントでコードを書かせた結果物は、高確率でひどいものになります。一見動いているように見えて、ちょっと触ると壊れる。セキュリティに穴がある。スケールしない。保守できない。

実際問題として開発業務を進めていく中で、ここ数ヶ月は今まで以上のエンジニアの不足を感じています。本当に戦力になる人材の数に対して開発需要は増え続けているのが現状だと思います。

エンジニア採用の現場で見えてきたこと

私の会社ではエンジニア採用に必ず技術課題を出しています。
課題は複数用意していますが、その中にアプリを作ってもらう課題があります。
ここ1年ほどでAIエージェントの利用が当たり前になったことで、課題の見直しを検討したこともありました。でも結局、大きな内容の変更はしていません。理由はシンプルで、同じAIエージェントを使っても、本人の能力によって提出物の質が全然違うからです。

むしろ、最近は突破率が下がっている気がしています。AIエージェントを使うことで思考をショートカットしてしまっているように見える応募者が、増えた印象があります。

よくあるパターンとして、コード自体は一見きれいに整理されているのに、動かしてみると挙動が仕様通りになっていないケースがあります。自分で動作確認すらしていないのでしょうか。AIエージェントが出したものをそのまま提出しているのが透けて見えます。

もうひとつ気になるのは、自分の市場価値の見積もり方です。AIエージェントを使えば誰でもそれなりのアウトプットが出せる時代になりました。その体験が「自分はできる」という感覚につながるのはわかります。ただ、採用側から見ると、AIエージェントの能力と本人の能力は別物です。アウトプットの質で判断しますし、面接で少し深掘りすれば大体わかります。「AIが作ったものを提出できた」こと「自分自身の能力が高いこと」は、イコールにはなりません。

AIエージェントを使うこと自体は全く問題ありません。むしろ積極的に使ってほしいです。ただ、AIエージェントの出力を判断・評価・修正できる人間でないと、「使える」とは言えないと思っています。

おすすめの勉強法:AIエージェントと一緒に学ぶ

では、これからどうやって学べばいいでしょうか。私がおすすめするのは、AIエージェントを「先生兼作業者」として活用する方法です。

1. まずAIエージェントにコードを書かせてアプリを作る

最初から自分でコードを書こうとしなくて大丈夫です。AIエージェントに要件を伝えて、とりあえず動くものを作ってもらいましょう。

2. 自分で操作して違和感を見つける

AIエージェントが作ったアプリを自分で触ってみます。

  • 想定通りの機能になっているか?
  • デザインに違和感はないか?
  • おかしな挙動はないか?

ここで「なんかおかしい」と気づける感覚がとても重要です。

3. AIエージェントを問い詰めて説明させる

気になったところをAIエージェントに聞いてみましょう。ポイントは、

  • なぜこういう実装にしたのか
  • どうすれば良かったのか

を正直に答えさせることです。

4. プラスαの視点で質問してみる

納得したら、目に見える以上のことを深掘りしてみましょう。

  • ユーザーが1000人になっても耐えられる?
  • セキュリティ上の問題はない?
  • 機能追加したいときはどこを変える?

こういう問いができるようになること、そして答えられるようになっていくことが、設計力の入口になります。

5. 学んだことを次に活かす

AIエージェントの回答から学んだことをメモして、次の機会に活かしてみてください。物足りなければ、さらに調べてみるのも良いです。このサイクルを回していくことで、AIエージェントを使いながら自然と実力がついていきます。

おわりに

さいごに、一点だけ補足しておきます。
「コーディングは優先度が高くない」と書きましたが、書けないより書けたほうが良いのは当然です。電卓があっても自分で計算できたほうが良いのと同じで、仕組みを理解していると判断の精度が上がりますし、AIエージェントへの指示も的確になります。優先度の話であって、不要だという話ではありません。

一方で、コーディングが目的になってしまうのはもったいないと思っています。

大事なのは「何を作るか」を考える設計力と、そのための手足となるAIエージェントをうまく動かす能力です。この2つは、今やコードを書くスキル以上に汎用性が高く、AI時代に求められる本質的な力だと感じています。

コードが書けるだけのエンジニアは、以前よりも価値が下がっているのが現実です。でも「考える力」と「判断する力」を持っているエンジニアは、以前よりも強く求められていますし、常に不足しています。

この記事を読んでくれたあなたが、後者を目指すきっかけになれば嬉しいです。

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