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「エンパワーされたチーム」が成果を生む:『EMPOWERED』要点まとめ

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はじめに

こんにちは。
ネイバーズ株式会社 6月入社の河口と申します。

前回は、PMBOK第7版「12の原則」と、それに関するプロジェクトマネジメントの方法について、記事を執筆しました。

PMBOK第7版「12の原則」でプロジェクトを振り返る:反省から改善へ

プロジェクトマネジメントを学習するに際し、並行してプロダクトマネジメントについても学習しておりました。
なぜなら、プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントは異なる概念ですが、共通する部分も多く、参考になるだろうと感じたからです。

具体的には、一冊の書籍を読みました。

『EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ』です。

シリコンバレープロダクトグループ(SVPG)の創設者、マーティ・ケーガン氏が著したこの本には、プロダクトマネジメントにおけるリーダーの在り方や、どのような行動がチームの成果を最大化するかといったことが、精緻に書かれています。

今回は、『EMPOWERED』に記されていることについて、簡単に解説したいと思います。

(※当記事は、2025年7月に執筆されました)

プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントの違いについて

先述のとおり、プロダクトマネジメント(PdM)は、プロジェクトマネジメント(PjM)とは異なる概念ですが、相通ずることも多いため、最初に説明したいと思います。

プロジェクトマネジメント…特定のプロジェクトの成功に責任を持つ役割
特定のプロジェクトの計画、実行、管理、そして完了までを責任を持って担う。
例)プロジェクトスコープの定義、進捗管理、ステークホルダーとの調整、成果物の納品、etc.

プロダクトマネジメント…プロダクトのライフサイクル全体に責任を持つ役割
市場調査やユーザーのニーズ分析に基づき、プロダクトの戦略策定から開発、リリース、そして改善までを俯瞰して管理する。
例)市場調査、要件定義、マーケティング戦略の立案、プロダクトの継続的な成長、etc.

なぜPdMが大切なのか?

続いて、なぜ企業においてPdMが重要視されているのかをご説明します。

理由は二つあります。

  1. 消費者や企業における価値観の多様化
  • いかに価値ある製品やサービスを提供できるかが、企業の業績を左右する
  • 消費者や企業のニーズ、市場の変化を迅速に捉えつつ、プロダクト全体を俯瞰して管理し競争力を高めていく
  1. 開発チームとビジネスサイドをつなげる組織づくり
  • 開発チームとビジネスサイドの両面を理解した上でプロダクトを創出したい
  • チームで足並みを揃えて開発効率を向上させ、サービスをグロースする

『EMPOWERED』

では、いよいよ『EMPOWERED』の内容に踏み込んでいきます。
本書は、以下の章立てにより構成されています。
I. 一流のテクノロジー企業から学んだこと
II. コーチング
III. 人事
IV. プロダクトビジョンと原則
V. チームトポロジー
VI. プロダクト戦略
VII. チームの目標
VIII. ケーススタディ
IX. ビジネスコラボレーション
X. インスパイアド、エンパワード、トランスフォームド

当記事では、これらの項目について、簡単に説明していきます。

I. 一流のテクノロジー企業から学んだこと

Amazon、Google、Apple、Netflixのような優れたプロダクト企業と、その他大勢の企業との間には、以下の3つの違いがある。

  • テクノロジーの位置づけ
    多くの企業は、テクノロジーを「コスト」として扱い、事業の補助的役割と捉えている。
    一方、優れた企業は、テクノロジーを事業の核と見なしている。テクノロジーを用いて、顧客に価値を届けることがビジネスの本質だと考えている。
  • プロダクトリーダーの役割
    多くの企業では、プロダクトリーダーは単なる調整役であり、戦略がないことも多い。
    一方、優れた企業では、プロダクトリーダーは戦略の立案、チームの育成、成果への責任を担う、組織の中核的存在である。
  • プロダクトチームのあり方
    多くの企業は「機能開発チーム」として仕様通りに作るだけで終わっており、成果(アウトカム)には責任を負わない。
    一方、優れた企業ではチームは「エンパワーされたプロダクトチーム」であり、「解決すべき問題」が与えられ、自律的に最適な解決策を見つけ、結果に責任を持つ
    真に求められているのは、上から与えられたタスクを粛々とこなすだけの「傭兵のチーム」ではなく、プロダクトを愛し、その熱意をステークホルダーや顧客に伝播させることのできる「伝道師のチーム」である。

一流プロダクト企業に共通するのは、

  • テクノロジーを価値創出の中核と捉えている
  • リーダーが戦略とチームの成長を担っている
  • チームが成果を出すことにエンパワーされている
    という点にある。

II. コーチング

コーチングこそが、普通の人々を卓越したプロダクトチームに変えてくれる
優れたコーチングとは、従業員が自らのポテンシャルを引き出せるように支援するという目的を持った、継続的な対話である。
マネージャーの第一の仕事は人材育成であり、コーチングによりエンパワーされたチームこそが最善の結果をもたらす
プロダクト担当者のスキルのギャップを認識し、最適なコーチングプランを設定する。
具体的には、

1 on 1

  • プロダクト担当者の成長と向上を後押しし、自らのポテンシャルを引き出させることを目的とする
  • 互いを信頼して頼れるようになり、正直かつ率直に話ができるようになる必要がある
  • 1週間に1回、30分以上行う

ナラティブ

  • 自らの主張や推奨を論理的に構築し、6ページ程度のストーリーとしてまとめた文書のこと
  • 書く過程で、自分のアイデアを深く掘り下げ、異論や制約への対応も事前に考慮できる
  • 経験豊富なプロダクトリーダーほど、このテクニックの価値を認識し、常に実践している
  • 担当者が独力で質の高いナラティブを書くのは難しいため、マネジャーがコーチングを通じて支援することが重要である

など、多岐にわたる。

III. 人事

人事は避けて通るべき「作業」ではなく、戦略的かつ継続的に磨くべきスキルである。
人事にかける労力と精度は、企業の実力そのものを映し出す指標と言える。
具体的には、

  • 単に優秀な人を雇うのではなく、「適切な人材を採用し、育てる」ことでチームを強くする
    -「人格的に優れた人」を採用し、コーチングによって育てることが大切である
  • 人事部はあくまでサポート役であり、真の責任は採用担当マネジャー自身にある
    といった点が重要である。

IV. プロダクトビジョンと原則

プロダクトビジョンとは、企業がどのようにしてミッションを達成するかの未来像を描くものである。
具体的には、以下の原則からなる。

  • 顧客中心主義
    ビジョンは会社のためではなく、「顧客の生活をどう改善するか」の視点から語るべきである。
  • 北極星
    全てのチームを一つの方向に導く「共通のゴール」が必要である。
  • 範囲と時間軸
    3〜10年後を見据え、機能の羅列ではなく、「実現したい顧客体験」に焦点をあてる。
  • 業界トレンドとの関係
    本質的な業界トレンド(例:モバイル、AI、クラウドなど)を活かし、トレンドと一時的流行を見極め、顧客価値の創出にする。

V. チームトポロジー

「チームトポロジー」とは、プロダクトチームの構成・分担・関係性の全体設計を指す。
トポロジーは、チームのエンパワーメント(自律性・責任・整合性)を左右する。
具体的には、以下の点に考慮して設計される。

  • オーナーシップ:各チームが自身の問題領域に責任を持てること
  • 自律性:自分たちでソリューションを見つけられること
  • 整合性:会社全体の構造・目標と調和していること
  • 依存関係の管理:チーム間の協力や調整が円滑に進むようにすること
  • 進化可能性:状況に応じて柔軟にトポロジーを変化させていく必要があること
    トポロジーの設計は、プロダクト、デザイン、エンジニアリングのリーダーが協力して行うべきである。

VI. プロダクト戦略

プロダクト戦略とは、プロダクトビジョンを実現し、会社の成果を達成するための道筋であり、チームが取り組むべき課題を決める枠組みである。
多くの企業には「目標」や「ロードマップ(戦術)」はあるが、「戦略」が欠けており、その結果、リソースが無駄に消費され、本当に重要な問題に集中できないという問題が起こる。
プロダクト戦略には、選択・集中・思考・判断が求められる。
以下に、プロダクト戦略に必要な4つの要素を挙げる。

  • フォーカス
    本当に重要な目標に絞り込む。
  • インサイト
    データ分析、顧客理解、技術トレンドなどから深い洞察を得る。
  • 行動
    得られたインサイトを、具体的なチーム行動に落とし込む。
  • マネジメント
    状況変化に応じて、マイクロマネジメントではなく積極的な支援型リーダーシップを実行する。

VII. チームの目標

OKRはObjectives and Key Results……目標と主要な結果の略で、企業の目標と従業員個人の目標を結びつける手法である。
しかし、多くの企業で、OKRは失敗に終わっている。
それには以下の3つの理由が考えられる。

  • チームのタイプの不一致
    OKRは本来、自律的な問題解決に取り組むエンパワーされたプロダクトチームを前提とした仕組みであり、上から与えられた仕様をそのまま実装するだけの機能開発チームでは、うまく機能しない。
  • 目標の分断
    各職能が、組織内のマネジャーの目標や個人目標に従って行動し、結果としてプロダクトチームとしての目標が形骸化する。
  • リーダーの役割欠如
    多くの企業で、リーダーがOKRを「マネジメントを減らす手段」だと誤解しているが、実際にはOKRの運用には質の高いリーダーシップと積極的なマネジメントが不可欠である。

OKRを成功させるには、以下の3つの前提が必要である。

  • 機能開発チームのモデルから、エンパワーされたプロダクトチームのモデルに移行する
  • マネジャーが課す目標と個人が設定する目標を廃止して、チームの目標に集中する
  • リーダーが自ら役割を果たして、プロダクト戦略を行動に変える

VIII. ケーススタディ

実際の事例から、業務改善上の問題に直面した際に考慮しておきたい事項や、発揮すべきリーダーシップがまとめられている。
主要なポイントを、以下に述べる。

  • プロダクトリーダーの広範な役割
    トポロジー設計や戦略策定、チーム目標の設定から、日々の問題対応まで、リーダーは多岐にわたる責任を担う
  • 戦略の核心はフォーカスとインサイト
    戦略は、少数の高インパクトなインサイトに基づいて設計され、どの課題に各チームが取り組むべきかを明示する。
  • 目標のマネジメントが成否を分ける
    チーム自身とリーダー双方による目標の積極的マネジメントが不可欠。さもなければ進捗が遅れる。
  • エンパワーメントがイノベーションを生む
    自律性を持ったチームが、顧客・会社にとって意味のある課題に取り組むことで、創造的な成果が生まれる。
  • 事前に結果は読めない
    どの施策が成功するかは予測不可能であり、その不確実性を前提とした計画が求められる。
  • リスクを分散しつつ賭ける
    完璧な成功を狙うのではなく、複数の方向性に「賭け」、実験的に進める。
  • チーム構造(トポロジー)が成果に影響
    チームの構造次第で、問題の割り当てや結果が大きく変わる。構造には利点も制約もある。
  • トップダウンとボトムアップのバランス
    リーダーは目標を示しつつ、チームメンバーの自主性(得意分野への立候補)も尊重する。
  • 戦略コンテキストの共有が鍵
    各チームが優れた判断を下すには、戦略全体とその背景のインサイトを正しく理解している必要がある。
  • 不確実性を受け入れ、信頼と管理で乗り越える
    完全な予測は不可能でも、リーダーが信頼とリスク管理をもって対応すれば成果は出る。

IX. ビジネスコラボレーション

プロダクト開発は企業全体の文脈で行われるため、他部門との信頼関係と協力が不可欠である。
従属型の機能開発チームから、協働型(コラボレーティブモデル)への転換が求められる。
信頼構築の中心はプロダクトリーダー(特にCPO)であり、経営幹部と対等な関係性が必要である。
信頼されるには事業理解と影響力が必須である。経営視点を持たないと、他部門との協働は成立しない。
リーダーは、以下の3つの観点により評価される。

  • ビジネスの結果
    改革の唯一の動機は成果を出すことであり、プロダクト戦略とチームに説明責任が求められる。
  • プロダクト戦略
    部門ごとの要望ではなく、焦点を絞った戦略を構築する。
    戦略は経営幹部と共有し、意思決定の背景やインサイトの根拠や出典も明示する。
  • プロダクトチーム
    実際に価値を生み出すのはチームであり、特にプロダクトマネジャーの力量が成功の鍵である。
    プロダクトマネジャーが他部門に信頼されるよう、顧客理解と事前学習を徹底させ、適切に紹介する。

X. インスパイアド、エンパワード、トランスフォームド

変革において最も重要なのは、エンパワーされたエンジニアである。
なぜなら、優れたプロダクトはチーム全体の協働によって生まれるが、エンジニアはイノベーションの源泉だからだ。
エンジニアは、最新のテクノロジーや技術的可能性に最も近い立場におり、新しい解決策の鍵を握る。
「エンパワーメント」の本質は、解決すべき問題の背景や戦略的意図を共有し、エンジニアに自ら最適なソリューションを考えさせることである。
プロダクトマネジャーやリーダーがエンジニアの本来の価値を理解し、真にエンパワーする環境を整えれば、継続的なイノベーションを生み出す強いプロダクトチームを築くことができる

おわりに

いかがでしたでしょうか。

本書の内容は大変に興味深く、特に、「伝道師のチーム」と「傭兵のチーム」の違いは、今後の業務の中でも肝に銘じておきたいと感じました。

また、『EMPOWERED』は基本的にプロダクトマネジメント側の立場から書かれた本ですが、PMOの視点から見ても、本当に価値ある成果を出すことがプロジェクトの成功と捉えれば、十分に応用できます。

たとえば、

  • プロダクトマネジャーと連携して、プロジェクトのゴールを「作ったもの(アウトプット)」ではなく、「どんな効果や価値を生んだか(アウトカム)」に注目して定義する
     →「予定通りに完成した」ではなく、「ユーザーに使われて、ちゃんと効果が出たか?」を重視する視点です。

  • 必要があればスケジュールを柔軟に見直して、最終的に良い成果につなげることを優先する
     →「意味のある結果を出す」ための調整が大切、という考え方です。

などが考えられます。

この記事で私が触れたことは、あくまで『EMPOWERED』の内容の一部です。
興味が湧いた方は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
また、同著者の『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』『TRANSFORMED イノベーションを起こし真のDXへと導くプロダクトモデル』や、同じSVPG出身者による『LOVED 市場を形づくり製品を定着に導くプロダクトマーケティング』も刊行されています。

私も全てに目を通しているわけではありませんが、今回この記事を執筆するにあたり、他の書籍も読んでみたいと感じました。

今後もさまざまな書籍や文章から学びを得て、それを業務に活かしていければと思います。

ありがとうございました。

参考文献

ネイバーズ東京

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